Flowのレビュー・感想・評価
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人がいないことの癒し
おそらく人類が何らかの理由により絶滅した後の世界で、生き残った動物たちの物語
主人公の黒猫はやや目を大きくするデフォルメがされており、決してナチュラルな作品ではないがキュートではある
僕は動物たちが人間みたいな思考で人間みたいなセリフを話すディズニー映画みたいなものが本当に嫌いなので、この映画はそうならず良かった
最後まで人間は登場せず、そんな映画に癒された
動物たちの切ない鳴き声に…
ラトビア、フランス、ベルギー合作の作品で、2025アカデミー賞で、長編アニメーション賞受賞をはじめ、数多くの作品賞を受賞した、一匹の黒猫を主人公にしたアニメ作品。世界中が大洪水によって、人間が消えた世界が舞台。そんな世界に、黒猫の他に、犬、カピバラ、ワオキツネザル、そして多分ヘビクイワシが登場する、動物ファンタジー。
ファンタジーと言っても、動物たちを擬人化して喋るわけではなく、それぞれの動物の泣き声のみが静かに流れていくだけ。しかし、その鳴き声や表情だけで、切なさや喜び等、胸を熱くする喜怒哀楽が伝わって来る。また、動物たちの仕草や動きも本当にリアルに描かれており、実写の様な動きを見せていた。そして、水中に没した世界の映像は、本当に美しく、ファンタジーな雰囲気をより高めている。
人間が滅んだ世界に突然起こった大洪水。その中で一匹の黒猫が、安寧な生活に見切りをつけて、流れてきた帆船に乗って、新たな冒険へと旅立つ物語。その帆船には、元々カピバラが乗り込んでおり、黒猫を歓迎する。そして、ワオキツネザル、犬、ヘビクイワシが、次々と乗り込んでいく。それぞれ、異なる種の動物たちが1つの帆船に乗り込み、『ノアの方舟』のごとく、様々な出来事や危機に襲われる中で、動物たちの間にも、次第に仲間意識が目覚めていく。そして、辿り着いた先には、思いがけない世界が待ち受けていた。
この動物達には、この航海を通して、それぞれに意味を見出したように感じた。
・ヘビクイワシは、船の船長として舵取りと共に、異種を受け入れる協調性を…
・カピバラは、動物たち全体をまとめるリーダーとしての優しさを…
・犬は、明るく振舞うお調子者から、チームとしての調整役を…
・ワオキツネザルは、本来のワオキツネザルの集団ではない、新たな居場所を…
・そして、黒猫は、たった一匹の弱い存在だったところから、逞しく生きる力を…
等と、勝手に感じました。
なんかこれって、今、世界中で叫ばれている多様性への受容ということにもつながり、製作者が、この作品に込めた奥深いテーマの様にも感じた。ラストも特に、ハッキリした結末があるわけでもなく、観た者が、それぞれこの流れの中で、ラストシーンを、どう捉えるのかを試されているようにも思う。
🐈
もっとハラハラ感を
幸福とは他者の不幸の上にあらず。
ラトビア出身のジンツ・ジルバロディス監督がこの映画に込めたのはトルストイの幸福論にあるような哲学的なテーマだ。
冒頭、主人公のネコが空腹の為に犬が捕った魚を奪おうとするシーン。これはまさに他者の犠牲により自分の幸福を願ったシーンである。
洪水と方舟はまるで神話のようなツールであるが、これは主人公への罰のようにも感じる。
船旅の中で主人公は他者との共感と理解、支え合うことで
自らの幸福が得られることを学ぶ。
同行するイワシや道中何かと手助けをしてくれるクジラはちゃんと救われる。何故救われるのか。これがこの映画のテーマであり、監督の哲学であり愛であると思う。
若干の31歳の若き監督が無料レンダリングソフトのBlenderで作り上げ、アカデミー賞やゴールデングローブ賞受賞にまで至った。これはピクサーが自社のソフトウェア RENDERMANをオープンソースとして無料公開をしたことに始まる流れで、Blenderを公開した非営利団体のBlender Foundationの創設者の「3Dアート製作を誰でも手軽に出来るように」という思いがまさにラトビアの若者に届いて3Dアニメーションが新たな次元に到達した。
ソフトウェアだけでなく3Dアニメーションの流れとして「スパイダーバース」の功績と影響も絶大だ。エンタメ作品としてあそこまで尖った表現やアメリカのコミックとしての3D表現が市場に受け入れられる土俵が出来ていたからだ。
ジンツ監督は本作の前に長編「AWAY」、そして自主制作の短編をいくつか手掛けており、短編はほぼ全てYOUTUBEの監督公式チャンネルで視聴率可能だ。
監督の技術の進歩が感じられるが、カメラワークや演出、そして根幹にある哲学は一貫している。本作「FLOW」に構成として近いのは「AQUA」だが、序章としての本命は「priorities」で間違いない。
音楽、演出、哲学、そしてカメラワーク。短編から築き上げて来た彼の世界観が本作で圧倒的な映像美として完成されている。登場人物を動物に絞ったのはとても効果的だったと思う。これを人間でやるとサバイバル映画になってしまい肝心のテーマが薄れていただろう。
「ゼルダの伝説 ブレスオズワイルド」や「ワンダと巨像」のような文明崩壊後の世界を舞台にしたオープンワールドゲームのような様相で、全編セリフなし。しかし何となくあの塔を目指すんだなといった目的地の設定や、水面の浮き沈みを使った高低差のある上下移動(水面が上がったことによりさっき行けなかったところに行ける。届かなかったアイテムに届く)などまさにゲームのようなシークエンスで面白かった。
猫があんなに海を泳げるのか?など動物にしたことで色々と気になるところもあるが、あくまでも動物達はアート作品の中の象徴的な存在ということにしておこう。
次作もとても楽しみだ。
世界中のクリエイターに、楽しさと共に夢と希望を与えてくれる一作
前作『Away』(2019)と同様、絵本のように美しい映像で、不思議な世界を旅する過程を綴っていく作品です。
主人公の黒猫の挙動がとにかくかわいく、ギンツ・ジルバロディス監督の故郷、ラトビアにこの黒猫の像が作られた、というほど愛されるのも納得。
動物たちの描写はどちらかというとリアル寄りで、アニメーションとはいえ動物感はかなりのもの(とはいえ適度な擬人化も施していますが)です。人間が一切登場しないため、もちろん人語の台詞もないのですが、それだけに微細な所作まで見入ってしまいます。「Blender」というソフトウェア(使うだけなら無料という…)で緻密に作られた映像は、動物たちが歩き回る姿、水の流れなど、細かなところまで観察し甲斐があります。
ある種崇高さを感じるような展開になっていくところも『Away』と似ている、というかゲーム『風ノ旅人』や『Sky』をも連想させます。
こんな独特のアニメーションを、ジルバロディス監督と20名足らずの制作スタッフと『野生の島のロズ』(2024)の数百分の一程度であろう予算で完成させ、なおかつ第97回アカデミー賞において長編アニメーション賞を獲得したのは紛れもない快挙。
世界中のクリエイターが一度は描くであろう夢を実現させた制作背景自体が、作品と同様、あるいはそれ以上に夢と希望に満ちています。
『Away』では少年の一人旅を監督がほぼ単独で作り上げ、そして本作においてスタッフとの協働で黒猫と仲間たちの冒険を編むという、物語と監督の状況が見事に重なり合っているところも胸熱!
ユニークで神秘的な鑑賞体験
人間が登場せず、言葉も一切話されない作品。
動物だけを登場させる作品は色々あるけど、台詞まで鳴き声のみというのは珍しい。
それによって、作品の世界観や映像美にすっと没入することができ、自然との一体感を感じられる鑑賞を体験できた。
アニメーションが本当に綺麗。
綺麗と言っても、技術力が高いとか、ものすごくリアルとかではなくて、味があって美しい。
水の表現が特に美麗だった。
洪水によって人類が存在しない世界、というのは旧約聖書の創世記を連想させられるし、
言葉の存在しない動物だけの雄大な自然というものに宗教的な背景を感じ取れて、神秘的な世界でもあった。
観終わった直後は、後半のストーリー展開がよく分からないという感想だったけれど、
それが想像の余地と余韻だと分かっていくにつれて、心の中に温かく残り続ける味わい深い映画になった。
動物たちと旅をしているかのよう
猿の惑星
戦いの文化であるヨーロッパ文化の圧倒的伝統のもとにある世界は、いまや、全世界を一挙に破壊させるのではないだろうか・・・
そんなヨーロッパの片隅にある国で作られたことに驚きを隠せずにいる。
原因は不明のまま世界が水没し一匹の猫が取り残され、一隻の船にたどり着く。カピバラとオナガザルと無駄に愛嬌を振りまく犬。人間は登場せず泣き声だけで台詞はない。死後の世界のような遺跡と海原。舵を操るのは猫とカピバラ、そして鳳凰のような鳥。行き先など解らないが互いに自分の意思を伝え合い助け合う光景は訳もなく涙を誘う。言葉などは諍いの元凶と言わんばかりの表現に理屈抜きでうなずいてしまう。科学技術の進展など一瞬に崩壊し目前に広がる光景はやけくそに叫ぶことのできる大空と底の見通せぬ海。ゼロ回帰。
ほどほど、いい塩梅、そんな言葉がこの映画を観ながら頭に浮かぶ。
猫のようにしなやかに生きるのがいいとつくづく思う映画だった。
水鏡に映る君と僕。
大洪水に見舞われ自分の住まいを失った猫が流れてきた1隻の船に乗り込み始まる話。
乗り込んだ船にいた先客のカピバラに警戒しながらも、舵を取りながら水の流れに身を任せ進むが…。
行き場を失った野生動物達(猿、鳥、犬)を乗船させては警戒から始まり徐々に芽生えてく友情、動物だけに会話は無いけれど何故か主人公の黒猫ちゃんの仕草と映像、異種動物達とのやり取り、芽生えてく友情と映像に惹き込まれる。
配信鑑賞でこの評価、劇場で観てたらもっと評価上がったかも!?洪水で街、森が飲まれ、その水はやがて引き、その中をやり過ごす動物達のストーリー面白かった。
猫は猫の動き、犬は犬らしい行動、しかもレトリーバーは他の犬種ではな...
いま、世界中の映画賞である現象が起きている。
本命とされていたあの「野生の島のロズ」を打ち破って第97回アカデミー賞 長編アニメーション賞を受賞した映画。
日本の「侍タイムスリッパー」もそうだが、大手のスタジオのビッグバジェットの作品だけが日の目を浴びるわけじゃなく、寧ろそれとは対称的な小規模作品が評価されると言う現象が、世界的に昨今起こっているような気がする。
「ワンダと巨像」、「人喰いの大鷲トリコ」、「風ノ旅ビト」、「INSIDE」
これらは、「Flow」で見事アカデミー賞の最優秀長編アニメーション賞に輝いた、ギ
ンツ・ジルバロディス監督がファンのゲーム作品である。
それも納得してしまうほどの臨場感と没入感のある作品だった。
特に上空に連れ去られる、下へ落下するといった上下の空間のダイナミックな演出が素晴らしかった。
ポストクレジットにも続きがあるので見逃し注意。
監督の前作の「Away」もおすすめですよ。
澄み切った世界観
人がいなくなった地球
主人公は黒猫、突然洪水に襲われ、流れてきた小舟に乗る。
色んな動物と同舟、最初は警戒していたが、そのうち助け合うことになる。
旅は過酷で幾多の危機を迎え、なんとか生き残るが・・・。
登場するのは動物だけなので、当然、セリフはないのだが、感情が揺さぶられる。
インクルーシブ、ダイバーシティ
太古のロマンを誇示するでもなく、
生物滅亡の危機を声高に叫ぶわけでもない。
本作は、肩肘を張らない、
ある種の達観した視点で生命の営みを描き出す。
そこにあるのは、
獰猛な生存競争でも、
状況への果敢な抵抗でもなく、
ただ時の流れに身を委ね、
あるがままに生きる生命たちの姿だ。
主人公にとっての逆境は、
目の前の壁や木に、
ただ爪がかかるかどうかというささやかな試練に過ぎない。
大洪水や天変地異といった壮大な危機は、
主人公の認識する日々のステージとは異なる次元にある。
それらは地球にとっては日常の一部であり、
我々が認識するようなドラマチックな出来事としては描写されない。
それは1000年に一度、
あるいは10000年に一度の奇跡なのか、
それとも、
我々が気づかないだけで毎日繰り返されている日常なのか。
この悠久の時間軸の中で、
記録に残らない(残っているか・・)はずの生命の営みが、
確かに残っているという示唆は、
深い余韻を残す。
地球にとってすべては平常運行であるという、
壮大で哲学的な世界観が背景に提示はされている。
そして、この独特の世界観の中で、
鏡の自分や、
水面に写る自分たちが繰り返し強調される。
それは、生命が多様な姿で存在し、
それぞれが【固有の流れ】の中で、
【そのままでいい】ということを示唆しているようにも感じられる。
インクルーシブやダイバーシティといった現代的な概念とも繋がり、
個々の生命が持つ普遍的な価値を静かに問いかけてくる。
【追伸】
野生の猿が車のサイドミラーを破壊して持ち去る事件が、
頻発しています。
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