「これから起こるかもしれない事」Flow ラ·メールさんの映画レビュー(感想・評価)
これから起こるかもしれない事
1匹の猫と偶然出会った動物たちが、辿る安住の地へのアドベンチャー。と書けば・・冒険物語のようにとられるかもしれないが、本当はこれから起こるかもしれない危機的状況下の中での生き残りの物語。世界中が大洪水に覆われて、ある日ひとりぼっちになった黒猫が、その目で見た光景は主の姿がない風景と逃げ惑う動物達の姿。
猫が住む家の状況から人間は随分前に用意をして出ていった様子。そして猫(彼)がそこで愛されていた動物だったんだとわかる状況。何故彼を残していったのか?猫独特の単独行動にて、避難する時に姿がそこになくて、主は致し方なく出て行ったのかもしれない。庭には沢山の猫のオブジェ彼にとってはそこはまさしく安住の地だったはず。ところが突然現れた多分人の家で飼われていた数匹の犬の群れに追われ、逃げ惑う中で身近に大量の水が襲ってくる事を知る。見上げるくらいの大きな猫の像の上に避難した彼が見た光景は、もはや世界が水に沈みゆく姿・・・そして彼自身も、そこへ偶然流れ着いた1艘の船に水の中を泳いで辿り着いた猫。初めての仲間はカピバラだった。そこから次々と動物の仲間が乗り込んでくる。序盤で彼に食べ物を与えようとした白い鳥もある出来事から船に乗り込み。
居合わせた動物達を連れてどこかへの旅に出る事になる。
その旅の間にはいくつかの試練や出会いと別れがあり、その度に猫(彼)も自分で餌をとる事や分け与える事。それぞれが協調性やコミュニケーションを身につけていくのだが、ある日それまで旅の仲間だった白い鳥が思わぬ行動をとる事に、それを心配した猫がそこで体験する不思議な出来事で、観ている側はまずいろんな事を想像するかもしれない。
私はそこで宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い出してしまった。
全てのセリフはなくて、日本人による吹替えもない。
聞こえてくるのはそれぞれの動物達のリアルな鳴き声だ。
監督曰くその鳴き声は、まさに生のそれぞれの動物達の鳴き声をあてているそうだ。
ただ・・・カピバラだったか、それだけはなかなか録れなくて、他の動物の鳴き声をあてていたと聞いた。(笑)そのカピバラがいい行動をするんだよ。まずこの子がいなければ、この旅の仲間達はもっともめていたかもしれない。(笑)
思わず抱きしめたくなる動物だ。
その鳴き声が本当はどういった意味を表しているのかはわからないという監督。
そりゃそうだよね・・・なんだが、でも映画を観ているとその鳴き声も上手くマッチしていて、台詞がなくても何故かこちら側には自然とまるで台詞が聞こえてくるような感じになる演出は、なかなかよくできていると思いました。そして美しい風景と音楽・・・
只・・なんか肝心の動物の絵のデザインが、背景の滑らかさと違って荒く見えているのは、これでよかったのかなどうかなと・・・。動物の毛の荒さももう少しナチュラルで描けなかったのかなって・・・。そこは少し見ていて気になりました。
でも、あの荒さはもしかしたら・・・、いや・・私の中で留めておきましょう。
あれはあれで、この映画の中で表現していることがあったのかもしれないので・・・
昨今の映画の上映時間から言えば、昭和の映画のように1時間半ほどの短い上映時間となっていて、その中にも上手くまとめられていて、あらゆるシーンでのドキドキやハラハラや時にその動物らしい行動なども見れて、クスっと笑ってしまったり猫がとる行動に、猫好きならば思わず「あるある」とうなってしまう場面もみれる。(笑)
私も好きな動物の1つであるワオキツネザルが、あんなに物に執着する性格なんてと、思わず動物園に行って確かめたくなってしまった。(笑)
意外な性格に驚くばかり・・・
でもそれを、人間自身にあてはめてみて見れば、この動物達がとる行動は我々自身の姿なのかもしれないとも思った。
この物語に出てくる猫や犬は、監督が飼っていた子達をモデルとしていると後で知ったんだが、愛情を込めて作られたこの作品には、私的には今もどこかで始まっている崩壊へのメッセージや人類への警告とも受け取れるなと思う場面を見た。
そしてこの映画では、人類のいた形跡はそこかしこにわずかに残されているのだが、肝心の人の姿がどこにも見られない事。被害にあったかもしれない人の亡骸さえ見えないのだ。
まったくもって忽然と姿を消した。
そうゆう風な地球の姿なんだよ。
そしてある時突然大量の水が、地球の割れ目に吸い込まれていく。
思わず助かった!と思い安堵するのだが、ここでこの彼らの旅はまだ終わらない。
猫(彼)がその先に見た今という風景は、本当に救いとなったのか・・・
船に乗り合わせた仲間達が再び集い、頭を摺り寄せながら仲良く辿り着いた喜びを確かめあっている様子に、見てるこちら側もホッと微笑ましくなるのだが、彼等の足元とエンドロール後に見えた海原を優雅に泳ぐ鯨の姿に、映画を観てその場を立ち去っていった観客達は、どんな風に想像して感じたんだろうかと思いました。
鯨は要所要所で猫達の前に現れます。
猫は水を怖がる子とそうでない子がいるけど、映画に出てきた黒猫は水を怖がらないタイプだった事で、無事に危機を脱出する事も水の中から泳ぐ魚を捕る事もできた。
白い鳥は何かをわかって行動していた・・・ようにも見えたし、その鳥が途中で合流しようとする犬たちに、まるで船に乗せる事を拒むシーンもある。
そこでいい行動をとるのがカピバラなんだが、(笑)
映画を観終わった時に、すぐにでもうちに来る野良猫の黒猫を抱きしめてやりたい気持ちにもなった。
今も遠い北極や南極であるいは永久凍土と言った地で、大量の氷が溶けだしているという。
すでに水に沈みそうな島々や都市があるとも聞く。
我々は普段そんな事をニュースになると注目して見ているのだが、普段の生活の中ではさほど気にする人もいないだろう。地球温暖化も加速を続けている中で、もはや手遅れ感も否めない。だが努力次第では、その加速を遅らせる事はできるかもしれない。その間に頭のいい人達が、何かいい案件を考え出してくれたら・・・
映画に描かれた彼らの物語は、人間がきっといくらかは原因なんだろうなと思う次第。
そして彼らはその犠牲者・・・となるのだが、申し訳ないと思いつつも前向きに明日に向かって、どこに辿り着くのか行方もわからない旅の中でも、それぞれが思う旅のゴール・・・
そして生きるという未来に向けて目を輝かせている姿に、こちらも勇気と元気を貰えるのである。
人間ならばこうゆう危機的状況下では、いづれ仲違いやいざこざや争いが起こり敵対する者もでるだろう。だがこの旅の仲間らを見ていると、時にそれも乗り越えなければならないんだと、それはそれほど難しくはないんだよ。なんでも受け入れる勇気があればできる事さと、そうゆう風にも思えた。きっとそうしなければこれからの未来は生き残れない。
同じ地球に生まれたものとして・・・
ラストが近づけば近づくほど、衝撃的なシーンも描かれている。
人類は何処へいったのか、何故彼等だけ生き残れたのか、他の地域にもだれか生息しているのか。別の物語として、黒猫が幸せに暮らしていたあの家の主とのエピソードも見たくなった。
そして私は、何度かほろりと涙が頬を伝うシーンもあった。
こうゆう未来が訪れないように、少しでも長く明るい未来が訪れる事を願う。
そしてこの旅の仲間達の幸せを祈りたい・・・
そこまで考えないで観れば、生き残った動物達の冒険物語なのだろうが、大人は大人として様々なメッセージ性を受け取りました。観る人によって違うかもしれないが、観た人これから観に行く人達はどう受け取りましたか。