「天変地異があっても友達をつくろう」Flow ユートさんの映画レビュー(感想・評価)
天変地異があっても友達をつくろう
予告で観る限り、これは絵本の世界を映像化したようなものと思っていた。
様々な動物たちが力を合わせて洪水を乗り越える話である。
たしかにそれに違いは無いのだが、映画本編を鑑賞した際にもっと没入感があった。
というのはリアリティラインを先ずどの辺りに置くか、という事に成功しているからだと思う。
冒頭、主人公の猫の住処には猫好きが作ったり描いたと見られる猫の置物や猫のデッサンが描いたまま机にあったりする。そして外には猫の大きな巨像があったりする。
劇中、動物たちはクラフトすることが出来ない。
人間たちの残した創造物を利用したり集めたりすることだけが出来る。
この猫の住処も、猫好きの人間が残したものということが出発点となっている。
これによってリアリティラインとしては、この物語は想像のものですよ、というメッセージ性を持つと受け取れた。
この導入部が無かったら、猫は猫として、互いに動物たちが協力し合うにしても、違和感を持つことになったかもしれない。
二つ目はこの想像の物語に於いて、地球温暖化などの環境異変を描いているところにあると思う。
初めは川に流れる魚を獲ろうとしていた猫だが、やがてその魚は洪水の更なる水面上昇により色彩を持つ熱帯系の魚に変わってゆく。
逃げ出す動物たちの様は、人間を描かなくても生き物はどうなるのだろうという切実さを感じることが出来た。
こうした想像の物語の切実さが描かれながら、動物たちは一番高く見える巨塔のようなものを目指すことになる。
先ずカピバラが乗っていた船に乗り、やがて物集めが好きな猿が乗ってきて、翼を怪我した鳥が乗り、猫は共に旅をしてゆく。
最後は仲間を仲間と思えたところに猫の成長があったのだろうか。
地上に横たわるクジラを見ることに、生き物の死が描かれていたのではないか。
再び天空に向かう鳥も同じように感じられた。あれも何かを悟った生き物の死だったように思う。
動物はたしかにその日暮らしかもしれない。
描かれ方としては、動物たちが排泄物もしないので、綺麗な描かれ方の上で寓話的に扱われてもいる。
ただリアルな動きがあり、だが眼差しなどは可愛らしく描かれている。
観終わった後、何か心に残るものがあった。
天変地異があっても友達を作ろう、という話だったのだろうか。
それは確かに救いのある話だと思う。
いい映画だった。
(追記)
ネコちゃんはおうちネコだったから、(飼い主を含めた)人間が居なくなって外に出るしかなくなって上の窓を割って外へ出たのかな…。
やっぱり飼い主がシザーハンズみたいな外部と接触するのが苦手な人だったんじゃないかな。それでネコちゃんもそうなっちゃったという…。
そうなると何故動物を描いたのかも分かる。生き物の生命力を描きたかったから、という…。
聞いた話だと監督のご両親はアーティストで、彫刻家と絵を描く人らしいです。
ということは、そうしたものが残された家やその近辺から抜け出ることは監督の意思の表れ、自立の表れだったように思います。