劇場公開日 2024年12月7日

「精一杯、守ろうとしたもの」どうすればよかったか? たま虫さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 精一杯、守ろうとしたもの

2025年11月29日
iPhoneアプリから投稿

近年ようやく社会的認知度や理解が深まってきたとはいえ、いまだタブー視されることの多い統合失調症。その病を患った姉と両親の姿を、弟がカメラで捉え続ける。

このような映像を撮影し、全国公開することを許可してくれたお姉さんとご両親のおかげで、私たちは、ある一人の統合失調症患者と家族のリアルな日常を垣間見ることができ、そこに潜む課題について、考えるきっかけを得ることができた。
撮影を続けた監督にも感謝したい。

もしもお姉さんが発病した早期タイミングで精神科医療にかかっていれば、その後の事態は好転していたのだろうか。その答えは誰にもわからない。
入院や薬物治療、カウンセリング等によって寛解し、その後の長い人生を健康的に歩めた可能性もあるだろう。
一方で、年若き女性が薬漬けの日々を送りつつ入退院を繰り返し、当時まだ『精神分裂病』と呼ばれていた病気への差別や偏見に苦しみ、悩みを深め、将来を悲観して自らの命を絶つ…そんな未来が待っていた可能性だってないとは言えない。

どうすればよかったのか、、、その答えは見つからないけれど、父親も母親も弟も、それぞれの立場で、価値観で、やり方で、精一杯、お姉さんを、そして自分を守ろうとしたんだと思う。

ひげしっぽ