「あまりにも様々な感情が交錯するため、タイトルの問いに対して絶句せざるを得ない一作」どうすればよかったか? yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
あまりにも様々な感情が交錯するため、タイトルの問いに対して絶句せざるを得ない一作
タイトルの、容易に答えが導けない問いを考え続けないではいられない一作です。
アイヌの人々や文化の映像作品を撮り続けている藤野知明監督だけに、その編集手腕は実に巧みで、20年以上にわたる家族の記録を一つの流れを持った作品として完成させています。
観終えた時には「あの時ああしておけば良かったんじゃあ」とか、「結局この人が事態を悪化させたんじゃあ」とか、いくつか答えめいたものが思い浮かんでしまいます。もっともこれは、おそらく監督本人も意図していない、優れた編集により浮かび上がってきた「解決策めいたもの」です。そうした憶測が成り立ちようもなかったことは、20数年という歳月が物語っています。
中盤、藤野監督の姉の病状に大きな変化が生じるのですが、その場面で観客の多くが感じるであろう、「私はこの姉を、どんな人として見ていたのか」という静かな衝撃、そして結末に至って監督の父親が述べたこと、さらに家族の記録を作品化するという監督の申し出に対する反応、これら一つひとつにいくつもの感情が重なってしまうため、結局のところ「どうすればよかったか?」という問いに対しては、少なくとも現時点では、絶句で返すほかない、と認識せざるを得ないでしょう。
パンフレットの解説、各論者の論考は本作の理解を一層掘り下げてくれるとても素晴らしい内容なので、できれば一読をおすすめします!
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