配信開始日 2024年11月6日

「マジックプラグマティズム」ペドロ・パラモ 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マジックプラグマティズム

2024年11月9日
iPhoneアプリから投稿

どういう風に町を映像化するのか、
村全体の描写はどうするのか・・・

会話は、、、
出会う人、、、人は、、、

どこかマコンド村と似ている、
コマラの村。

まずは山から見た小さな街の家並みを、
うっすらをVFXで描く・・・

「百年の孤独」ガルシア・マルケスと、
共同で映画のシナリオも書いているフアン・ルルフォ、

マルケスとはちがい、
裕福な家庭に生まれるが、
メキシコ革命によって親の資産は奪われる、
そんな視点からも書かれている本作、

そして育ちの違うフアンの、
「百年の孤独」とはアプローチが違う、
マジックリアリズムの古典、
「ペドロ・パラモ」の映画化だ。

マジックリアリズムの映像化のひとつの形でもある。

コクトーの「オルフェ」風でもなく、
タルコフスキー風でもなく、

「フロム・ダスク・ティル・ドーン」的というか、
「砂の女」風か。

あくまでもリアリズムベース、
空の表現、
土や大地の描写は大きいスクリーンで観ることを意識して、
製作した気配もある。

メキシコ革命という歴史的な背景を持つ本作「ペドロ・パラモ」において、

政府側の論理、
革命軍の感情、
教会の理性、
それぞれの正義を描き出すことは、
作品のテーマを深く理解するために不可欠だ。

これらの勢力が、
どのようにペドロや、
村の人々の生活に影響を与え、

それがどのような悲劇を生み出したのかを、
映像で明確に描くことが重要だ。

そのあたりの描写が甘いと言わざるを得ない。

それが原作のように描けていれば、

ロバ飼いや物乞いといった人々が持つ、
現実的な視点と、同時に、

不思議な力に対する信仰心との共存は、
【マジックプラグマティズム】とも言える造語で説明する事も可能だ。

この概念を、映像の中でどのように表現するかが、
作品を地に足の付いた深みを決定づけていたといえるだろう。

シュールを超えた、マジックリアリズム、

「リメンバー・ミー」と、
通底する事もある。

もう少しで、
またしても南米リアリズムを叩きつけられそうだったが、
ひと手、自分には物足りなかった。

蛇足軒妖瀬布