「心臓に悪そう」レッド・ワン おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
心臓に悪そう
ドウェイン・ジョンソンの戦闘を静観していたクリス・エヴァンスのぽつりと言う一言が、近年のハリウッドにおける体重問題をさりげなく揶揄していて、思わず吹いた。
序盤は素晴らしいと思った。
ジャックの幼少期がまず描かれ、その後成長して大人になったジャックが、盗みを働くために火事を起こして施設に潜入。
ここまでの流れが無駄なくテンポ良く描かれ、その中にニヤリとさせられるセリフや演技があり、さらにジャックがどういう人間かも把握できるようになっていて、脚本や演出が上手いと感じた。
手癖の悪さで同一人物と分からせるのも上手い。
子供時代の捻くれっぷりはたまらないものがあり、近くにいたら嫌だが遠くから見てる分には楽しかった。
そんなわけで最初はかなり期待値が高まったが、「SFヒーローアクション」みたいな映画だと思った観ていたら、段々と『ハリー・ポッター』のような「魔法ファンタジー」みたいな世界になっていったため、正直興味が薄れてしまった。
個人的に「魔法の世界」みたいなのが苦手なもので。
何でもありの世界なため、問題が解決しても「都合の良さ」しか感じられず、真剣に観る気が失せる。
そういうわけで本作で一番疑問に感じたのは、敵側はものすごい魔法の使い手なのだから、サンタを誘拐する必要性を感じなかったこと。
魔法で自由自在に何でも起こせていたのに、スノードームを作ったりワープはできないんかい。
サンタを誘拐した理由に、作り手のご都合主義を強く感じた。
「2時間以内に解決しなかったらクリスマスは中止」という話だったのに、あの話はどこにいったのだろう。
解決まで結構時間がかかっていたように見えたが。
今回の敵役が言う「悪い子は恐怖を与えてコントロールすべき」は要は体罰やパワハラの肯定で、「悪い子はこの世から消せば良い」は死刑制度賛成のように感じられた。
個人的には反対だが、日本人は更生よりも罰を与えることに重きを置く人が多い印象なので、敵側の意見の方がむしろ日本人向きな気がした。
ジャックが心を入れ替えることでピンチを切り抜ける場面に、この映画のメッセージを感じた。