「いろいろ気になるけど、酷評するほどではない」白雪姫 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろ気になるけど、酷評するほどではない
元のディズニーアニメの白雪姫があまりに愛されているがゆえに、王子様が王子じゃなかったり、アニメと違うオリジナル要素が入っていることなどに対して過剰に反応して批判的な意見をいう人が出てきてしまう、内容とは別に評価が残念な映画だと思います。
小人達が突然現れた白雪姫を簡単に受け入れたり、どこの誰かも知れない『王子様』なる謎の人物が突然現れて死体にキスをしたりするよりも、白雪姫を追い返そうとする小人がいたり、王子様は王子でなくても、毒林檎を食べる以前からきちんと繋がりがあったりする今回の映画のお話の方が自然なように思います。
不自然な展開も「おとぎ話だから」で片付けてもいいし、アニメ版もアニメ版でいいけれど、今回の実写を、「大好きなアニメ版とは違う内容だから」という理由で否定するのは、映画の感想として適当ではないと思います。
だってそれって、『この映画に対する』感想ではなくて、アニメ版を神聖視して改変を許さない人達による、ただの間違い探しでしょう?
ただし、実写にして、より現実的に自然な内容にしたいのなら、あまりに不自然でまだまだだと思います。
例えば、王様が死んだとしても、王族の血を引かないお妃様(継母)と王の血を引く直系の娘とで、王族の権利でいって継母の方が優先されるのはおかしくありませんか?
もしも継母が別の男と再婚したら、再婚相手の男が「女王の夫」ということで王様になって、継母も新しい王様も王家の血を引いていないのに、2人の間に男児が生まれたら王子様で、将来王位を継承するのですか?
王子は王家の血を引いていないのに。
大切なのは血筋じゃありませんか?
王様が死んだなら、王族の血を引く唯一の子供である白雪姫が女王になって、継母はせいぜい、白雪姫が成人するまでの間の後見人とかじゃないんですか?
少なくとも、継母が白雪姫を召使いのようにこき使うことはおかしいと思います。
他に不自然な箇所としては、ハンターが継母から命じられて、白雪姫を殺すために彼女を城から連れ出したところ。
なぜ、林檎が取れるのです?
国民は飢えて、兵士に捕まる危険を冒してまで、城へ食料を盗みに行くほど追い詰められているのでしょう?
王女を暗殺するのに、人前で堂々とはやらないでしょう。
であるならば、あの林檎の木の近くには、王女暗殺を見咎める人はいないはずです。
ましてや、王族を守るべき城の衛兵など、いるはずもありません。
城へ食料を盗みに行くくらいなら、誰も見ていないところでコッソリと、木から林檎を取って食べればいいじゃありませんか。
あそこで林檎が取れるのは違和感がありますよね?
他にも気になるところは、小人達はなぜ、宝石を掘っていたのでしょう?
人間の国と関わることなく、森でヒッソリと暮らしていたのでしょう?
それなら、採掘した宝石は誰が買い取るのですか?
交易をしていて、宝石と引き換えに食料などを買っているのならわかるけど、人間の国と関わっていないのなら、自分で畑を耕し、狩猟をして、食料を手に入れなければなりません。
宝石ではお腹の足しにはならないのです。
そうした不自然がいくつもあるので、わざわざ白雪姫に対する小人達の反応をやや現実的にしたり、王子様の存在をいくらか自然にしても、チグハグな感じがして、違和感があります。
ただ、おとぎ話のつもりで深く考えずに観ている分には、それなりに面白いし、悪くはないと思います。