「オリジナル要素がことごとく蛇足」白雪姫 サイレンスさんの映画レビュー(感想・評価)
オリジナル要素がことごとく蛇足
※ネタバレありありです。
ワケあって朝に映画を見ることになり、
ちょうど吹替版がやっていたので鑑賞する事に。
結論から言うとタイトルの通り
『原作準拠のシーンはそれなりに悪くないが、追加要素がことごとく外れてる』といった印象。
いい点をまとめてみると
・既存の曲の歌唱シーンは良い。
特に『ハイホー』の場面はとても素晴らしい。
・王女のヴィランっぷりが気持ちいい
・森を逃げ惑うシーンは元アニメ準拠で
怖さを感じるよう作られていて良かった
森は白雪姫にとって未知であり恐怖の場所で
あぁいう風に見えたのかな、などと感じた。
そして、逆に気になった点をまとめてみました。
・とにかくミュージカルシーンが多い。
元がミュージカルの『ウィキッド』より多い。
というか多すぎ。
エンドクレジットを見たら13箇所くらいあったらしい。
いくら概要にミュージカル映画と書いていても
ここまで多いと思わなかった。
白雪姫の父(王様)にいたっては
普通のセリフがほぼほぼなく、
ずっと歌ってたら出番が終わっていた。
・『白馬の王子さま』は存在ごといなくなり、
代わりになぜか山賊の男、
そして多様性に富んだ山賊仲間が出てくる。
正直、登場させる意味が全くない。
ほんの少ししか活躍しないし、
物語においても大して必要性がない。
いなくても成立すると言わざるを得ない。
ボウガンの名手?の小人が出てきて
ラストではおいしい所もいただくキャラがいるのだが
そのキャラですら掘る必要を感じられない。
そういった人物のことをふくめても
出てくる必要性は感じられない。
ボウガン使いの恋愛模様とかどうでもいい。
小人たちの見せ場でもある白雪姫と踊るシーンは
山賊たちも一緒に踊ってしまっているせいで
小人たちにフォーカスされない。
元アニメの魅力的な小人たちが見られなかった。
7人の小人はCGなのにボウガンの名手は
役者を使ってるのも気になった。
…というか単純にややこしい。
七人の小人はドワーフのようなもので
ボウガンの小人は人間?わかりにくい。
・元アニメでは白雪姫が動物と働く魅力的な歌唱シーン、
『口笛吹いて働こう』の場面が実写になると
なぜか小人が掃除をするよう改変されている。
しかも白雪姫は歌うだけで掃除をしない。
そのせいか、単純な小人を上手いこと丸め込んで
こき使ってるように見えてしまう。
・動物たちをもっと見たかった。
鹿に洗濯物を干す場面も、
小鳥が足跡でパイの模様を作る場面もない。
毒りんごを食べさせられた白雪姫のもとへ
小人たちを連れ戻すシーンはとても良かったが、
その部分はやはり原作準拠のシーン。
・白雪姫をにがす狩人?が白雪姫の心臓の代わりに
りんごを入れる必要性がよくわからない。
見られたら一発でバレる。
元々は豚の心臓かなにかだったような。
・白雪姫と山賊リーダーとの痴話喧嘩が見てられない。
これはあくまで私の考えだが、
白雪姫は無垢で純粋だからこそ
周りの人間は彼女の魅力に引き込まれるし、
怪しいおばあさんからもらった毒りんごを
受けとって食べてしまう事にも腑が落ちるのに
今作の白雪姫は山賊と痴話喧嘩したりのろけたり、
雑巾を下に投げつけたりあからさまに嫌な顔したり、
とても人間らしい。
通常『人間らしい』は誉め言葉だが
私は半端なリアリティよりも
おとぎ話のヒロインである『白雪姫』を見たかった。
・小人の一人、おとぼけのキャラ改変が気になる。
彼はいつもとぼけているから『おとぼけ』なのに
まるで心が病んでしまって喋れないかのように扱われる。
他の小人たちがおとぼけを
イジメているようにも見えるシーンすらある。
せっかく作中イチのコメディキャラなのに
その良さが奪われてしまっている。
口笛を吹き出した時点で嫌な予感はしたが
安易に喋りだす展開はやめてほしかった。
・白雪姫が女王に挑もうと決起して
『良い考えがある』みたいな事をいうので
なにか策があるのかと思えば
真正面から民たちの前に現れるだけ。
民を説得したり扇動したりするのかと思えば
無言で目の前に現れて城に向かって歩くだけ。
しかし民たちは何も言わず白雪姫に味方する。
どうせそういうシーン作るなら
白雪姫が力強く説得するシーンとか欲しかった。
・民が白雪姫のあとについていくシーン、
なぜか前列は女性ばかり。男たちは後ろのほう。
ここまで多様性や平等を重視してきたのに
そこに男女差のあるシーンを入れる意味がわからない。
・城の兵士たちが白雪姫側につく理由が希薄。
『兵士たちの名前や思い出を覚えていたから』
という理由で兵士は改心するのだが、薄い。
あと『城の兵士や国民ってこれだけしかいないの?』
と言いたくなるくらい
国の規模が小さすぎる事も気になった。
・女王の最期がよくわからない。
確か元アニメでは小人たちを岩で潰そうとして
逆に崖へ転落するみたいな感じだったと思うが
今作では鏡を壊すとその鏡に吸い込まれる。
鋼の錬金術師のような最期だった。
・この作品は『白雪姫』という本をめくる所から
物語がはじまるのだが、
冒頭で本を開く時は表紙のタイトルが
日本語で『白雪姫』と書かれていたのに
物語の最後、本を閉じる時タイトルが
『Snow White』と英題になっていた。
おそらく普通にミスってる。
・吹替版のタレント声優さん(山賊)がビミョー。
近年はタレント声優でもそれなりに声優としての
演技が出来ているので、粗いと尚更目立つ。
アイドルらしく、歌は上手い。
・子供に向けられている作品のハズなのに
子供には理解出来ないような
難しい言葉がところどころ使われている。
同じ劇場に子供は何人かいたが、
途中で飽きてたっぽかった。
・・・と、
気になる点の方が圧倒的に目立つ。
正直、細かいところを含めれば気になる点はもっとある。
どうせ追加要素を入れるなら
『なぜ動物たちとコミュニケーションがとれるのか』
『なぜ姫を○すためにわざわざ森へ連れていったのか』
『なぜ女王はわざわざ老婆に化けて自ら赴いたのか』
の理由などを描いてほしかった。
この作品は公開前からさまざまな物議を醸したが
そういうことは一度忘れて、
あくまで作品の良し悪しで鑑賞したつもりだった。
だが私がこの『白雪姫』を鑑賞した結果、
自分にとっては『凡作』と言う他ない。
特別ヒドいとまでは思わないが
とてもあの名作アニメの実写を、
天下のディズニーが、
何億ドルもかけて製作したとは思えない。
※その他、思い出したら追記するかもです。