秒速5センチメートルのレビュー・感想・評価
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いいところもけっこうあるんだけどね
点数低めですが、駄作というわけでもないし、けなすつもりもありません。ただ私とは合わなかった。
アニメ版はかなり以前に見たことがあるが、特別な思いは無くおおよそのストーリーを覚えている程度。
映像は大変きれいで、アニメで作りこんだ場面を思わせるようなところもあり、作り手の感性+技術の進歩の偉大さを感じる。俳優陣も全く悪くないのよね。主役の二人に加えて脇を固める吉岡さん宮崎さん、森さん白山さんも。
アニメとは変更点多し、との話をネットでちらっと見かけたので、約束のシーンも変わるのか?とも思ったが、前半から話の展開がどう考えても無理そうでやはり再会は無かった。まあ、貴樹の最後のほうの姿からすれば、何らかの形で二人が再開するのもありだとは思うが、やはりそれではかなり別の物語りになってしまうか。
昔の経験、記憶に縛られいろいろ拗れたままの主人公の話はいくつか思い出すが、どうも男が多いね。”男は過去、女は未来に生きる”が世の通説なようでそのほうが描きやすいのか。でもそもそもまっとうな人間関係が築けなさそうなほどの貴樹の拗れが過去の出来事にどれだけ結びついているかどうかも怪しいし、長年の蓄積がいくつかの偶然でややあっさりと氷解していくあたりが合わなかった最大の要因。まあ、氷解を後押しする恩師の宮崎さんや館長吉岡さんとの交流はよかったんだけどね。
おおむね評価します。
これはバッドエンドではない
ある程度大人になった人間にとってこの映画の過去パートは、
さぞや甘酸っぱいがすぎることでしょう。
特に男性においては
充実しなかった、鬱屈としていた、
好きな人に告白できなかったなど
まぶしい青春を送れなかった人ほど刺さること請け合い。
中高年の男子なんてものは大抵が格好をつけ、
心ここにあらずみたいな態度をとり、
クールを気取り演じる生き物。
この映画の主人公はそんな恥ずかしい格好つけを
『素』でやっているので
映画を見ている男性諸君は恥ずかしい過去を思い出して
身悶えするかもしれない。
しかも文字通り『次元が違う』原作アニメとは異なり、
実写なのでダメージがダイレクトに伝わる。
いつまでも『初恋』という一番輝いていたアノ頃に
捕らわれ続けている男に対し、
彼女が最後に出す『答え』が実にいい。
なおかつアニメとは違い現代パートを多めにする事で
主人公がいかに初恋をひきずっているかがよくわかる。
アニメのあっさりした結末も素晴らしいが、
この実写は原作のそれとは違った魅力がある。
元のアニメ映画を見た人で
『この映画はバッドエンド』と称する意見をたまに見かけるが
これは決してバッドエンドではなく
むしろ未来が明るくなる映画だと思っています。
実写がどうなるかはご自身の目でお確かめください。
個人的な名作!
原作に思い入れがありすぎるので
初恋は実らないってやつ(?)
実写になっても消えない、儚さと美しさ
アニメ版は数年前に観ていましたが、ストーリーの細部はもううろ覚えのまま劇場へ。それでも、スクリーンを見つめるうちに「そうそう、こんな感じだった」と記憶がよみがえる瞬間が何度もありました。
実写版はアニメの絵コンテを意識した構図で撮られていて、再現度の高さに驚きました。新海誠監督の映像が20年近く経っても印象に残っているのは、当時から視覚表現のリアリティに優れていたからだと思います。実写になっても、あの透明感や空気の揺らぎがちゃんと残っていたのが嬉しかったです。
一方で、実写ならではの描写も印象に残りました。転校を繰り返す遠野は、同級生より少し早く大人になったように見えますが、社会に出る頃にはどこかで追い越されているようにも感じます。
その不器用さを、周りの大人たちが優しく見守っている。原作にはなかった“他者のまなざし”が加わったことで、遠野という人物の奥行きが深まっていました。
明里の描かれ方にも大きな違いがあります。アニメでは、遠野との日々は淡い過去として整理されていて、ふとした瞬間に思い出す程度。
一方、実写版の明里は、あの記憶を「今の自分を形づくる一部」として生きています。恋愛感情の延長ではなく、自分を成長させた糧として抱いているように見えました。
キャストはそれぞれの役にぴったりで、米津玄師の主題歌も作品の余韻を静かに包み込んでいました。
観終わったあと、映画というより“記憶のアルバム”をめくったような感覚に。時間が経っても消えない想いを、そっと思い出させてくれる作品でした。
きっと大丈夫
原作ファンと初見の人、両方を満足させるのは困難な業と思いましたが、少なくとも前者の私は満足できました。
原作では、貴樹が遠距離恋愛の失敗から立ち直れず、かといって、何者にもなれずに挫折(退職)したところで更にすれ違いでダメージを食らう、というのが一番救いようのない(それが魅力と捉える人もいるかもしれない)ところでした。
しかし本作では、ちゃんと再就職し、更に明里の間接的な励ましで前を向き始めることが示唆されており、最後の有名なシーンも原作では意味が測り兼ねたところが、本作では明里なしでようやくやっていけそう、という希望が持てるように解釈できました。ちゃんと昔の彼女に謝ったりもできたしね。
それは、本作でちゃんと「貴樹君はきっと大丈夫」という言葉をわざと最後に持ってきたことで、この改変は意図されたものということを示しているのでしょう。
また、挫折の理由も本作ではより分かりやすく示してくれていたと思います。
明里の方も、原作では実家を出る前に「あの頃は2人とも若かった(うろ覚え)」、といきなりこれまでの関係性をぶった切るところが、見ていて「こりゃキツイ」、と思わせたのですが、本作では昔の思い出もちゃんと大切にするよう書き直されていたのが、人間としてより血が通っているようで好感が持てました。
そういう意味で、新海監督が原作で言い足りなかったことを補足してくれている、と評価しているのはよくわかる気がします。
これらは原作からの内容の改変点でしたが、
原作の筋を大きく外さずに物語の時系列を変えるとか、すれ違いを増やすとか、あとは実写ならではの美しい景色を見せる、とか原作ファンを飽きさせない一方、原作ファンが大事にしているシーンは殆ど完コピ(岩船駅の再会、ロケット打ち上げ、最後のシーンなど)、というバランスも見事だったです。
初見の人にはともかく、原作ファンには少なくとも私はおすすめできます(説明しすぎている、という批判はあるかもしれませんが)。
「モテモテ主人公」を見たくない方はスルーして!
女優陣が全て最高!!
すれ違いまくる
新海誠監督の原作アニメを観て久しく、あまり覚えてなかったので、新鮮な気持ちでの観賞でした。新海アニメの特徴でもある風景やお天気の美しさやリアルな街の描写などが実写でもしっかりと描かれていて、観ていてうっとりしてしまいました。アニメ版でも印象的だった山崎まさよしの「One more time, One more chance」が物語にシンクロしていて、感動的でした。「これでもか!」というくらいすれ違いまくる展開ですが、俳優陣の演技力と奥山由之監督の丁寧な演出により、とってつけた感はギリギリ免れていたように感じました。主人公・遠野貴樹役の松村北斗もはまり役だったと思います。とりわけプラネタリウムのナレーションの声の響きがすばらしくて、とても臨場感がありました。子役たちの演技もすばらしくて、想い出が記憶の中で美しくなっていく感覚が巧みに映像化されていて共感しました。幼少期の篠原明里を演じた白石乃愛ちゃんとか、ちょい役ですが堀内敬子とか木竜麻生とか、整然とした美的統一感のようなものを感じました。
その言葉でその人を思い出すんだね…
笑いどころは一切無し
・つまりまったく感情移入できない。
笑いどころがあるから、悲しい展開も一緒に悲しくなれる。それが良い作品だと思う。しかしこの映画に笑いどころは一切ない。
・口数は少ないがなんかモテてる"俺"と、なんか俺のことを好きになってくれてる女とのやりとりを一方的に見せられ続ける。苦しい。
ドラマドラマしていないと言えば聞こえは良いが、ここまで視聴側がほっとかれると、もう何が起きてもどうでもいいと言うか、野郎がどうなろうが知ったこっちゃないな、と思ってしまう。ラストで刺し56すくらいの展開があればまだ良かった
・ボソッと何かを言う、会話に被せて言う、みたいなシーンが何度かあり、不快でしか無い。リアルにみせるアドリブなのか台本なのか分からないが、違和感しかなく、作品を汚してるだけだ。
・高畑。国宝の時もそうだったが、別に高畑ならくれてやると思ってしまう。いなくなっても悔しく無い。
ちゃんとオーディションをして新しい女優を発掘して我々に見せてくれたほうが作品のためにも世のためにもなることでしょう。
人肌の温もりが漂う実写
何年か前にアニメーションで観た、この映画の実写化キャスト陣を知った時、記憶が遠いのもあってか自分で描いてたイメージとは少し違っていた。特に高畑充希さんの篠原明里はアニメより少し明る目になるのでは?と少し危惧していたのが実際観てみると、明る目と言うよりはフンワリ温か味を感じて、松村北斗さん演じる遠野貴樹を見守っている感じが人肌を感じさせた。
実写でより強く感じたところは、ロケットが打ち上がって遠くなって行く様が貴樹の一途な思いと重なって見えたのと、やはり山崎まさよしさんの歌が聴こえてきたところは、より貴樹の孤独さが伝わって来て感極まった。絶妙なタイミングで聴こえて来るから‼︎
小中学生の頃を演じた上田悠斗君と白山乃愛ちゃんはイメージ通り無垢で純粋に思い合う気持ちを表現出来ていて素晴らしかった。
アニメーションと実写化では少しイメージは違った感じはしたけれど、アニメでは伝えられない人の温か味を感じられ、実写化の醍醐味を味わう事が出来て良かった。
描かれすぎた秒速5センチメートル
新海誠作品の中でも、とりわけ静かな痛みを描き個人的には一番お気に入りの作品。したがって実写版は楽しみと不安相反する気持ちで鑑賞。
そんな立場からすると今回の実写映画化においては、その「痛みの本質」がやや形を変えてしまった印象を受ける。
なぜ、「あの曲」の使用をあのタイミングで、しかもあんなに短くしたんだ!
結論から言えば、この作品は「原作を見たかどうか」で評価が大きく分かれると感じる。
16mmフィルムで撮ったかのようなルックは素晴らしい。(時代ごとにその「画面の粗さ」が変わっていればもっと最高だったが。)
原作をトレースしたかのような画作りも、リスペクトを感じ好感。
内容も時系列や構成はやや変えたものの原作から大きな改編はないように「一見」思える。
が、私は原作との大きな、決していい方向ではない違いを感じてしまった。
一番残念なのは原作アニメ版が持っていた核心、すなわち、音楽と映像が一体化して生まれた“感情の余白”が抜け落ちてしまっている点。
原作版ラストで流れるあの曲こそ、貴樹と明里が再び言葉を交わすことのない世界における“唯一の対話”であり、感情の断絶を超えてつながる魂の余韻。主人公二人の切なさや想いや寂しさや儚い希望や現在の心境すべてをその歌詞に託した存在。
だが今回、その機能を大きく削いでしまった。作品の核心が静かに止まってしまったような寂しさがある。
一方で「その代わりに」といった印象で余計なものが足されている。原作にはないキャストから貴樹が明里の気持ちを知ってしまうシーンである。
その一瞬の「貴樹の了解」が、物語の詩情を決定的に損なってしまった。原作において二人は、互いの心を知らないまま時間の流れに呑まれ、言葉にならない想いが空白として残ることで観客に永遠の余韻を残した。そこに「知ってしまう」瞬間を挿入したことは、作品を“文学”から“説明”へと引きずり下ろしてしまった感さえある。
結果として、本作は「描かれすぎた秒速5センチメートル」になってしまった。
原作が観客の心に委ねていた部分を、映画は親切に埋めてしまった。その親切さが、この物語にとっては最大の不幸である。
タイトルの「秒速5センチメートル」。それは桜の花びらが落ちる速さであり、ひょっとしたら雪の落ちるスピードであり、愛が終わる速さでもある。
だが、本当に美しいのはまだ落ちきっていないその瞬間だったのだと原作は語っている。今回の実写版はその瞬間を見逃してしまったように感じる。
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