「東京国際映画祭の雰囲気を満喫!」オラン・イカン 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5東京国際映画祭の雰囲気を満喫!

2024年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

10月28日から始まった今年の東京国際映画祭。今まで観に行ったことがなかったのですが、通常の上映とどんな違いがあるのかと思い、ディーン・フジオカ主演の本作「オラン・イカン」を観に行って来ました。

まずは劇場の雰囲気ですが、会場となった丸の内TOEIの入口付近には海外の方と思しき方もいて、”国際映画祭”の雰囲気が早くも感じられました。入場するとロビーはごった返しており、普段感じられない熱気も。特にグッズ売り場は結構な行列でした。場内に入ると、9割以上の入り。いつもは両隣に誰もいない状態で観ることが殆どなので、ちょっと窮屈な感じも(笑)また観客の層も、映画館の客層というよりも歌舞伎座の客層に近いのではと思われたのは、東京国際映画祭だからなのか、丸の内TOEIの場所柄なのか、はたまたディーン・フジオカが舞台挨拶するからなのか。
そして上映終了後にはマイク・ウィルアン監督とディーン・フジオカが登場。これも中々盛り上がり、観に来た甲斐があったと感じました。

さて肝心の本作の内容ですが、第2次世界大戦中のオランダ領東インド、すなわち現在のインドネシアを舞台にした、戦争、ホラー、(敵軍兵士同士の)友情などを描いたお話でした。ホラー部分に関しては、インドネシアの民話にも登場し、戦時中の日本兵による目撃譚もあるらしいOrang Ikan(直訳すれば魚人)=半魚人が登場し、近寄ってくる人間どもを仕留めるというものでした。また半魚人が単なる怪物ではなく、彼らにも家族がいるという設定になっていて、これがディーン・フジオカ演ずる主人公・斎藤の性格を描く上での鍵にもなっている存在として描かれているのが特徴でした。

また上映後の舞台挨拶で監督が話していましたが、本作は1968年制作のアメリカ映画「太平洋の地獄」のプロットに、半魚人伝説を融合させた話のようでした。「太平洋の地獄」は、第2次世界大戦中に日本兵とアメリカ兵が南太平洋の孤島に漂着し、最初は殺し合うものの、やがて力を合わせて島を脱出するというストーリーのようで、日本兵はなんと三船敏郎が演じているそうです。「オラン・イカン」もディテールに相違点はあるものの、ディーン・フジオカ演ずる日本兵と、カラム・ウッドハウス演ずるイギリス兵が最初は殺し合うものの、言葉が通じない中でも徐々に気脈を通じ、オラン・イカンと対峙するという流れになっていました。

お話としては中々面白かったし、主演2人のアクションを含めた演技も良かったのですが、姿を現したオラン・イカンはちょっとイマイチだったかなという感じも。最初のうちは敢えてどういう姿なのか映さず、観客の緊張を高めるとともに怪物への興味が高まって行きましたが、実際観てみると月並みなお姿の怪物さんだったのは残念でした。

そんな訳で、東京国際映画祭の雰囲気を十二分に味わうことが出来て大満足できたところでした。そして本作の評価は★3.5とします。

鶏