「音楽映画にハズレなし」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)
音楽映画にハズレなし
ドキュメンタリーであったり、歌手(バンド)を主人公に据えた伝記的なフィクションであったりしても、音楽(ポピュラー音楽)を主題にした映画にハズレはほとんどない。
それは、ヒット曲そのものに魅力があるため、たとえ映画の中で描かれる物語が薄いものだとしてもそれを補って余りある映画として完成するからだ。
本作も、ディランの初期ヒット曲が多数流れ、おそらくご本人は基本的に協力しない中、既に知られている物語をなぞった体の映画だと思う。
しかし、ディランの歌そのものに魅力があり、主演俳優をはじめ、違和感なくその世界を再現している。合格点の出来栄えといえる。
映画を見る分には、若き日のディランの生き方はそれほどドラマチックなものでもなく、中盤はダレた印象も受けた。
ジョーン・バエズと深い仲だったというのは初めて知ったのだが、そのほかガールフレンドとの関係なども描かれるが、ディランの深い人間性を感じるようなシーンはほぼなく、ドラマ的には深みも見せ場もないなあ…と思いながら見ていた。
しかし、映画のクライマックスとなる、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでエレキサウンドをフィーチャーしたことで大ブーイングを受けながらも「ライク・ア・ローリング・ストーン」を歌う場面。あそこはひきつけられた。
あれを見るだけでもこの映画の価値はある、と思った。
帰りに売店でパンフレットを買おうと思ったら、品切れだった。封切られたばかりというのに、配給元は何をやっているんだ?!
東京都心のシネコン、平日昼間の回は入りは4分の1くらいで年齢層は高かった。200円高いDolby-ATMOS版で見たが、その必要はなかった感じ。
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