「1961年から1965年を駆け抜けていたボブ・ディランの姿を、音楽を盛り沢山で軽快に魅せる快作」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
1961年から1965年を駆け抜けていたボブ・ディランの姿を、音楽を盛り沢山で軽快に魅せる快作
ボブ・デュランと聞くとリアルタイムでは生まれないので、タモリ倶楽部の空耳アワーで取り上げられていた「鼻血ピュー〜♪」ネタとか、漫画家よりタレント印象が強い、みうらじゅん氏の渾身の傑作漫画『アイデン&ティティ』に主人公にしか見えないイマジナリーのボブ・ディランが現れて生き方を指南する内容などで知ったので、有名な曲などはその辺りで聞いていた。(ちなみに続編にはイマジナリージョン・レノン&オノ・ヨーコが登場して感動的なラストを迎える傑作です)
さまざま題材を扱いながら質の高い作品を撮る雇われ職人監督のイメージもあったジェイムズ・マンゴールド監督(そういえば監督作の題名に“アイデンティティー”があったな!)ではあるが、今回も見事な演出で小気味良く若いディラン姿を、名曲盛り沢山に使い見事につないでくれる。(アカデミーの主演が取れなかったのは残念)
主演のティモシー・シャラメの演技も歌も素晴らしく。
コロナ禍も挟んでかなり長い間練習して望んだらしいが、実際のディランとは見た目は余り似てないが、映画を見てるとなりきっている印象
ピート・シーガー役のエドワード・ノートンの温厚で抑えた雰囲気からの後半に激怒にいたる演技も上手いのと印象に残る。
見ていて思うのは、バイクを乗り回すディランを筆頭にギターを持ったミュージシャン達が、バイクを馬に、ギターをライフルに置き換えると各地を周り音楽を奏でるカウボーイ&ガールにも見え、ラストにガスリーを見舞った後にバイクで去ってゆくのは西部劇ぽい(題材はフォークソングだが、カントリーソングとも親和性が高い)
気になる点は、割とスケール感に乏しいのと、やはりあえてらしいがディランの内面やバックグラウンドはあまり描写されず、ひょっとして共感し難い可能性もあるのと、個人的に撮影は最新のデジタル撮影をしてフィルムライクに調整していて色調や背景のルックは抜群だが、手前と奥の人物にフォーカスが移動する場面で画面がヤケに歪むのがとてもノイズになった部分(何度もあるのでちょっとね)
予想より音楽が盛り沢山で、演出も小気味良く、ギターで歌いバイクで疾走するアクション性に、ボブ・ディランの内向きな英雄譚の側面もあるけど鑑賞感は爽やか😊で音響の良い劇場で観るのをオススメします。