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これまで知らなかった中国のことを知る機会となった。
中国は、主人公チアニーが生まれた約30年前と今では、これが同じ国かと思うほど、経済的に発展している。彼女が生まれた頃、中国は、今のような経済力を持っていたわけではないのだ。
私たちは、中国には里親制度が根付いていることを知っている。日本と中国の国交が開かれてから、最初に大きな問題になったのは、中国残留孤児の件だった。あの方達が日本に戻ってきたことが、両国の真の交流の道を開いたのだと思う。その時に、里親制度のことを聞いて、中国の人たちの寛大さを思い知った。ところが、チアニーの場合は、養子縁組をしていたことが明らかになる。つまり、一時的なものではなかったのだ(里親は、基本、青年期まで)。それならば、当然、戸籍に残っていたはず。
しかも、養父の下に、もらわれてきた背景には、男尊女卑や一人っ子政策だけでなく、経済力の影響も無視できない。同じ父母の下に生まれ、そのまま残った長女のウェンフォンは、成績はよかったのに高校に進むこともできなかった。一方、優しい養父の下で育てられたチアニーは、大学を出てビジネスの現場にいる。
ただ、ここでも気になったこと、チアニーは比較的小さい頃(小学校の高学年か中学生に見えた)、養父を事故で喪っている。養父亡き後、誰が彼女の面倒をみたのだろう。後妻らしい人はいたが、同居しているようには見えなかった。養父は、その頃から、VWに乗っていたから豊かであったことは間違いないが。
それと、映画の冒頭に不思議な二人が出てくる。5年前(つまり彼女が大学を出て、深圳に移ってきた頃)、空港の通路で男性と一緒になる。しかし、どう見ても、恋人のジーユェンには見えなかった。あれは、養父の亡霊だったのか。そうなのだ、この映画は構造的に分かりにくいところがある、それが、とても残念。
描き方にも難点が。実父が亡くなった知らせを受けて、葬式に参加するため、海沿いの生まれ故郷にやってきたチアニーは、ことあるごとに養父との幼い頃のエピソードを思い出す。それが頻繁にカットバックで描かれるのだが(台湾映画の影響か)、両時間軸をつないでいるのは、彼女の吹くハーモニカ。残念なことに、女優さんが吹いているようには見えなかった。カメラの回し方も、テンポが極めてゆるく、眠くなる。
じゃあ一体、何がよかったの?撮影地に選ばれた青島の美しさに尽きる。青い海を背景に、港に面して、緑の丘陵がひろがり、切り開かれた斜面には、赤い瓦の屋根が連なる。いつまでも見ていたいここちよさ。若い監督の次回作に期待!