「大学デビューに夢を見た若者は、黒歴史の中で成長を遂げていく」I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
大学デビューに夢を見た若者は、黒歴史の中で成長を遂げていく
2023.12.30 字幕 アップリンク京都
2022年のカナダ映画(99分、G)
映画マニアの17歳が巻き起こす騒動を描いた青春映画
監督&脚本はチャンドラー・レヴァック
原題は『I Like Movies』 で、劇中で主人公が発するセリフ
物語の舞台は、カナダのトロント郊外にあるバーリントン
そこにあるアンダーショット校に通う17歳のローレンス(アイザイア・レティネン)は、映画好きが講じて、親友のマット(パーシー・ハインズ・ホワイト)と共に「はみ出し者の夜」を開催していた
その会は「サタデー・ナイト・フィーバー」を鑑賞したり、お気に入りの映画を見たりするもので、二人はクラスの「思い出ビデオ」の制作も任されていた
担任のオレニック先生(アナンド・ラジャラム)は遅れている進行状況に苛立ちを見せ、テーマ外の課題を提出されて憤慨していた
ある日のこと、行きつけのビデオ店「シークエルズ」に母テリ(クリスタ・ブリッジス)と訪れたローレンスは、延滞料金の発生によって新作を借りられなかった
そのビデオはマットが自分名義のカードを使って借りたものらしく、彼はマットからビデオを取り返さなければならなくなった
店長のアラナ(ロミーナ・ドゥーゴ)は猶予を与え、ローレンスはついでに持ってきた履歴書を手渡した
ローレンスはNYC(ニューヨーク大学)の映画学科に進学することを夢見ていて、そのための学費を稼ごうと考えていた
母は父も通った地元のカールトン大学への進学を希望していたが、ローレンスはどうしてもニューヨークの大学に行きたかった
それから数日後、急遽欠員が出たとのことで、ローレンスに電話は入る
面接の末に採用された、ローレンスはシークエルズの一員となることになったのである
映画は、このアルバイトを機に「はみ出し者の夜」ができなくなり、さらにマットに対して決定的な一言を言ってしまったがために疎遠になる様子が描かれていく
マットはクラスメイトのローレン・P(エデン・キューピッド)に好意を寄せていて、マットと一緒に作っていた「思い出ビデオ」に彼女を参加させようと考えた
だが、ローレンスは頑なに彼女を拒み、それによってマットはローレン・Pと一緒に「思い出ビデオ」を作ることになった
また、ローレンスは「高校時代の友人は「仮」だ」と考えていて、大学になれば新しい生活が始まると思っていた
過剰な夢を見て、カナダから脱出することを考えていたのだが、とうとう大事件を起こしてしまう
それは、規定違反の店舗での泊まり込みに加えて、正面玄関ののであるロックを掛けなかったことによって、大規模な盗難に遭って大損害を出してしまった
泊まることを許可したブレンダン(アンディ・マックイーン)は解雇され、ローレンスも従業員特典が使えない見習いへと降格される
だがアラナは一連の身勝手なローレンスの行動に憤り、即時解雇をして欲しいと本部のオーウェン(Dan Beirne)に申し立てるのである
映画は、拗らせ系高校生に巻き込まれる大人を描いていて、人に好かれたいと思うローレンスが自分の行動の結果を予測できないがゆえに思わぬ事態になる様子が描かれていた
ビデオ店を辞めてからアラナと再会したローレンスは、そこで「どうやったら人に好かれるのか?」と聞く
彼女は「人の話を聞くこと」と言い、その実践の難しさというものを体感するようになる
夢は破れ、父と同じ大学に通うことになったローレンスは、ひょんなことから同級生のタビサ(ヴェロニカ・スロウィコウスカ)から声を掛けられることになるのだが、この結末はちょっと出来過ぎな感じもしないでもない
映画好きじゃないとわからない引用が多いのだが、ぶっちゃけると知らなくても「物語の進行にはほとんど影響しない」ので、「ローレンスはオタクなんだなあ」ぐらいに思っておいてもOKだと思う
細かな引用と比喩表現を知るためには知っておいた方が良いとは思うものの、全部網羅しようとすると15本ぐらい観ないとダメなのと、配信で観られるかわからない作品も多い
なので、無理して予習する必要はないのだが、『マグノリアの花たち』だけは「本作内でネタバレされる」ので、気になる人は先に観ておいた方が良いのかもしれません
いずれにせよ、古傷を抉るような映画でもあるし、対岸の火事のようでもあるし、両極端な印象を持たれる作品のように思う
ローレンス自身は共感を得るタイプではなく、子ども相手にムキになるアラナも大人気ないと思う
社会勉強をするには未熟な精神性なのだが、大体の人がこんな感じに黒歴史を作っていくと思うので、それはそれで微笑ましく思えるだろうか
人の話を聴くというのは一種の才能だと思うけど、尋問になってしまうタイプの人はコミュ障っぽさがあると思うので、自分が相対した場合も微笑ましく待ってあげたら良いのかな、と思った