「ハードなアクションがなくても楽しめる」ネムルバカ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ハードなアクションがなくても楽しめる
「ベイビーわるきゅーれ」を彷彿とさせるような、緩くてグタグタなガールズトークを存分に楽しめる。
大学生たちの話なのに、キャンパスライフがまったく描かれないところや、主役の2人だけでなく、登場人物たちが、揃いも揃ってクセの強いキャラクターばかりというところも面白い。
基本的に、延々と会話劇が続くだけなのだが、それでも、先輩の「自称アーティストたちのダサイクル」の話は身につまされるし、男友達の1人がつぶやく「大半の人は、何かをしたいのに、したいことが分からない」という言葉にも大いに納得することができた。
何よりも、明確な目標があり、自らの夢の実現に向けて努力している人間だけでなく、そうした人間を羨ましく思う側の人間にもしっかりとスポットライトを当てていて、彼らに寄り添おうとする姿勢には、共感せざるを得なかった。
やがて、ミュージシャンとして成功する先輩と、取り残される後輩の姿には、誰もが味わう「去りゆく青春」のホロ苦さや切なさが感じられて、しみじみとさせられる。
クライマックスとなるコンサートでは、それまでの脱力系の雰囲気を吹き飛ばすかのようなエモーショナルな盛り上がりが用意されていて、自分のやりたかったことを爆発させる先輩の姿や、先輩が自分たちのことを忘れていなかったことに気付く後輩やバンド仲間の姿には、思わず胸が熱くなってしまった。ここで初めて「ネムルバカ」のタイトルが大写しになるという、心憎い仕掛けも効果を上げていると思う。
「先輩の失踪」という事件と、女子寮で同居する先輩と後輩の日常の描写によって、オープニングと繋がっていくエンディングには、新たな物語への予感があって、何だか明るい気持ちで劇場を後にすることができた。