敵のレビュー・感想・評価
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考え始める時期かもしれない
長塚京三は「恋は、遠い日の花火ではない」っていうCMやってたんだよね。
調べたら1994年だって。
そのときも「長塚京三ならそうだろうけど、普通の人は……」って感じだったんだけど、そこから31年経ってまだやってんのがすげえな。
瀧内公美はすごいね。
年取ってから、瀧内公美が家に遊びに来たら、そらよろめくわ。
河合優実には引っ掛からない。若すぎるよね。
長塚京三は功成り名を遂げて、気に掛けてくれる教え子もいて、それ以上を望んだら贅沢じゃんという感じもすんのね。
でも、輝かしいポジションから突然降りた人の方が、身の振り方が難しいっていうから、余計に厳しい状態だったのかな。
それで、長塚京三はカッコつけたことばっかり言うんだよね。
妄想でいっぱいなのに、瀧内公美や河合優実にはいいかっこしようとして。《失われた時を求めて》の料理を練習してるの見ると「これは、カッコ悪い……けど、やっちゃうなあ」って感じなの。
死ぬのもウダウダ言って「未練ないんだよ」って感じにしてんだけど、全然そんなことないんだよね。
それでももがいて最後になって『みんなに会いたい』って素直になったところで、お迎えが来るの。
ストーリーは途中から夢が連発されて、不条理化されてくね。
『敵』はなんなのさっていうと『老い』で、逃げようとしてるうちは駄目なんだよね。
よし、戦うぞってところで負けて終わりだったけど。
どんどん不条理の幅が大きくなってくところが「さすが筒井康隆」って感じなんだけど、それを映像化した吉田大八がすごいね。今回は脚本もやってんだね。すごい。
死ぬことは生きることと見つけたり
決して万人向けではないカルト的な作品ですが私はすごく好きでした!
結局は孤独な老人のほぼ幻想ですが、死を目前にして諦観してるだけかと思いきや、性の欲望や闘いの憧れなど生への執着が満ちていたというほろ苦いお話し…
何よりも長塚京三さんの演技が素晴らしい!さすがソルボンヌ大学卒こその説得力もあり、仏文学の教授を見事に演じていました。
最期は走馬灯ツアーにお付き合いでしたが、現実じゃないとわかっていたので楽しめました笑
自分のようなテリーギリアム好きであればオススメかと。
【”老いという敵に抗う”元フランス近代演劇史教授の姿を、彼が観る夢と現実が混交していく様をモノクロームで描いた作品。瀧内公美さんの長い黒髪のエロティックさが妖艶でありました。】
■元フランス近代演劇史教授、渡辺儀助(長塚京三)は、妻(黒沢あすか)に先立たれ、独りで大きな平屋に住んでいる。
だが、彼の日常はベッドでぐっすりと寝て、パソコンで執筆し、食事は蕎麦、冷麺などを手早く作り、食後は珈琲豆を自ら引き、夕食ではワインは欠かさずに飲むという優雅なモノであった。
偶に、元教え子(瀧内公美)がやって来たり、行きつけのバーのアルバイトのフランス文学専攻の大学生(河合優実)と会話したり・・。
だが、ある日パソコンに”敵が北から来る。”というメールが来るようになり、彼の生活リズムは狂って行く。
◆感想<Caution!内容に触れています!>
・儀助の妄想が夢の中で、徐々に大きくなっていく様は、明らかに彼のボケの始まりであるが、聡明だった知識がその進行を食い止めている事は、直ぐに分かる。
・序盤は、彼の独りでの一定のリズムある優雅な生活が描かれる。食事もササっと手際よく作り、ササっと食べている。
フードコーディネーターを飯島奈美さんが担当しているので、モノクロでも、焼き鮭、蕎麦、冷麺、ハムエッグなどとても美味そうである。
・行きつけのバーでは借金を抱えるフランス文学専攻の大学生に、コロッと300万をだまし取られるが、それも自分が社会性がない事だと,諦観しているのである。
・が、彼の優雅な生活が、一通のメールが来たことで徐々に乱れて行く様を、作家性の高い吉田大八監督が実に上手く描いている。
辛いキムチを乗せた冷麺を食べたためにお腹を壊すシーンで、夢で内視鏡が入って行くシーンや、亡き妻が蘇り一緒に風呂に入るシーンや、元教え子と寝るシーンや(で、夢精している。お元気である。マア、瀧内公美さんだからねえ。)、元教え子から学生時代に長時間仕事に付き合い、夕食を共にした事を詰られ、いつもガバっとベッドで目覚めるようになっていくのである。
■極めつけは、儀助のお隣の老人が犬の糞の事で、いつものように女性に難癖を付けている時に響いてくるライフル音のシーンであろう。老人は眉間を撃ち抜かれ、女性も犬を追いかけて行って射殺される。
更には、元教え子と鍋を食べようとすると、出版社の男(カトウシンスケ)や亡き妻が現れるシーンからの、出版社の男が、元教え子に鍋で叩き殺されるシーンまで描かれる。
儀助はその死体を、漸く掘った井戸に捨てるのである。
儀助のボケが相当に進行している事が分かる。
<そして、儀助が書いていた遺言状により、彼の家財、書籍一式は遠縁の男(中島歩)に相続されるのだが、それも又夢、という非常にシニカルな終わり方をするのである。
この作品では、”敵”の正体はハッキリとは描かれないが、私は”老い”である、と思い鑑賞した事を記載して、レビューの締めとする。>
おじいさんが色々なものを失っていく物語?
家族(妻)、仕事、健康、女。そういうものを加齢とともに失っていく一方で、失いたくないという願望が歪んだ形で夢に現れる。
妻、教え子、そしてガツガツ鍋をむさぼり食う若年編集者らと鍋を囲むシーンはそれらがいっぺんに凝縮した場面だった。
おじいさんが独居生活を営む淡々とした日常描写が大半を占めるが、主演の長塚京三の演技力や歳を重ねたからこそ味わい深くなる魅力、画面作りの丁寧さなども相まって退屈だという印象は全く無かった。
作中「敵は急に現れる」と語られているが、確かにその通りで老いやさまざまな喪失を迎えるその時まで人はそれに気付かないものだ。
最終的に彼が自死を選んだか否かは描写されていないが、年齢を考えても比較的健康な様子だった冬から季節が移った春には既に亡くなっていたのでおそらく自死を選んだのだろう。生きるためだけに生きることに彼は結局耐えられなかったのだ。
追記
この映画、結構話題作だと思っていたんですが私の県ではTOHOや109、イオンシネマの上映はなくミニシアターだけが上映していました。意外でした。
筒井康隆感、長塚京三感
老教授の満足感ある日常が綴られる前半、大した展開も無いが、モノクロの画面で小気味良いカッティングで目が離せず、既に今年度上位の傑作を確信して見入ってしまう。その日常は後半になるに従い静かに崩されていくが、その崩され方もまた心地よい。
筒井康隆の本作原作は未読なれど、現在60歳の我の年代では「時をかける少女」のみならず多数の映像作品も含めて基本知識は身に付いている。ご馳走様でした。
長塚京三はインテリ感、ロケセット家屋に住んでる感、きっちり家事やる感、教え子に好かれる感、ちょっとエロいこと考えてる感含めてぴったりミートしていて早くも主演男優賞候補。黒沢あすかのセリフにはムフフなマタゾウでした。「由布子の天秤」瀧内公美に河合優実、中島歩、満足感のある配役でした。アップリンク吉祥寺にて鑑賞、狭い小屋ながら9割りの入りでした。
長塚京三の色気
確も色気のある人というものは(特に男性)
この作品の渡辺教授(長塚京三)のように
常に身だしなみを整え、ユーモアを忘れず
食事にもひと手間かけ慎ましやかに
でも美味しいものを食す。
夢精はすれど(あの年齢でもするんですかね笑)
卑しい性欲なんておくびにも出さない。
んなわけあるかい!(笑)
されど
年下好きを自他ともに認める個人としては
ある意味初めてこの80歳近い老人に
色気を感じ魅力を感じました。
「敵」とはなにか。
渡辺教授にとっては20年もやもめ生活を
送り続けていたことで
孤独や老い(痴呆かと思ったが)が「敵」とし
彼を襲ったのかなと思った。
個人的には、実はあの井戸の件だけは
事実だったりすると面白いなと思う。
妄想には現実が投影される
デヴィッド・リンチの訃報が流れた日にこの映画を観ることが出来たのはある種の運命なのか?
この作品のキーとなる部分は「マルホランド・ドライブ」と共通しているように思える。
それは、「主人公の夢(あるいは妄想)を通して、その主人公の現実を知ることが出来る」という点だ。
妄想はその人の現実が投影される。その人が何を考え、何を感じ、何を欲しがり、何を怖がり、そして何を後悔しているかが反映される。そしてそれらが時に誇張され、時に矮小化され、時に変形して、夢や妄想に現れる。
この映画でも、主人公の妄想を通して、主人公がどんな人間で、これまでどんな人生を歩んできたのかが推察出来るようになっている。
なので、「どこまでが現実でどこからが妄想なのか」を考えることはあまり意味を持たない。どちらも描いているものは同じだからだ。
現実パート(それすらもどこまでが現実かはわからないが)を非常に丁寧に描いていてとてもリアリティを持たせているので、そのおかげで妄想パートが非常にエッジが効いていてエキサイティングなものたらしめている。
また、役者陣の演技もとても光っている。主役の長塚京三はもちろんのことだが、最近乗りに乗っている若手女優代表格の河合優実がまた抜群に良い。
2025年はまだ始まったばかりだが、早くも今年のベスト映画候補になりそうな一本であった。
しみじみと切なく、身につまされる
「まあ“敵”って、“老い”やそれに伴う“孤独”とか“経済的逼迫”とかでしょ?」と軽く思いながら観ていたが、やっぱり「老い」のラスボス感は半端なかった。
長塚京三演じる主人公は、前半部では「perfect days」での役所広司のように、それを手懐け(たフリをして)、丁寧な充実した暮らしを送っている(ように振る舞っている)。けれど、教え子役の瀧内公美が登場してからは、どんどん虚実が入り混じり、最終的に何が真実なのかもあやふやになることで、彼自身の心の底にある欲望や後悔や捨てきれないプライドがどんどん丸裸にされていく(つまり何も乗り越えられていない)様子が、心底身につまされた。
遺言書もしたため自ら死を選ぶ準備と覚悟を持っているはずの主人公ではあるが、一笑に付す理性を持ちつつもネットの情報に引っ張られたり、庭先に人影を認めると、過剰なまでに取り乱したり、人間ドックをバカにしながら、血便が出るとすかさず受診したりして、「死」に振り回される。
そうした「死」をはじめとして、「コントロールできない恐怖を与えてくる対象=敵」ということが、犬のフンのエピソードや、経済学部出の編集者への攻撃的な態度、そして自分の中の抑えられない性欲(女医、瀧内公美、河合優実、妻)などとしても、様々に描かれる。でも、一番の「敵」は、主人公のラストシーン間近の「春になれば、またみんなに会える」というセリフ通り、「孤独」なのだろうな…と自分は受け取った。
他にも、ことさらに自分の体臭を気にしたり、食事面でも丁寧な暮らしをしていたはずが、無意識のうちに立ったままパンをかじってコーヒー豆を挽いたりという姿に、しみじみと切なさがつのる映画。
だが、それだけ自分に重ねて観させられたということで、作品としての訴える力はすこぶる強い。
ただ、ちょっとオカルトっぽい味付けについて、もしかしたら評価が分かれるかもしれない。
モノクロしか勝たん♪
長塚京三さんが主演&筒井康隆先生の同名小説を映画化!というだけでチェックしていた作品。
東京国際映画祭でグランプリ、最優秀監督賞、そして、最優秀男優賞の三冠獲得!の
ニュースを見ました。
おめでとうございます!
長塚さんの受賞時の喜びのコメントを簡単にご紹介↓↓
「ぼちぼち引退かなと思っていた矢先だったので、うちの奥さんは大変がっかりするでしょうけど、もうちょっとこの世界でやってみようかなと思いました」
とのこと!
奥様には申し訳ないですが、引退なんて言わないで!
まだまだ作品を届けて頂きたいです!
そして、私の中ではかなり癖ツヨなイメージの筒井先生。
もちろん時をかける少女は知っているし読んだし観たし(何verも)
"あの"パプリカを生み出したお方!!なので、存じ上げてはいるのですが、いわゆる代表作は未読でして。。
今本棚をぱっと見た所、持っているのは
「くたばれPTA」と「笑うな」の短編集2冊と
「銀齢の果て」←(°▽°)!!!
という、独特なチョイスの計3冊でした。
(我ながらすごいセレクションw
断捨離から生き残った精鋭)
「敵」は未読ですが、ちらり立ち読みした記憶。。(小声)
監督は大八さんなのね。知らなかった。
そんなこんなでレイトショー。
映画のプロ!お一人様男性ばかり。
物音ひとつしない最高の空間。
そんな中に混ざってツウ気分♪
それなのに私のお腹だけが
キュ〜〜ウゥゥゥ〜♪で申し訳ないm(__)m
さてさて作品は。。
心地良かった前半からカオスな後半へ、見事に転調していく。
ぐんぐん引っ張られ進んで行き、いつの間にか現実と虚構(夢)を行き来する世界へ迷い込まされていた。
そのスムーズさがお見事。
それは正に儀助(長塚さん)の感覚と同様で、こちらも大いに不安になり、困惑させられ、目が覚めて現実でなかったと確信し、その妄想に落胆し、しかし安堵する。
その繰り返し。。
妻(黒沢あすかさん)に先立たれたブルジョワ儀助さんの丁寧な暮らしを繰り返し描くことで、彼の人となりや人間関係が伝わってくる。
そして、老いていくことへの不安(金銭面・健康面)、捨てきれないプライド、さみしさ、可笑しさ、戸惑いなど、誰しもが持っている人間味を表現している。
"老い"はこわいし、不便なことも起こるが、私には儀助が"死"を望んでいるのかいないのか、その心理は分からなかった。
そして肝心の"敵"が何なのかも。。
そもそも"敵"の存在自体があやふやで、いないとも言えるし、全てが敵とも言えるのかもと。。
全体的に観客の想像力をかき立てる、私の得意な妄想し放題で、違う方向に行き放題!な
作品。
だから、好きな、そして苦手なタイプの作品でした♪
とりあえず
モノクロなのに凄まじい飯テロ&瀧内公美さんの妖艶さにダウン!
(儀助がフランス文学の教授ってのも、エロ意識無くしてない説得力があったw)
極めつけはあの終わり方〜!!
でスリーカウントカンカンカ〜ン♪でした。
長塚さんは勿論、黒沢あすかさん、優実ちゃん、W松尾さん、中島さん、皆さんハマり役で素晴らしかったです!
追記。。
1月24日のA-Studio +のゲスト、長塚さんみたいです。要チェックですね♪
日本版ファーザー
2021年に公開されたアンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』が頭に浮かびましたね。
アンソニーには娘がいましたけれど、
本作の主人公渡辺儀助は妻を亡くし、ひとりで暮らす元大学教授。
儀助は孤独ではあるものの、外部との接点はあるんですよね。
編集者、教え子、バーで出会った大学生。
儀助は自分の預金額から、何歳で死ぬというX DAYを設定し、そこに向けての終活をしている。
冒頭は儀助の日常(特に自宅での生活)が淡々と繰り返し描かれ、
食事シーンが多いなと。しかも美味しそうな料理を自炊する儀助はすげぇななんて思いながら
観ていました。この料理と食事シーンはすごく多いし、丁寧に描かれていますね。
本作は夏→秋→冬→春の4篇で描かれていくのですが、
夏は実に普通というか、老いた元大学教授の生活を淡々と描いていて
秋になると、小さいながらもコンフリクトが起きていく、
冬になると、儀助の妄想?が入り込んできて、どこまでが現実でどこからが妄想なのかがわからなくなってきます。
このあたりで、「敵」なんていないんだというのがわかりますし、
私は冒頭に書いた『ファーザー』を思い出してしまいましたね。
あぁ、儀助は妄想に取り憑かれていて、認知症を患ったのだろうと想像した次第です。
そこからは、妄想→ベッドで目覚める→日常→妄想→ベッドで目覚める・・・がLOOPしていき、
観客もかなり混乱していきますが、ラストは儀助の思い通りになって良かったのかなと。
でも、中島歩演じる甥が、儀助の自宅で儀助を見るシーンで終わるのは、なんともホラーな感じがしました。
老いについてあらためて考えさせられましたし、自分も終活をしっかりしておかなきゃ、まわりに迷惑をかけてしまう
なんてことを考えちゃいましたが、
本作、もっと「敵」を具体化した別のカオスに持っていっても面白かったのにと思いました。
いや、むしろそっちを期待していたんだが・・・という。そんな感想です。
やっぱり『ファーザー』の既視感があるというか、オリジナリティという意味では、私は今ひとつ驚きには至りませんでした。
とはいえ、80手前の長塚京三の演技は素晴らしかったですし、
脇を固める瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、中島歩、松尾諭、松尾貴史も素晴らしかったです。
とくに瀧内公美のセリフが面白かったです。
久々に先が読めない新作邦画を見た気がします。
とにかく長塚京三さんが素晴らしい作品でした。
1/26追記
宮崎キネマ館さんでの監督&松尾諭さんの舞台挨拶
すごく良かったです。
監督が本作にかけた想い、確かに受け取りました!!
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