「「筒井康隆」」敵 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
「筒井康隆」
前半は役所広司の「パーフェクトデイズ」を連想させる、男性独り暮らしの変わらぬ日常。
そして、何やら「不穏」が近づいてくる。
人生のゴールを収入面から計算し、達観した余生を過ごす主人公。
しかし「眠って」「起きて」「食べて」「出す」という、動物として当たり前の生理現象、そして「性」と「老い」。
彼はその全てから逃れることはできないことを分かっていながら、気付かないフリをし続けている。
しかし、その「敵」を自覚したとき、彼のとる行動は…。
起きることのほぼすべては比喩である。
後半で、あのボンコツ編集者に教え子の靖子が「全部メタファーよ」と告げるシーンで、あらためて私たちも客観に引き戻される。
長塚京三の芝居はすごく良い。クールにキメた彼がどんどん追い詰められる感じとか、年齢を感じさせないビビッドな表情。
吉田大八監督作品としては好きなタイプの映画。(過去作では「紙の月」が好き)
決して「分かりやすい」「面白い」映画というジャンルではないし、「感動作」でもない。
「筒井康隆」という原作者の作風を知らないと、戸惑う観客もいるだろう。
モノクロながら伝わるあの料理のそこはかとない「うまそう」な感じが常に「生」と繋がっていて、決して彼が世を儚んではいない、むしろ執着してる、と確信できるからこそ「そうでない自分」を演じている彼のどこか滑稽な感じが、私にも我が事として伝わってきた。
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トミーさんのコメント
2025年1月27日
自死用?の縄を数種類用意しておく程、自信満々、スノッブな物言いが鼻につく教授も最期迄みっともなく足掻くしかなかったって事なんですかね。後半の彼の方が人間らしくて好きですね。