「期待度◎鑑賞後の満足度◎ 身につまされました。“それ(敵)”は突然やって来る⇐人生の真理です。」敵 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 身につまされました。“それ(敵)”は突然やって来る⇐人生の真理です。
①序盤は、引退した(実はクビになったことが終盤で分かる)大学教授の隠居生活を淡々と描いていく(白黒ということもあって)のかな、と思いきや、中盤からは夢とも妄想とも幻覚ともとれる映像が次々と差し挟まれて主人公の内面が暴露されていく。
映像で語る映画という媒体はこういう表現方法にやはり適しているなあ、と思う。
②成熟した立派な大人、終活バッチリ、俗世を超越している、嘗ての生徒達に慕われる優れた教授という表面(これも本人の願望、プライドなのかも知れない…)の下に、実は切れ痔に悩まされ、様々な煩悩(亡き妻への慕情、後悔、捨てきれない嘗ての教え子への欲望、性欲、劣等感、体臭-これよく分かるわァ、未練、不安、恐れ、虚栄心)が渦巻いているのがあからさまになっていく。
でも、自分も60過ぎて分かるけれど、残された時間も指折り数えられる段階に入ったし、世の中のことも少しは分かってきたと思うし、ちょっとしたことには驚かなくなっては来ていても、なかなか悟りの境地には程遠い。
でも、それが人間だし人生だと思う(開き直っております)。
そういう点ではとても人間臭い映画だ。
主人公が見ているのが夢なのか(夢精したから夢とも思えるし)、妄想なのか、そろそろ認知が入ってきたせいの幻覚なのか、死ぬ前に走馬灯のよう見る映像なのか、の解釈は観る次第だろう。
③「朝ごはん食べてから歯を磨く人なんだ」
というのが何故か印象的。
④長塚京三は、生徒達から慕われる教授だったのが納得できる懐の深さと、教え子から慕われる色気、そして少々世間に疎いピュアさもそこはかと漂わせて流石。
⑤時間軸が歪んでいるようなところや、古い家につきまとう幽霊譚ぽい味付けも、なんとなく筒井康隆らしい。