「敵とは、己や世界 全ての現象や物質と向き合うこと」敵 サスペンス西島さんの映画レビュー(感想・評価)
敵とは、己や世界 全ての現象や物質と向き合うこと
2025年劇場鑑賞6本目 優秀作 73点
言わずもがな、わたくしの生涯ベストの一つである作品、由宇子の天秤ぶりの瀧内公美と河合優実共演作であり、類をみない挑戦的な作品であった
当方、今作の存在とキャスト情報が出た瞬間から、2021年秋頃、邦画ミニシアター界隈に激震が走った当時から3年半の月日が経ち、上記の両者とも実力も名声も備え、満をじして集結すると聞いた時には、いつかはその時が来るとは思っていたものの、特にご多忙で引っ張りだこな河合優実をこのタイミングでキャスティングするかと、首を伸ばして2025年を楽しみにしていた次第でした
終始モノクロで描かれる今作は、劇中の時代性もあるが、一番は枯れた歳である主人公の見る世界に真新しさが失われて、終活に向かっていることを暗示している様に感じた
瀧内公美に対して欲が隠せなくなってしまう瞬間に一言まだそーゆー気持ちあるんですねみたいなぼやきに、枯れた自分でも動物的であることに軽蔑してしまうシーンなんかは思わず言葉にできないショックがあった
連載打ち切りの知らせを受けた時や河合優実にいい様にされた時は志し半ばもう老耄は現役が犇く表舞台から退散するべき存在なんだと自認するも、半分謙遜で半分不服な表情とまだ衰えぬ活力から伺えてなんとも言い難い
ベットフレームの角に紐をくくりつけ首を吊ろうとする動作のゆっくりながら機敏なところや、家に蔓延る子孫の霊に追われ家中闊歩すら時の迫真の上半身のダイナミズムなど、印象的な所作と演出が光る稀有な作品でした
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