「エメロン石鹸はあまり泡立たないイメージ」敵 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
エメロン石鹸はあまり泡立たないイメージ
東京国際映画祭のグランプリと監督・主演の3冠で吉田大八監督は山上たつひこ原作の「羊の木」がすごく面白かったので今回も筒井康隆原作だし期待しまくって観たのだがちょっと肩透かしをくらった。77歳で元大学教授の独居老人が自分で食事を作り食べ歯を磨きというまるで「PERFECT DAYS」な日常ルーティーンが繰り返し描かれ今回は流石にタイトルがタイトルだけにどこで物語が動き始めるのか、ああここで動くのかいや動かない、今度こそ…で動かない。筒井康隆先生が65歳のときに書いた終活物語で私も今その年齢なのでとても身につまされるのである。好きなものを食べたり外で飲んだりは節約せずにわずかなに収入と預貯金と生活費からXデーを計算すべしというのだ。20代でヴィスコンティの「家族の肖像」を繰り返し観た(なんとこの映画のコンテを作れというふざけた課題を出す講師がいた)のだが若者にはこれっぽっちも共感できるわけがなく、夜中に必ず目覚めてしまうこの歳になってやっとバート・ランカスターが演じた老教授の気持ちが分かるようになったことよ。それで肝心の「敵」はというと…夢落ちと妄想をエンドレスに繰り返すメタフィクションなのだ。
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