劇場公開日 2025年1月17日

「敵とは」敵 ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5敵とは

2025年1月18日
iPhoneアプリから投稿

ヒッチコックの「裏窓」の話から双眼鏡で他人の生活を覗き見ていたことがわかる主人公。

元大学教授で旅行雑誌へのコラム連載や講演会依頼など、現役引退後もそれなりの活動が出来ており、フランス文学研究のまあまあな権威者であることを自他共に認めている主人公の日常を垣間見るような映画だ。

ご飯は毎食炊き(量からみるに保温機能は恐らく使わない)、クイーンズ伊勢丹で毎回買い物ができるほどの生活レベル。自分があとどれくらい生きれるかを決めて、毎日工夫して満足度の高い生活を送っている。
上品な装いで言葉使いも丁寧、男の隠居生活の理想を行っている主人公に見えてしまう。

本作が面白いのは、そんな完璧な主人公が意図せず醜態をさらしていってしまう様を、あたかも「裏窓」よろしく観客の我々が覗き見てしまうつくりになっていることだ。

また、アンソニー・ホプキンス主演の「ファーザー」のように主人公が老いることによって認知機能が低下し現実と妄想の区別がつかなくなっていく話にもみえるが、基本的に我々人間がやることなんて同じようなもので、かつての教え子に欲情してしまったり、可哀想な子を助けてあげたくなってしまったり、かつて主人公が双眼鏡で他人の生活を覗き見て"人間なんて所詮・・"と思っていたことがそのまま自分に返ってくる因果応報のような話でもある。

敵とはかつてのそんな自分だったのか。

ネットで誹謗中傷や根拠のない批判に勤しんでいるアナタ。そんなアナタの敵とは。アナタのような人ではないか。

そんなメッセージとして私は受け取った。

長塚京三さん以外考えられないキャスティング!
そして昼飯を抜いて観たのは大失敗だった笑
基本的にはコミカルなシーンも多く、私が観た劇場ではかなり笑いが起こっていた。色んな考察も出来てお腹が空く映画です。面白かったです。

ヘルスポーン