劇場公開日 2025年1月17日

「モノクロ映画だけどカラフルな描き方」敵 ヤマザマンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0モノクロ映画だけどカラフルな描き方

2025年1月17日
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鑑賞方法:映画館

笑える

単純

知的

長塚京三さん演じる主人公77歳の元フランス演劇史の教授が、とても様になっていてさすがと思います。実際長塚さんの長い俳優人生のスタートはパリと知り、監督のキャスティングには妙にいい意味で驚かされるのです。
モノクロ映画は新鮮に感じました。これはこれで見易くスッキリして観客の愉しめる余地がスクリーンにあるように感じました。さらに出来るだけ音楽を抑えて最小限の効果的な音しか使わないのも映画を観やすくして良かったです。
映画は夏の古びた日本家屋での高齢単身男性の生活する姿から始まります。家は彼が一人で料理、洗濯や掃除する平穏なルーティーン生活場所であります。同時に関係する雑誌の編集者や教え子との交流があります。あと何年生きれるかと計算しながら遺言書の準備にやがて主人公は取り掛かります。
季節同様、徐々に環境が変化していきます。それは自身や友人の健康の問題だったり、あるいは若い女学生との息抜き交流もあるバーが無くなったりするからです。
生活の潤いだったものを喪失すると人はどうなるのでしょう。孤独や死に直面する老人にとっては大変な危機です。主人公の現実と過去が交差して行きます。亡妻の登場は妄想としか思えません。「敵」とは一体何のことでしょう。映画はその質問するだけで、答えは映画を観る者がしなければならないのでしょうね。
大事だから最後に言っておきます。観てて辛い映画では決してありません。私と筒井康隆文学との関係は半世紀以上前からです。作家の根底にあるのは『人間へのユーモアに満ちた姿勢』と私は独断から思います。いくつかのシーンでニヤニヤしてました。例えば主人公、亡妻と教え子が鍋を囲む三角関係の場面です。映画をご覧ください!

ヤマザマン