「シャンタル・アケルマンを思い出した」山逢いのホテルで 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
シャンタル・アケルマンを思い出した
映画の中の大きなダムは、1995年「007/ゴールデンアイ」に出てきたヴェルザスカ・ダム。ロカルノに近いスイス南部のイタリア語圏ティチーノ州にある。
フランス語を話す主人公のクローディーヌは、ふもとの村に住んで、障害のある成人の息子を養いながら、仕立て屋をしている。しかし、火曜日になると、ケーブルカーで山を登ってリゾートホテルに行き、フロントマンの理解を得て格好の男を見つけ、言葉の要らない時間を過ごす。
彼女は、決して「その場限りのアヴァンチュールを楽しんでいる」のではなく、束の間の「Plaisir de la vie」生きる喜びを味わって力を得、やがて息子との生活に戻ってゆくのだ。そうだ、この映画は、あのシャンタル・アケルマン監督の傑作「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080, コメルス河畔通り23番地」の続編なのだ。
しかし、彼女にも息子にも未来がある。さて、どうするか。
私は、クローディーヌに扮しているジャンヌ・バリバールは、ワイングラスを手にする時、最も美しく輝いて見えたが、皆さんはどうだろうか。
この女優さんは、インタヴューに答えて、日本映画以上、巧みに、女性の表面上の(社会的な)顔とは異なる別の顔を描いた映画はない、と述べている。なんて、傑出した女優さんだろう。限りなく、共感を覚える。
コメントする