「ベンチになって、人の話を盗み聞きしたくなる」アット・ザ・ベンチ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ベンチになって、人の話を盗み聞きしたくなる
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一つのベンチの周りで繰り広げられる4組の人々の物語だが、登場人物たちが話す内容を聞いているうちに、彼らの関係性や、置かれている状況等が徐々に明らかになってくるところに引き込まれる。これは、おそらく、人の話を盗み聞きするような面白さが味わえるからで、その点では、自分も、epsode3で出てくる荒川良々演じるおじさんや、epsode4の「お父さん」と同類なのだろう。
登場人物たちを、後ろや横から写したり、正面から捉えたり、手持ちカメラで追いかけたり、定点からの長回しで撮影したりと、epsodeごとにカメラワークに特徴があるところは楽めるし、各epsodeの会話の内容が微妙に繋がっているところもニヤリとさせられる。
豪華すぎる俳優陣の共演は堪能できるし、それぞれの話の内容も面白いのだが、それでも、epsode2に、おじさんは登場しなくても良かったのではないかと思えるし、epsode4の、「実は、これは撮影現場でした」というメタフィクションも、必要なかったとしか思えない。
何となく結婚に向かいそうな幼なじみの話もepsode1だけで十分で、epsode5で話の続きを描くのなら、むしろ、epsode3の姉妹が、その後、どうなったのかを知りたくなってしまった。
epsode1にはほのぼのとした温かさが感じられたし、epsode2では何度も笑わされたし、epsode4には意表を突かれた驚きがあったのだが、感情をむき出しにして激しく怒鳴り合う姉妹が、やがて心を通わせる姿を描いたepsode3からは、「人を思うこと」の切実さが感じられて、胸に迫るものがあった。
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