「河川敷の豪華共演」アット・ザ・ベンチ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
河川敷の豪華共演
一編15分程度の短編5本からなるオムニバス劇でした。解説では”東京・二子玉川の川沿いにある古ぼけたベンチを舞台に”という触れ込みでしたが、建設中の等々力大橋(仮称)が各編の始まる毎に写されていたので、舞台は二子玉川よりもう少し下流だったようです。いずれにしても、舞台が二子玉川の近くということで、109シネマズ二子玉川で鑑賞しました。
と言っても、此処のほかはテアトル新宿でしか上映していない、典型的な単館系作品だった訳ですが、そういう作品の割には出演者が超豪華。第1編と第5編に登場した広瀬すずと仲野太賀を皮切りに、岸井ゆきのと岡山天音(第2編)、今田美桜と森七菜(第3編)、草彅剛と吉岡里帆、神木隆之介(第4編)と、彼らを観るだけでも元が取れる作品でした。(というか、神木隆之介って何処に出てたんだろう?)
ストーリーの方は、多摩川の河川敷にポツンと置かれたベンチを取り巻く2人ないし3人の掛け合いでしたが、これが実に面白かった。特に第2編の岸井ゆきのと岡山天音演ずる恋人同士の別れ話に、荒川良々が絡むお話は秀逸でした。バイクに乗らないのにライダーズファッションを着ていたり、自分の飲んだペットボトル飲料に口を付けずに飲む彼氏(岡山天音)の態度が少しずつ気に入らない彼女(岸井ゆきの)が、寿司ネタに譬えて不満を吐露する流れは、まるで夫婦漫才を観ているようでテンポが良く、内容的にも首肯することの連続でした。
第1編と第5編のお話も良かった。お互いに意識しながらも、敢えて付き合ったり結婚したりという話を明確に切り出さない広瀬すずと仲野太賀の関係性も、歯がゆくもあり温かくもあり、観ていて懐かしい想いが沸きあがって来ました。
いずれにしても、相互のストーリーの登場人物同士に直接的な関係はないものの、ベンチを中心にした世界観は共有されていて、このベンチが撤去されてしまうという話は、なんだか寂し気なお話であると同時に、そこに保育園が建設されるということで、明日に繋がる話でもあるなと感じられて締めくくりも余韻に浸れました。(大水が出たら水面下に沈んでしまう河川敷に保育園はないとは思いますが。)
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。