金子差入店のレビュー・感想・評価
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正義の悪意
2025年劇場鑑賞153本目。
エンドロール後映像有り。
この映画を見るに当たって、差入店って実際にあるのかな、自分が住んでいる市内にある金沢刑務所の近くに差入店ってあるのかな?と色々調べてから観ました。
◯◯屋差入店というのがデフォらしいので、本当なら正確には金子屋差入店になるみたいですね。語呂優先したんでしょうか。で、金沢には残念ながら個人商店はなかったのですが、金沢刑務所のホームページに「さしいれや」というリンクが貼ってあり、とぶと全国の刑務所や留置場に対応していると書いてありました。これで家族や知人がいつ逮捕されても安心です。
そこのHPには実際の料金や、利用するに当たってのQ&Aが書いてあるのですが、「高圧的な刑務官と話したくない」「担当が差し入れのルールをきちんと教えてくれない」など書いてあり、めちゃくちゃ書かれてるぞ公務員!と思ってみてました。面白いので皆さんも覗かれるのをお勧めします。
こういう情報を見てからこの映画を見たらまさにそういう事があって笑っちゃったのですが、予告でサスペンスと言っていたのはしっくりこないです。事件が起きてなぜか差し入れ店が解決するのかと思っていたのですがそんな訳ないですよね。ヒューマンドラマです。先に金沢に差し入れ店がなくて残念だな、と思ったのですが、この映画を見たらあんな近所から心無い嫌がらせを受けるなら「さしいれや」さんのように企業として勤めたほうが安全だなと思いました。植木鉢を割るのは犯罪だし、花に罪は絶対ないし(差入屋にも当然ないですが)、おくりびとの広末涼子の「けがらわしい」というセリフに共通する、無知蒙昧な職業差別が横行しているのが現実なのだろうな、と思います。
二つの大きなエピソードがあって、後半はまぁよくある話(フィクションでは)っちゃそうなんですけど、差入屋が絡むことでまた違った話になっていて良かったです。
サスペンスの言葉に期待していった分肩透かしを食らったので満点にはなりませんが(完全に広報の責任)なかなか面白かったので一話完結型の連続ドラマ化して欲しいです。
かなり重たい社会派映画
全体に重た過ぎました
序盤から中盤にかけて想像以上に内容が重た過ぎる上に話を詰め込み過ぎていて、観ているのがキツく、また分かり難かったです。
また、そのキツい内容の割には差入店に対する思いが描かれていないので、何でそんなに無理して差入店を続けているのかがイマイチ伝わって来なかったです。
終盤は感動的な方向へ振ってくれたので良かったですが、もう少し序盤に差入店に対する思いを描いてくれていれば入って行き易かったと思います。
また、キャスティングも演技力にバラツキがあり、改めて日本の俳優は層が薄いと思いました。
“身内”という、それぞれの存在。
まず一番に残しておきたい感情としては奥さんの忍耐強さにグッときたということです。どんな夫であっても、決して見捨てない。背中をさすってくれる。喝を入れてくれる。揺るがない愛の強さをもつ人です。
そんな奥さんに支えられて、前科者である夫は、社会の一員としてなんとか働けているのです。もともとこのお店を営んでいた叔父も居てくれてよかったです。叔父は、甥の悶々とした心を、そっと受け止めて、やさしい笑顔で包んでくれるような人です。かつての若い頃の自分と甥を重ねて見ているのかもしれません。親が俺にしてくれたように、自分も同じことをしようと、あの場所に招いたのかもしれません。
奥さんや叔父。身内ほど心強い存在はいないと思う。でも、身内に苦しめられて生きてきた者もいる。その状況から救い上げてくれているのは、自分ではなく、他人。終わった人生の者がこれからの人生を生きる者を救ったり。自分みたいにならないようにと一つの命を終わらせたり。色々な“思い”を見た気がしました。
金子差入店の前にはきれいな花鉢がいくつか飾られています。それを嫌がらせで割る者がいます。「誰だよ…」とブツブツ言いながら夫は片付けていました。エンドロールのあとに流れるシーンでは、夫自身がこの仕事を受け入れ、誇りを持ち、俺は間違ったことはしていない!という確固たるプライドを感じられました。
*
私たちがおかしいんじゃないの。世間がおかしいの。あなたがやってることは、すごいことなんだから。
生き辛さと
タイトルなし(ネタバレ)
暴行事件で収監されている金子真司(丸山隆平)。
妻・美和子(真木よう子)は身重で、月に一度の面会に訪れていた。
が、先月は来ず。
真司は、その理由に気づかなかった。
真司の暴言で面会を終えて出ていく美和子の姿をみて、真司はようやくその理由に気づく。
それから十年近く。
出所した真司は、伯父(寺尾聰)の援助があり、伯父が営んでいた差入屋を引き継ぐことになった・・・
といったところからはじまる物語。
差入代行業者が主人公という珍しい設定で、過去、ミヤコ蝶々が差入屋の主人公を演じた2時間ドラマがあったらしいが、それ以外にはない、極めて珍しいものだそうだ。
真司の息子の同級生で幼馴染の少女が惨殺される事件と、自宅売春を行っていたシングルマザーが刺殺される事件と陰惨な事件がふたつ描かれ、そのふたつを主軸にいくつものエピソードが描かれます。
が、複数の伏線が最後にピタリ・・・というタイプのエンターテインメント映画ではありません。
特別な状況下の普遍的心情・感情を描く(スティーヴン・キングがいうところの)エンターテインメント。
出演陣では、まず丸山隆平が好演。
これまでは(あまり彼のことは知らないのだが)明るいイメージがあったが、今回は心の奥底に何か暗いものを秘めた感じを冒頭から醸し出しています。
少女惨殺犯を演じる北村匠海も、普段とは異なるタイプの役で、好演。
(やや過剰だが)
北村の役は、右瞼に特徴を持たせたメイクで左右非対称を作っているが、これは主役の丸山もよくよくみれば左右非対称の面をしていることに由来するかもしれません。
ふたりのキャラクターの相似・類似の演出と思われます。
相似・類似の演出だと、拘置所の仕切りガラスへの二重映しなどがよく採られる演出だが、そこは避けた感じ。
自宅売春嫌疑の母親刺殺事件犯役の岸谷五朗は、やや作り込みすぎたきらいがあります。
彼の出演シーンのみ、過剰な演出に感じられました。
見応え十分の力作で秀作。
堪能しました。
なお、いくつかエピソードには「物語的な決着」がないものもあります。
物語として閉じていないので、観るひとによっては「納得できない」「中途半端」と感じるかもしれません。
エンドタイトル後の映像(差入店前の壊される鉢植え)は、犯人は描かれず、その「閉じていない」感が出ています。
良いエンディングでした。
酷評もありますが、考えさせられるいい映画でした!
他者と自分との境界線を思う
塀の外と内、アクリル板のあちら側とこちら側、ご近所と家族、自分と家族、個人と社会、自分の中の善悪、あらゆる境界線について考えさせてもらえる良作。登場人物の心情がリアルに胸にせまる。俳優がみな適役で素晴らしい。特に丸山隆平と岸谷五朗は彼らの手触りまで伝わってくるようだった。
観る前と後で日常の感じ方が変わる
※核心的なネタバレは含みませんが詳細な感想です※
綺麗事だけで片付けられない、悲しいほど人間味溢れた物語。爽快な勧善懲悪でもお涙頂戴の出来レースでもなく、矛盾ある行動を取ってしまうところがリアルな人間らしくて考えさせられる。
観客に多少の洞察力、想像力、思考力が求められる構成。語られない背景を想像することを楽しめる人(いわゆる考察好き)向けではある。
脇役に関し疑問が残る部分もあるが、登場人物すべての設定を説明するのは無粋だし、2時間でテンポ良く本筋に集中させるには英断だと思った。全て説明するなら連ドラの尺になる。
むしろ、「自分の知らないところにもたくさんの壮絶な人生がある」ということに気づき焦燥することこそ、この映画の本質ではないか。
ベテランから子役まで全体的に演技の質が良く、満足感アリ。北村匠海の怪演は必見。丸山隆平の人間らしさはハマり役だと思う。
世界観について、やや古臭さ?を感じた。構想10年以上とのことなので、その影響もあるかもしれない。そこは目を瞑った方が楽しめる。
リアルな人間らしさとフィクション作品らしさが混在するため、没入感に影響があるかと思う。
万人受けする作品では無いが、観て損は無し。人によって感じ方や刺さり方が変わるので、誰かに話したくなる。
差入屋
「差入屋」。知らない世界だったし知らない人も多いと思うのでそこに着...
「差入屋」。知らない世界だったし知らない人も多いと思うのでそこに着目したのはとても素晴らしいし、終始釘づけでした。
しかし、しかし、、、。
ツッコミどころが多く、登場人物全てが設定浅いのでクエスチョンだらけでした。
丸山君の演技は凄く良かった。真木ようこは設定が悪かったのか、ぼやけて刺さるものは無かった。
北村親子はインパクトこそあったけど、ここの親子関係もこちらが想像するしかなくつまらない。惜しい。
岸谷吾郎と女子高生のペアが一番謎謎謎!
スッキリしないよー。
女子高生の罪を黙認⁈あり得ないよ丸山君!この辺りでもう作品に対して裏切られた感が…。
館内ではすすり泣くお客さんが数名居ましたが、素直に観れなくてごめんなさい、感情移入出来なかったです。
辛口ですがこの世界を知るには良い事だと思いますのでオススメはします!
※ラストのいちごとエンドロールの曲は良い方向に向かってるって事なんですよね?これまた余計な演出と言うかこじ付けとしか…。だってね、植木鉢がね。 最後まで愚痴ってしまいましたが、惜しいんですよ!もっとぎゅっと絞ればホントに満点あげたいです!
⭐︎3.9 / 5.0
見てよかった
何度も見たくなる作品
多くの方に観ていただきたい作品
差入店の温かな家族物語
古川豪監督が差入店の存在とその必要性を知り脚本を書いた作品。確かに調べてみると差入などできない物の方が多く、かつそれぞれの刑務所や拘置所でも細かい決まりがあるようだ。ネット経由でも差入を頼めるところがあった。衣料や雑誌などの値段は高いが差入店経由ならスムーズに届くのだろうと思う。
主人公を演じる丸山隆平は前科あり。どの程度の傷害事件かは分からないが4年くらった。
真木よう子演じる妻は身重であったが「父親は1人しかいない」と出所を待ってくれた。前科があるので普通の仕事は難しいと、おじの寺尾聰から伝授された差入店の仕事を継ぎ真面目に取り組む。しかし息子の幼なじみが不幸な事件で亡くなるとその職業が起因し妻と息子はイジメに遭う、。息子は父を責めることなく自分の弱さからだと涙を流し、妻は「あなたは必要な仕事をしている」とあくまで前向きに夫を支える。ダメな父親にこんな出来た妻と息子がいるなんて、それだけで幸せなんだぞ!と観ている誰もが実感する。
映画はこの幼なじみの殺害事件と女子高生を救う為に鬼親を元ヤクザが殺す事件が絡み、それぞれ差入の代行をする。事件の内容は僅かのカットを差し込むだけだがその画像が衝撃的で悲惨さが伝わるし、北村匠海、根岸季衣、岸谷五朗、川口真奈がそれぞれ凄い演技で存在するので映画を締まった形にしてくれている。
刑務所の面会室でアクリル板を挟み会話するシーンでは相手側の声を聞く方は音声が絞られていた。塀の中と外とでは世界が違うことをさりげなく表現していた。
みっけもんの良作でした、。
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