金子差入店のレビュー・感想・評価
全124件中、41~60件目を表示
差入店という職業を初めて知りました
差入店というのがあるんですね。初めて知りました。
とても興味深く、ドキュメンタリーなどがあれば見てみたいと思いました。
映画作品として題材は良いのですが、モヤモヤとする部分がいくつかあって...。
金子真司さんに関しては、もう少しバックボーンを知りたかった。
暴行事件を起こした理由も判らないから、ただの喧嘩っぱやい人?
あそこまで改心した過程をもう少し知りたかったな。
小島高史に関しても、確かに毒親の片鱗は認識できたけど、
あれで人を殺めるのは、やっぱり怖いな...。
最近起きている自分より弱い人を、自分が楽になりたいために殺める人種と同じなの?
もう少し、彼に関しても情報が欲しかったです。
それに、とにかく、根岸季衣と北村匠海が上手すぎて、
本筋の金子ファミリーより、強く印象に残ってしまっています。
横川哲と二宮佐知さんにしても、母親を殺めてしまった事実を抱えて、
平常心を保っていけるものなのでしょうか?
この3つのトピックが、すべて微妙にこちらへの説明不足のような気がしてしまって、
見終わったあとにスッキリせずでした。
また、先にも書いたように、甲本さんや脇を固める皆さんが上手すぎて、
丸山さんと真木さんが薄れてしまったのが本音です。
色々な母親
北村匠海はさすがに上手い。けど母親役の根岸季衣さんが上手くてあの笑顔が恐怖でした。映画では色々な母親が登場しますが断トツの存在感でした。ただこの親子のことは最後までよく解りませんでした。
真木よう子さんが苦手なので観に行くか悩みましたが、母親役に違和感が無くていい役だったと思います。冒頭の発狂シーンも含め良かったです。
子供が亡くなったり、子を殺された母親のシーンなど泣けましたが、自分を助けてくれた女子高生と元ヤクザとの面会シーンは号泣でした。
前に歩き出した女子高生や主人公家族を見て最後は少し心が軽くなる映画でしたが、最後の最後、エンドロールの後のワンシーンは、きれい事だけではない差し入れ店という仕事のリアルが見える重要なシーンでした。
面白い映画でした。見に行って良かったです。
年ワースト当確。何じゃこりゃ。
貴重な知る機会となった
差し入れ店について知る初めての機会となり、非常に嬉しい思い。
殺人を肯定するわけではないが、世間からは冷や水を浴びせられ続ける役回りなので
ちょっとヒロイックに映りもすると思ったが、そこまでの描かれ方ではないのがいい。
殺人を犯した男との対話は続きそうだったが、依頼を受けて金を稼ぐわけなので、依頼人である母親に対してあのような接し方で終わらせたのはもったいなかったように思う。
できればそこの関係修復や、割り切る描写があってもよかった。
夫婦や家族のバランスはとてもよく出来ていて、むしろそちらに惹かれた。
真木よう子はなぜあんなに滑舌悪いのか不思議だったが、夫の短気で幼いとまでいえる社会性の無さを補う
まさに母の立ち回りができており、そこに救いがあるように思えた。
同情するならカネ送れ!!
こんな商いもあったのかと知って、すぐさま想い出したのは、ロッキード事件で総理大臣、田中角栄が収監された時、本人の房のみならず、すべての房にエアコンが付けられ、差し入れ弁当のメニューが豪華になったという話で、受刑者たちは“次に来る大物“がまたぞろ、待遇改善の役に立ってくれるだろうと、口々にウワサしたとか。
”サブスタンス”の口直しのつもりで観たのだが、妙に刺さった。柄にもなく、歯をくいしばって涙を堪えたシーンもあった。自分の体験に被るエピソードが多々あり(殺人以外)映画のそれ以外にも、オッカナイ系の事務所に監禁されたり、損害賠償額○億円の被告になったり、様々な状況で何度も土下座させられた。半沢直樹の比ではない。(ムショに入った事はありません)映画の毒親などカワイイものである。うわべはキレイなのだが、ヤバイ業界(アート系)にいたものだ。ある事案で接見室にも行った。アクリル板の向こう側の囚人服の“知り合い“に、今は辺境に引っ越した自分の家族を頼むと哀願され、けっこうな額を送金した。
売春させられている少女を救って(殺しは無罪?)英雄になったデ・ニーロのようにはいかず、罪を被った岸谷五朗。娘に金を渡して、コレで生きろと、ヤクザの台詞にしては気取りすぎだが人生の終章としてならアリか。(涙)
接見室で書かれた『ずっと待ってる』(涙)
BS時代劇ドラマで注目していた丸山隆平、円熟味を増した真木よう子、包容感たっぷりの寺尾聰。ひいき目で観ているせいかみんな演技がいい!
いじめはなくならない、差別も偏見もなくならない、義憤にかられて誰かをやっつけようとする。理不尽さを抱え持ったまま、それでも生きていかねばならない。毎日のように嫌がらせで割られている店先の植木鉢、それを淡々と片付ける日常。ラストが憎いじゃないですか。
新たな職種を知りました
人間の愛情って一体何なんだ?
母親が自宅で売春しているのだが、娘にも売春を強制している。
そんな母親が許せない男がこの母親を惨殺する。それを見た娘が母親にとどめを刺す。
それにしてもこの母親は毒親を超えた悪魔としか言いようがない。実の娘に売春をさせるほど愛情が全くない。人間がここまで悪魔になれるのか?そしてこんな母親を殺した娘の行動は当然である。
そして母親を惨殺した男は「君は殺してない、見てただけだ」と言って一人で罪を被って刑務所に入る。この男の赤の他人の娘に対する愛情と実の母親の実の娘に対する愛情の無さ。
人間の愛情って?人間の善って?人間の悪って?なぜ情の深い人間と冷酷な人間がいるのか?生まれながらにして遺伝子で決まっているのか?それとも生活環境によって両者は分かれるのか?
特殊な仕事
タイトルの字面を見た時は、商店街とかのホンワカ映画?…というのが一瞬頭をよぎったが、全く違った。
重いものを背負った人々の話である。
世の中にはまだまだ知らない職業や物事が沢山ある。(「あまろっく」なんかもそう。知りませんでした)
それを学べる映画の力に感謝です。
依頼に従い、物品の差し入れや手紙の代読などをする差し入れ店を伯父から引き継ぎ営む金子(丸山隆平)。しかし対象の場所は刑務所、受刑者面会の差し入れともなれば、そう簡単にはいかない。被害者がいる以上、非難する人もいるなかなか厳しい仕事だ。
自身も受刑者だったことから、償いや家族とのやり直しの意味もあるだろう。妻と協力して暮らしを立てながら、息子を可愛がる姿が印象的だった。
劇中の2つの殺人事件には、いずれも歪んだ家族が登場する。小島(北村匠海)も佐知(川口真奈)も罪を犯しながらも、自身も親から被害を受けており、心が壊れている。
また、横川(岸谷五朗)と佐知の関係には泣けてしまった。そっちの道で生きてる人も人を思う一面があり、本当に生まれ育つ環境がいかに大事かを思い知らされる。
本来、代行が細かな事には立ち入れないと思うが、差し入れているのは、人との繋がりや、人生を見つめ直すきっかけなのでないか。少なからずも救いになっているのではないか。そして、金子本人も自身に向き合って…そんな感想を抱いた。
*****
最近、様々な代行業があるものだなと思っていた。
退職代行なども初めて聞いた時は、そんなことも
人に頼むのかと驚いたが、本作の差し入れ代行も同じで、諸事情あるにせよ、当事者同士が直接コミュニケーションを取れない状況はどうなんだろうと考えてしまった。助かる人がいて、平日は行かれないとか、時代や環境もあるから一概に言えず難しい。
*****
丸山君の特別ファンとかではなく、ドラマ1作しか見たことないけど、昔からお顔に惹かれます(*^^*)
イケオジになっていくのではと思います。
ハードな内容なのに鑑賞後には心が温まる映画
とてもハードな内容なのに、鑑賞後になぜか心が温まり前向きな気持ちになる不思議な映画。
同時進行で描かれる2つの事件が解決するような爽快なサスペンス映画では無い。
しかし、この事件を通して変化する人間の心情の変化を繊細に受け取ることができる。
劇中には、様々な親子が出てくるが母と子の関係、現代の家族のあり方が裏テーマになっているのかな?と思う。
歪んだ世界を、まっすぐ歩けますか?
弱い者たちが夕暮れ さらに弱い者を叩く
その音が響き渡れば ブルースは加速してゆく
真島昌利 「TRAIN-TRAIN」
ヒトの闇に興味があります。この段階で、人格疑われそうな私ですが、事件を起こすヒトの闇、事件を起こさせる環境をつくるヒトの闇…。
例えば、スクールカースト気分で、マウント取るママ友軍団。私達、可哀想なママに全力で寄り添ってあげる。あなたには、その資格があるの?。そう思うことで、自分たちが優良種だと思う。根拠のない正しさで、優劣の優を求めたがる。まぁ、私もその1人なんですけど、自分の正しさが、ヒトを傷つけていることに気づかない。自分の正しさが、他者排撃のイジメの温床になることさえ気づかない。
…私は、あの子を、二十歳まで、立派に育てた…。
その立派とは、誰にとって立派なの?。
間違いを犯したヒトが間違っているのか、間違いを犯したヒトを、侮蔑する私達のほうが、間違っているのか…。そんな解の存在しない問いだけが、後を引くお話でした。
最近の私、どんなに暗い映画だとしても、その先に、救いがあることを望んでいます。歪んだ世界を、まっすぐ歩くのは、容易ではありません。
金子の父さんに、どんな救いがあると思います?。
息子さんに、どんな未来があると思います?。
ヒトのネガティブパーツだけを集めたような映画ですが、もし、救いがあるとすれば、奥さんかな。他者排撃の業から、解脱しているかの如く、ご主人を支える奥さんは、天の使いか、聖なる母か?。そんな彼女が、時折見せる人らしさに、こちらまでもらい泣きしそうです。真木よう子氏、さらに進化しましたね。プライベートでは、色々言われてますけど、スクリーンに刻まれる彼女は、強烈な引力を放ち続けています。彼女を観るだけでも、意味のある映画だと思います。観てね。
歪んだ世界を、まっすぐ歩けますか?
「PERFECT DAYS」
誰かに、何かを差し入れる映画ではないのですが、誰かに、何かを差し入れられた気分になる映画です。併せご覧下さい。
単に物を届けるだけでなく、大切な何かを差入る感じの温かい作品。 本年度ベスト級。
鑑賞後「差入屋」という職業が実際に存在することを知る。
留置所の側にあり臨機応変に対応する仕事の隙間産業だった(笑)
丸山隆平さん演じる主人公の差入屋の真司。
真木よう子さん演じる妻の美和子。
(真木さん。少し太った?)
その2人の子供。
この差入屋を営む家族を中心に展開するストーリー。
様々な事情で直接差し入れができない人たちの代わりに、真司が刑務所にいる受刑者へ品物を届けるお仕事が本作の軸。
中盤、真司の息子の幼馴染みの女の子が惨殺される事件が発生。
その母親が収監されている犯人(北村匠海さん)に真司が差し入れをする展開。
その2人の会話に息を飲む!
北村匠海さんの不気味サイコパス的な演技に引き込まれた!
金子が刑務所に差し入れに行くたび、面会を拒否され続ける女子高校生の佐知の存在が気になる。
佐知は自分の母親を殺した受刑者との面会を諦めず、毎日刑務所を訪れる理由が分からない。
そんな佐知の姿を見ていた真司。
ある方法で彼女と母親を殺した受刑者との面会が実現する展開。
このシーンは涙なしには観られない!
受刑者を演じた岸谷五郎さんと、佐知を演じた川口真奈さんの演技が凄かった!
メッチャ胸が締め付けられる!
この岸谷五郎さん演じる横川と川口真奈さん演じる佐知のエピソードが、本作の最も心を揺さぶるハイライトだった感じ。
一方、北村匠海さん演じる殺人犯の小島のエピソードも、もう少し深く描かれていたら、さらに作品にのめり込めたかもで少し残念。
結果として、本作の核となる二つのエピソードの満足度は高くは無かったけど、全体として観終わった後に温かい気持ちが残る素敵な作品だと感じた。
金子差入店の前にある鉢植え。
一体誰がどんな理由で割っていたのか?
誰が犯人なのか気になります( ´∀`)
こんな商売もあるんだという興味本位で鑑賞
映画冒頭、収監されている時丸山さん(金子)と差入やとして働く丸山さんが
最初は同一人物だと思えなかった。奥さんの真木さんが冒頭と一緒だったので
真木さんは別の人と再婚したのか?という余計な混乱からスタートした。
丸山さんの演技がうますぎるのだ。傷害事件を起こした「金子」とそこから立ち直って商売をしている「金子」は同一人物であり、時折みせる優しい金子の中に、激しい感情表現をあらわにする金子と、爆発するまでに必死に葛藤する金子と、そのすべてに心が共感していく。更生し、まっとうな生活をしている金子が、その仕事柄、収監された犯罪者たちと日常的に顔を合わせる中で、その被害者や加害者の親族と接する中で人として心が揺り動かされないわけがない。その彼の他者への「共感力」に視聴者もついていきながら彼と同じ疲労感を共有する
「あなたがすごい人、あなたは正しいことをしているの!世間がおかしいの!」奥さんの真木さんの言葉が胸に刺さる。彼女もこの映画のもう一人の主役。彼女にも向けられる世間の「異常性」に、彼女の胆力は最後まで耐え、夫に、息子に、世間にまで寄り添う。
自分も「オカシイ世間」の構成員になっていないか、家族や仲間の悩みや苦しみにいつも気が付いてやれているだろうか、映画を見ながらずっと泣きっぱなしで考えさせられた。
観て良かった!誰かの為に寄り添える 人の繋がりとやる意味を知る。
囲われた拘置所。訳があって拘留者へ親族より依頼されて差し入れ業を行う人。
それが 金子差入店である。
へぇ~ そんな職業が有るんだと言う思いが最初はした。
今日は「金子差入店」を観に行きましたよ。
出ている俳優陣はどなたも凄い!
大御所の方多目ですね。
最初 パッとチラシ見た時 主は濱田岳さんなのかと。
だが違った、丸山隆平さん(SUPER EIGHT)でしたね 良く見たら。
ちょっと心配したけど全く大丈夫。両脇に前後を大御所ベテランさん達が支えてて
そこの連携が功を奏したと感じます。
社会の抱えてる闇を描いており、加害者と被害者。そのどちらでも無い家族。
一見無関係に見えるが 加害者側への援助支援をお金を取って業を行うと
被害者から見れば その支援が仇となり、敵視されてしまう。
この関係性を見事に描いています。
つまり 人の心に抱えている弱さですね これは。
ちょっとした行動が理不尽になって行く様が描かれてます。
この差入する人に まさかの焦点を当てた作品が生まれるとは 立派な取り組みに感じますね。
こう言う視点的作品 好きですわ。
映画”正体”とかは 面白がってカッコつけてる感じするので好きじゃないですね。
(感じた所)
・出だし 主の金子真司が拘置所にいて、妻(美和子役:真木よう子さん)が差し入れしてる場面がある。
そこで 子供が生まれた事を知るのだ。
大半差し入れは許可されないが、情報だけは伝える事が出来る。
自分たちの子供を夫に抱かせたら、きっと命の大切さを知って真面目に生きて行くだろうと 妻の思いが有って そこは見事な狙いだったと思う。
ただ この場面、丸山さんが力入り過ぎて 誰か??分からんかった。
ここの流れ もうちょっとアシスト表現欲しかったかな。
編集が粗く切り替わるんで、その波にこっちが最初感情 乗れなかったです。
・どうしようも無い母(金子容子役:名取裕子さん)の存在。
お金をせびって来ては 若い男に貢いでしまう母親。
真司は母を絶対に絶対に許さない。心の底から憎んではいるのだが。
ある時 叔父(星田辰夫役:寺尾聰さん)から この家業の話を聞いた。
まさか身内のお前が拘置所に入って そこへ差入するとは思わなかった、
でも そうさせたのは、お前の母親の ”何か差し入れでもしてあげたら”
その言葉が有ったからだった。未だに代金は払ってくれて無いけども・・・。
ここの 話、実はジ-ンと来るんよね。
母の感情がやっぱり存在していた証拠なんよね。そう思う。
それを 真司は知って、憎む母の事を理解して 生きて行くのだと思うのよね。
人が憎く思う(成る)前は やっぱり相手は普通の感情の持ち主と思うのよ。
この思いが、学生を殺す殺人者(小島高史役:北村匠海さん)にもあって、
また 娘へ強制売春させていた母を殺す殺人者(横川哲役:岸谷五朗さん)にもあってなんだと感じますね。
最後に小島の話相手に成って行く~ 金子の姿をみて その理解を得たんだと思うんだな。
・拘置所の管理官への手渡し場面。
ここの 金銭渡して融通させていた場面は ダメですね。
現実問題、有るのか無いのかって言ったら 無しでしょう。当たり前ですが。
気心加えてたと成ったら大問題。作品だから良いけどもね。
でも これを駆け引きにして 二ノ宮佐知(役:川口真奈さん)を
横川哲に面会させる手にでるのだ。
金子のそうしなきゃ ダメだと言う思い、誰かの為に 何かをする。
その強い思いが そこに在ったと感じます。
中々 パッと見では避けられそうな作品テーマですが
ご興味御座います方は
是非 劇場へどうぞ!!
視点により
視点により評価が変わる作品ですね。
今まで知らなかったことを知ることが出来た。
ただやはりそういう性質の方々なのか・・。
と思ってしまう人には評価されないのではないかと。
最後の少女のシーンも評価を二分するかも?
いい映画ではあるけど、素直に楽しむことが出来なかったので
誰かがやっているんだろうと思っていたが。
いろいろ複雑な感情が入り乱れている映画でした。ほとんどの人が被害者側の気持ちになってしまうのではないか。しかしこの映画は被害者、加害者、身内、それを取り巻く他人、の間で受刑者に差入を届ける差入屋という仕事の話です。普段は受刑者が何をしたかなんて関係なく毎日を過ごしているのだろうけれど、自分の子供の同級生が殺された事によって、いつもは踏み込まない所まで入り込んでしまう。
この仕事って誰かがやっているんだろうと思って生きて来ましたが、ホームページなどみると本当にあった。どんな受刑者にも家族や親族がいる。誰もが最初は純粋な赤ちゃんだった。
自分が加害者の家族や身内でだったらどうする?
途中で奥さんが旦那さんに、こんな素晴らしい仕事をやっているんだからと言うシーンがありましたがその通りだと思う。いろんな事を考えさせられる映画でした。
白いデイジーの花言葉は「無邪気」
この国に「差入店」との生業があることを初めて知った。
拘置所や刑務所の近所で営業し、
被告人や受刑者に差し入れる物品を販売するのだと言う。
また、家族や知己の依頼で、
面会人の代行や差し入れ品を届けもするのだと。
その背景には、
差し入れ品には厳しい制限があり、
加えて面会は平日の決まった時間のみ可能で、
実際に訪問しても、
タイミングによっては会えぬことも多いことも挙げられるよう。
刑務所の近くで差入店を営む『金子真司(丸山隆平)』は
嘗て傷害事件を起こし服役していたこともあるが、
今は伯父の後を継いでいる。
世に必要な商いであり、
人の役に立っているにもかかわらず、
犯罪者と関係を持つことを疎んじる世間がある。
店の前に置かれている植木鉢が、
思い出したように壊されているのだ。
それが、ある事件を境にエスカレーションする。
息子の同級生の女児が殺害され、
犯人とは何の関係も無いのに、
世間は何故か『金子』一家をあからさまにヘイトする。
「コロナ禍」の際に、
医療関係者にぶつけられた心無い言葉の数々を思い出す。
怒りをどこに向けていいのか判らぬ心情とは言え、
我が身に置き換えることのできない、
想像力の欠けた人間が多いことに慄然とする。
その矛先が自身の小学生の息子に向かった時に
『真司』の怒りは爆発、
元々の短慮な性格も災いし、暴力を振う。
しかし、そんな彼を救うのは、やはり家族。
妻の『美和子(真木よう子)』や叔父の『辰夫(寺尾聰)』に助けられ、
幾度目かの立ち直りをする。
『美和子』も息子の『和真』も
『真司』の仕事に誇りを感じている。
それと対比するように、
子を自分が生きるための道具としか思っていないような母親や、
エキセントリックな性格の母親が幾人か登場する。
一つ間違えば、『真司』も同じような道に進んでいたかもしれぬのだ。
そうならなかったのは・・・・、とのハナシだが、
貴方は見捨てられてはいないのだと思わせるために、
「差入店」が果たす役割はあるのだろう。
母を殺された女子高生『佐知(川口真奈)』が
犯人の『横川(岸谷五朗)』に
拒絶されても面会要求を繰り返すエピソードは心に沁みる。
この挿話が、二人の男の大いなる救済に繋がるのだから。
オリジナル脚本は評価したいです。
拘置所近所にある「差し入れ屋さん」の存在は、大阪拘置所の前の一方通行のところに数軒あったので存じていますが、現在一軒しか無いようです。で、この映画で差し入れ屋さんによっては、代行差し入れはもとより代行の面会やお手紙代読まで引き受けてくれるというのは初めて知りました。
当然のことながら話はヘビーですし、私は必要無いとは思いますが、残酷なシーンも多々出てきます。なぜ必要無いと思うかというと、その事件の内容や性質は代行業の差し入れ屋さんには関係ないからです。もちろんそのようなことは劇中でも触れられていたとは思います。加害者側親族の当然の権利なわけですし。ただ、その内容を明らかにすることで、主人公は悩み、また学校に通う息子はいじめられ、妻も周りから差別を受けます。
日本では「死刑もやむを得ない」とする人が8割を超えるそうですが、そういう人たちにとっては重大な犯罪を犯したとされる未決囚に「面会・差し入れ」などをする必要はないと思う人も多いと思いますが。裁判で結審しない限りあくまでも未決囚・・・なんてのはうやはり綺麗事なのかもしれませんね。
予告編のみの知識で出演者を主人公やその伯父役くらいしか知らなかった私にとって、「あの未決囚は誰が演じてる?」とずっと疑問に思ってた私です(汗)エンドクレジットで「彼」の名前を観たときに。。。「え?どこででてた?」などと自ら大ボケをカマしてしまいました(笑)
なんといってもオリジナル脚本の作品であることは評価したいですし、なかなか興味深いところに目をつけたなと思いました。
罪を犯した者にも、その人を思いやる人がいる
今年の劇場版「名探偵コナン」に、「刑務所の近くには差入店がある」みたいな台詞があったが、それが、実際にどんな職業なのかは、本作を観るまで知らなかった。
刑務所への差し入れの代行業というと、受刑者の身内等にはありがたいのだろうが、犯罪の被害者にとっては、加害者に肩入れしているようにも見えてしまうので、映画の中で描かれているように、反感を持たれたり、非難されることがあるのかもしれない。少なくとも、「誰からも感謝されるような仕事ではない」ことは確かなので、それに従事する上での苦労や葛藤があることは、容易に想像することができる。
ただ、罪を犯した者であっても、その人を思いやる人はいて、そんな、依頼人の「思い」を受刑者に届けること、あるいは、受刑者に、「あなたを思っている人がいる」ということを知らせることも、差入店の重要な仕事であるのは間違いない。
劇中、主人公が、主に関わるは、彼の一人息子の友達を殺した若い男と、娘に売春をさせていた母親を殺した元ヤクザの2人の受刑者で、それぞれを演じている北村匠海と岸谷五朗が、共に強い印象を残している。
若い男の方は、「100匹の蟻」の話を持ち出して自分を正当化し、少しも改心する様子はないし、彼の母親にしても、情緒が不安定で、「二十歳を過ぎた子供の責任は取れない」みたいなことを言い出して、どちらにも、同情することも、共感することもできない。
一方、元ヤクザの方は、少女を救い出すために母親を殺したということが分かってくるのだが、売春の事実を表沙汰にさせないという配慮から、少女は、元ヤクザとの面会を拒絶され続けている。
終盤、主人公が、少女と元ヤクザの面会を実現させる場面では、自分のことを助けてくれた元ヤクザに、必死で「生きて」と訴える少女の姿に、思わず目頭が熱くなったのだが、これこそが、「思い」を差し入れるということなのだろう。
その一方で、主人公が、若い男と面会する最後のシーンからは、たとえ、人間として許せないクズであっても、業務として差し入れを続けるという職業人としての「矜持」は感じられるものの、サイコパスには「思い」は届かないという無力感も覚えてしまった。
ここは、そんな殺人犯でも、母親は「罪を償って立ち直ってほしい」と願っていて、そんな「思い」が、わずかながらでも彼に届いたみたいな展開になっていたならば、もっと感動できたに違いないと、少し残念に思ってしまった。
それから、主人公自身が元受刑者で、受刑者の心情を理解できるということが、比較的重要な設定になるのだろうと思っていたのだが、そうした背景が、まったくと言っていいほど物語に活かされなかったのは、一体どうしたことだろうという疑問が残った。
全124件中、41~60件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。