劇場公開日 2025年5月16日

「根本的に何を述べたいか微妙か」金子差入店 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0根本的に何を述べたいか微妙か

2025年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年142本目(合計1,683本目/今月(2025年6月度)5本目)。

 いわゆる差し入れ店を扱う映画です。

 ストーリーに関しては他の方も書かれているので個々省略で。資格持ちが気になった点をメインに。

 日本には職業選択の自由がありますが、その中でも各種法律で「資格を持っていないと開業できない」(病院など)、既存の店舗に配慮したもの(公衆浴場等)があり、これらは法律で明確に定まっているものです。一方、差入店は明確な法律はないものの、映画内で描かれるように、差入れできるものには法律上の制限があり、それを誰もが把握できるわけではないので、いわゆる刑事施設等では各刑事施設がいわゆる差入店を1~2か所指定し、そこ以外の差入れを認めていない実態があります。法には基づきませんが、実態上、すべての差入物品を検査することは現実的ではないので、仕方がない部分もあります。また、そうしたお店はその性質上扱える物品が限られる(建前上はただのスーパー、コンビニと変わらないが、実態としては差入れに特化しているので、一般客はおよそ来ない)ため、新規参入が「事実上」限られる一方で、極端に儲かる職業でもないし、かといって日本になくなっても困る職業でもあるので、後継ぎの問題(息子なり娘なりが必ずしもつぐとは限らない)も抱えています。

 ※ 映画内の描写を見てもわかるように、とても「儲かる」仕事ではないので、いわゆる「天下り」の問題も発生しない。

 こうした事情があるので、ある意味で特権が(暗黙上)与えらているそうしたお店で、映画で述べるようなストーリーを延々繰り返しても何を見せられているのかうーん、といったところではあります。また、映画内で出るように、離婚届の提出を迫るような行為は弁護士法との関係でもまずいです(争いがあるトラブルは弁護士以外は扱えません)。

 ※ 協議上離婚等、「本人たちが納得している前提」においては、行政書士等でも扱い得ます。

 このような事情があるので、何を述べたいかよくわからないし、思い切ってドキュメンタリー的な内容にしても良かったのでは…といったところです。

 採点上特に気になる点まで考慮はしています。

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 (減点0.8/映画で何を扱いたいかはっきりしない)

 差し入れ店を扱う点は理解はするものの、一般的な差入れ店で行わない行為(手紙の代読や離婚届の代理等は明らかに範囲を超えている)が描かれている等、どうするとこんな映画になるんだろう…といったところです。ドキュメンタリー映画等なら、まだ法務省等がバックにつくので、まだ理解できるのですが…。
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 ※ なお、刑事施設とは別に、入管法に基づく収容施設が日本にあり(2か所)、ここにもこのような店舗はありますが(ただし、一般のそれらと違い、施設の性質上、宗教に配慮した品ぞろえがあるなど、多少異なる点がある)、入管関係を扱う行政書士は「仮放免許可申請」との関係でこれらの相談を受けることはあるので、厳密な取扱いは別になりますが、実態として同じそれらについてはある程度の知識はある、といったところです。

yukispica