サンセット・サンライズのレビュー・感想・評価
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【“日は沈むが、又、上る。”今作は、東北の方々の”東北人あるある”の姿にクスリと笑い、東北の人達の情の厚さがじんわりと沁みた逸品である。そして、併せて東北あるあるの数々を記します。】
ー 今日1月17日は阪神淡路大震災が起こってしまった日である。通勤途中、鎮魂の思いでハンドルを握る。
その後、東北大震災により、東北太平洋岸の人々が大変な思いをされた事は、誰もが知っている事だが、私は大学の4年間を東北で過ごしたため、友人の多くが東北各県庁に勤めており、当時頻繁に手紙を出し、少し落ち着いた頃から毎年福島、宮城を訪れている。
故に、今作はクスリと笑えるシーンが多かったのだが、西尾(菅田将暉)がコロナ禍の中、リモートワーク兼釣りをするためにモモちゃん(井上真央)が所有する”空き家”に住む事になった時に、”これはもしかしたら・・。”と思いながら鑑賞したモノである。-
◆感想<Caution!内容に触れています。&東北あるあるを記します。>
・序盤、西尾がモモちゃんが空き家情報サイト出した家にやって来るシーン。西尾は浮き浮きで新築に近い一軒家に”マジっすか!”と言いながら6万円で住み、コロナ禍初期東京から来た事で2週間隔離をモモちゃんから告げられるも、コッソリ釣りに行ってしまうシーン。
ー ここで、西尾は知らないお婆さん(白川和子)に”け”と言われて海産物を貰うのである。私の経験上、日本海側が多い気がするが、東北の年配の方は言葉一音のイントネーションでコミュニケーションを取る。例えば、”く?”これは”家に来るか?”もしくは"こ!"これは"家にこい!"という意味で、返答は前者は”ぐ!”"いぐ!"と言う意味であり、後者の返答も同様に"ぐ!"である。(地方により違います。)ー
・更に西尾は”モモちゃんの幸せを祈る会”のメンバー、板前のケン(竹原ピストル)、役所のコーサク(好井正雄)、タケ(三宅健康)、ユーイチロー(山本浩司)から、コロナ禍初期だからでもあるが、モモちゃんの”空き家”に住み込んだ謎の東京男として警戒されるのである。が、メンバーがいつもケンの居酒屋で酒を飲みながら深刻な顔をして、勝手な事を喋っているのが可笑しい。
ー 東北の人は、今作の登場人物同様に情が厚いが、”よそもの”は簡単には仲間にしない。私も高校に入った時は女子からは”キャー、あの人、東京から来だんだって!”などと言われていたが(オバカ)、男子からは可なり警戒され、担任の先生が喋っている言葉が分からずに、級友に”お前ら、庄内弁教えろよ!”と言ったら、皆に一斉に”東京モンは、こえーのう”と言われて、謝ったものである。
因みに東京の人が話している言葉は”東京弁”であり、共通語ではない。キッパリ!
で、教えて貰ったのが、今作でも出る”いしごぐ””ごしゃぐ””みっこい”などである。全部意味が分かった人は偉い。けれども、今作同様、垣根を越えればとても仲良しになるのである。-
■今作がじんわりと沁みるのは、最初は喜んでいた西尾が徐々にモモちゃんの”空き家”の意味に気付いて行く様であり、彼女の抱えていた哀しみが見えるシーンである。例えば、西尾に”空き家”の中を案内している時に子供二人が走る姿が幻のように見えるシーンである。”これはマズい、泣いてしまう・・。”と思ってしまったよ。
で、後半モモちゃんが車内で録音してあった二人の子供の明るい声を聞くシーンでは、不覚にも涙が零れてしまったのである・・。
・今作の魅力は数々あれど、三陸の美味しそうな魚料理の数々もその一つである。それを実に美味そうに食べる菅田将暉さんは良いなあ。私は、食べ物を美味しそうに食べる人が好きである。
食べ物と言えば、今作で海のパイナップル、ホヤの話が出るが、ホヤは宮城の春から初夏の食べ物であり、ホヤ酢が美味いのである。序に言えば酒が幾らでも呑めるのである。ゴックン。
・西尾の所属する大企業の社長(小日向文世)が、空き家をビジネスにしようとした時にアヤシイ雰囲気になってしまい、雰囲気を戻す為に皆で芋煮会を河原で催すシーンがあるが、あれも東北名物である。劇中でも言われている通り地域によって味が違う。良く大学の傍を流れる広瀬川の河原で級友や登山仲間と共にグデングデンになるまで、飲んだものである。
ー 今作で、熊がシメジを持って来るシーンと、又モモちゃんが秘密のキノコ採集場所に西尾を連れて行くシーンが映されるが、東北を貫く奥羽山脈は冬は雪深いが広葉樹林、特にブナ林が大規模に広がる山塊で、実際に天然舞茸などが取れる。だが、ヨーロッパのトリュフと同じで、他人にはその場所を告げないし見つけた時には、翌年もその場所で取れるように一株残すのが、プロの技なのである。
又、細筍(中部では根曲り筍が多い。)は、塩ゆでしても今作のように魚と一緒に煮つけても美味いのである。-
■西尾が三陸の町に移住して一年経ち、社長から”東京に戻って空き家プロジェクトのリーダーとして働くように”。と言われた時に、西尾は意を決したかの様にパソコンを閉じて移住契約を延長し、モモちゃんに”結婚して・・。”と無意識に言ってしまうシーン。
そして困惑するモモちゃんの表情を、井上真央さんが実に上手く演じているのである。
その前に、西尾はモモちゃんが台所の上に密かに置いていた煙草の吸殻が3本入った吸殻入れを見て元の位置に戻すシーンも、さり気無く映されているのである。
<そして、西尾は自分の想いを貫き、自分が描いた夕陽に向かって男女二人が手を繋いでいる画に、男女の脇に小さな子が二人男女と手を繋いでいる画に描き換えて部屋に残して、一時東京に戻るのである。その画を観た時のモモちゃんの表情・・。
で、最初と同じトーンでの二人の再会のシーン。
西尾に対し、モモちゃんは全てを吹っ切って笑顔で抱き着くのである。
今作は、東北の方々の”東北人あるある”の姿にクスリと笑えて、情の厚さがじんわりと沁みた逸品なのである。>
■不思議な出来事
・近年、もう一つの思い出の土地、京都の祇園で呑んでばかりいたが、今作を鑑賞する直前に、福島県庁の今やお偉いさんの級友から電話が来た。私は、毎年2月から3月に掛けて福島に行くのでその打ち合わせの電話だったのだが、ちょっと不思議な気持ちになったよ。じゃーね。
田舎暮らし。
新型コロナウイルスが流行り始めた頃…、自分が住むはずであった家を空き家物件で掲載した南三陸の町役場で空き家物件担当・関野百香と、その空き物件の安さに入居希望で都内から南三陸に来た西尾晋作の話。
感染拡大阻止と町を守るためから都内の人間と接点をもってはいけないを理由に入居拒否をしようとしたものの、勝手に内見に来ちゃったもんだから入居希望の家で2週間の自主隔離生活をさせられることになる西尾だったが…。
少し面倒な小さな町(集落)の田舎ネットワークを絡ませながも、よそ者は受け付けない町の雰囲気…。
町役場のマドンナ的な存在・関野百香を巡り探り、嫉妬と見せていきながらも、徐々に詰まる町住人と西尾の距離が観ていて面白い。
空いてる空き家を活かすと今時な事を取り入れながらも、田舎町に住む人の人情と温かさだったり、都会に住む人間が物価の安さも含め田舎町に移住と見せるなか、西尾演じた菅田君の画力と百香演じた井上真央さんの可愛さに惹き込まれ面白かった。
やっぱ菅田君いいね~!あと竹原ピストルさんは「サバカン」から好きでシブい!
色んなシーンで登場する「語れない本音」と、距離と温もりの相関性が描かれている良作だったと思います
2025.1.17 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(139分、G)
原作は楡周平の同名小説
リモートワークの影響で東北に移住した青年と震災の過去を背負う女性との交流を描いたヒューマンドラマ
監督は岸義幸
脚本は宮藤官九郎
物語の舞台は、コロナ禍の日本
東京の大企業「シンバル」に勤める西尾晋作(菅田将暉)は、フルリモートの移行する余波を受けて、仕事と趣味を両立できる棲家を探していた
ある日のこと、格安の物件が目に止まり、いても立ってもいられなくなった晋平は、家主の都合も考えずに三陸・宇田濱町へと突撃してしまった
その家は、町役場の職員・関野百香(井上真央)の持ち家で、訳ありの物件でもあった
百香は役場の「空き家物件対策」の責任者に指名されていて、自分の所有する家が空き家では話にならないと考えていた
彼女は父・章男(中村雅俊)と一緒に過ごしていて、その戸建てにて一人で住むことを拒んでいた
物語は、強引な晋作が三陸に馴染んでいく様子が描かれ、徐々に「過去を察する」という感じで描かれていく
この「察する」ことができるだけの情報を小出しにしていく流れになっていて、それがそのまんま「外部の人が言葉に出せない」という微妙なニュアンスを表現していた
聞きたいけど、相手のことを考えて口に出せないのだが、それでも滲み出てくるものから、何があったのかを察することができる
この表現は邦画独特の空気を読むというものを上手く表現しているように思えた
後半にて、芋煮会なる暴露会があるのだが、そこで語られる本音と言うのは、誰しもが心の中に抱えているものだと思う
また、地方の空き家問題に真面目に取り組んでいく様子も描かれ、それが「騙されているんじゃないか」と言う空気感になるのも絶妙だと思う
都会は田舎を食い物にしているのかと匂わす場面もあるのだが、地方の荒廃はそのまま都会の荒廃へと直結するので、Win-Winを考えられるアイデアというものが実現できれば、モデルケースとして広がっていくのかなと感じた
映画では、ディスタンス(距離)というものがテーマになっていて、コロナ禍の無理な距離感はそのまま心の距離感にもなっていた
晋平と百香がふれあうのが熊騒動のどさくさのみで、それ以外は絶妙な距離感を保っていた
それがハグに変化するというのが映画の醍醐味であって、そのために必要な時間というものは、過去を消化する時間であるとともに、自分自身の未来を考えた時に欲しい温もりが何かを考える時間だったのかな、と感じた
いずれにせよ、思った以上に重い話でありながら、コミカル要素があって、緩急自在のシナリオになっていた
登場人物も魅力的で、脇役まで含めて愛されキャラが多かったと思う
芋煮会での百香の同僚・仁美(池脇千鶴)が晋平を焚き付けるのにも意味はあって、彼女自身も先に進みたいのだと思う
ビジネスとして官民が動いていくジレンマもあるものの、都会人の思惑と田舎に住む人の温度差も描かれているし、一社員と社長の視野の違いというものもきちんと描かれていて良かったように感じた
ラストの晋平と百香の選択は今風だが、そう言った過去のしがらみを超えていくことが必要なことなんだと思った
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