「豊かな自然、そして「東日本大震災」がもたらいた悲劇を救うのは愛だ」サンセット・サンライズ かなさんの映画レビュー(感想・評価)
豊かな自然、そして「東日本大震災」がもたらいた悲劇を救うのは愛だ
監督は「あゝ荒野」「前科者」「正欲」の岸信幸、脚本は数々の脚本を手がけているクドカンこと宮藤官九郎、そして今や日本を代表する俳優になった菅田将暉がタッグを組んだのがこの映画です。
ヒロイン役の井上真央も好演していて、クドカンのコミカルな脚本で
テンポよく物語は進みますが「東日本大震災」が大きな影を与えている作品です。
【映画批評】
映画の主人公は海と山の豊かな自然だ。コロナ禍で仕事がフルリモートになった東京在住の西尾は、三陸の海沿いにある格安の貸家をネットで見てとんでくる。西尾は海と釣りが大好きだからすぐに決めたのだ。その貸家は、役場に勤める百香が空き家問題を担当することになり、まず自分の家を貸家にしたのだ。
東京者がコロナ禍真っ只中田舎に来た。当然百香もすぐ来てしまった西尾にとまだいつつ、その状況を宮藤官九郎は手際よくコミカルにさばいていく手腕は見事で西尾の十四日間の自主隔離につなげる。それでも西尾は人目を盗んで釣りに出かけ、海と釣った魚に満足する。リモート飲み会、海の幸を自慢する西尾が幸せそうだ。
西尾は自主隔離が終わった日、百香の家に食事に招待される。またも海の幸に舌鼓を打ち、なによりマスクをはずした百香に一目ぼれする。
西尾は居酒屋で「モモちゃんを守る会」のメンバーでもある店主がある意味攻撃的にこの土地の海の幸をどんどん出してくる。その一品一品がどれもおいしく、食べる菅田将暉の至福の表情がなんともいい。「モモちゃんを守る会」がなになのか、西尾は知らない。
きれいで豊かな自然、そこから獲れる海の幸。しかしこの豊かな自然こそが多くの人の運命を変えた「東日本大震災」を発生させたのだ。西尾は当然震災を体験していないし、きれいになった海、町しか見ていない。
西尾は百香が貸家に出した意味を知る。ここから空き家問題をビジネスにしようとする会社の社長の命令で町にドタバタ劇が起きてくる。その時西尾は空き家ビジネスとかどうでもよくてとにかくこの町、海、釣りが好きで、なにより百香が好きだと告白する。百香も西尾に好意を寄せているが百香は、震災で失った家族を忘れられない。百香自身前に進みたいけど進めない。その葛藤にさいなまされる。
西尾と再会した百香は強く自然に西尾を抱きしめる。東京者の西尾は、震災で大きな傷を負った百香をただただ純粋に愛しく想う。百香を大切にする西尾の決心は、百香への愛の強さを見た。