劇場公開日 2025年1月17日

「だれが映像の力を信じているのか問題」サンセット・サンライズ Yokoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0だれが映像の力を信じているのか問題

2025年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

テレビマンユニオン制作の映画である。
大昔、日本がイケイケのバブルに沸いた時代にメディア周辺で仕事をしていた新人の目には、同社はTV局と広告代理店とスポンサーの間でお金の話が乱れ飛ぶ中で真摯に(しかし権限はなく)仕事をしておられる立場の企業と見えた。
あれから40年。大手メディアの凋落は止まらず、社会の公器としての気概などどこかへ置き忘れたかのような有様を目にして愕然としている今日この頃、この映画をテレビマンユニオンが制作したことに爽やかな風を感じている。

宮藤官九郎の脚本には、震災後の東北を扱うにあたってNHKの『あまちゃん』の時と同じく、津波にのまれた現地の様子などは一切表現されない。ヒロイン百香の身に何が起こったのかも、近しい人たちは軽々に口にしない。本当に辛い思いをした人たちとは、そういうものなのだというリアル感があった。

終盤に、亡くした家族が残した音声をひとり自動車の中で百香(井上真央)が聞くシーンがあった。ここから印象的なBGMへとつながる展開には泣かされた。また、エンドロールにずっとさざ波の音が流されていたのも憎い演出だった。日本版『マンチェスター・バイ・ザ・シー』かな。

物語は、ちょっといろいろうまく行き過ぎていて、「そんなわけないでしょ」と突っ込みを入れたくなるけれど、そんな奇跡もあって欲しいと願う観客の思いに応えてくれるものだった。

テレビの制作現場を支えた人たちが、局の顔色をうかがわなくても仕事ができる時代が到来しつつあるのだとしたら、本当に映像の力で世の中を良くしたいと思ってきたのは誰だったのか。答えが出つつあるのではないかと思った作品。爽やかだった。

Yoko