「いろいろと解釈がおかしい映画は採点上考慮せざるを得ない」366日 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろと解釈がおかしい映画は採点上考慮せざるを得ない
今年6本目(合計1,548本目/今月(2025年1月度)6本目)。
「うるう年」生まれの当事者と、沖縄の(就職氷河期時代の)実態と、夢見る男性女性とその恋愛を描いた作品です。
純粋たる日本映画ではありますが、結末はしっかりと書かれていても完全に描かれているわけではなく、「この意味で」結末は自分で考えてね、というフランス映画らしい部分もまま感じられます。実話ではないですが、本土(沖縄に対していう語)も沖縄もこの時期は就職氷河期時代だったわけであり、その点も踏まえて描かれていたのは良かったです。
舞台は主に東京と沖縄。これで95%は占めるといったところでしょうか(長崎県らしき部分も出てきましたが…ただの見間違いか)。
結局のところ、どの登場人物がとった行動にも一理あるし理解しなくもないし、一般的な映画でよくある「明らかにこの人が悪い」というような「明確な」解釈ができる映画ではないので、いろいろな考察ができます。この3連休、迷ったらおすすめといったところでしょうか。
ちょっと気になる点があるので、評価に入ります。
-------------------------------------------
(減点0.4/うるう年生まれに対する考察不足(民法ほか))
うるう年生まれは、うるう年でない年は、行政上の処理(例えば、給付金の扱いなどで誕生日を厳密に判定する必要があるような場合)、3月1日の誕生日とすることが多いですが、これらに根拠があるわけではありません(道路交通法ほかでは、免許更新に特別な規定があるものもあります。一方でこれと全く異なる趣旨の法もあるので結構面倒)。
---
(参考/道路交通法(92条の2))
> その者の誕生日が二月二十九日である場合におけるこの表の適用については、その者のうるう年以外の年における誕生日は二月二十八日であるものとみなす。
---
かつ、映画内でいう「4年に1回しか誕生日が来ない」わけでももちろんないですし、当然そこにはうるう年のルールの例外規定があります(うるう年に関するルール)。
このあたり、映画内で扱うテーマの一つが「うるう年」(の、うるう年のその日生まれ)である以上、正確な描写が欲しかったです。
(減点0.4/心裡留保や通謀虚偽表示と第三者保護要件)
身分行為には心裡留保や通謀虚偽表示の適用はありません(判例。親族相続の規定が優先される)。一方、身分行為でないそれらは、善意の第三者には対抗できません(映画内は民法大改正前のものですが、「心裡留保は善意の第三者に対抗できない」は最高裁判例で、実務上それで動いて民法大改正で明文化された)。
-------------------------------------------
(減点なし/参考/沖縄と天ぷら料理)
映画内でサーターアンダギーを食べるシーンが出るように、沖縄では沖縄から見た本土(日本本州のこと。便宜上、北海道と四国九州も含む)からみて、「天ぷら料理」は独特な発展をとげました。映画内で出てくるこのお菓子や、映画内でしばしば登場する「天ぷら料理」もその一つです。
ただ、沖縄においては、戦後間もない時期にアメリカが接収したため、油不足に陥り、戦前、戦中に普通に食べられていた普通の意味での天ぷら料理が食べられなくなり、アメリカ軍が進駐すると同時に、その車両に搭載されているエンジン油など、明らかに適さない油をつかった天ぷら料理が流行した時期が戦後の混乱期であり、これが保健所など設置できなかった戦後の沖縄において健康被害を及ぼすことになりました(いわゆる「モビール(モビル)天ぷら事件」のこと)。こういった事情から、当時を知る当事者(ほぼ高齢者)では、今でも天ぷら料理を避けることがあります。