「14年目の3月11日に観賞」最後の乗客 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
14年目の3月11日に観賞
2万2228人。
死んでも死に切れなかった2万2228人の人たちと
生きても生きても、いまだに生ききれない 生き残った人たちが
かの地にはこんなにたくさんいたのだと、この映画は見せてくれました。
6人の登場人物がそれを教えてくれました。
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僕もあの地震の時には、
苦労して3日目に仙台に入った。
叔父叔母と従兄弟の一家がそこにはいる。
寒風吹きすさぶ歩道で、ジャンパーを着た従兄弟を見つけてひたすら固く僕たちは抱擁した。
「僕の軽自動車に誰を乗せて、そして誰を乗せないか」
「子供たちとその母親を乗せるのか」
「子供たちとその母親は乗せないで老人たちを乗せるのか」
僕は決断をしなくてはならなかったのです。
救急車にも消防車にも燃料が枯渇し、医者の車も動けない。
ガソリンがすべて売り切れで、どこも閉店している中、こっそりと隠して出発地で調達したガソリン。荷台の毛布の下には赤い灯油缶2つに40リットルのガソリンを「帰途用」に隠し持っている事を黙って
ガソリンを分けてもらえませんか!という必死の形相の人たちを僕は振り切って
仙台を脱出した。
福一の煙が仙台まで来ていたから、とにかく西を目指した。
まさかの自分が「トリアージ」をする事になるとは。
僕は生まれて初めて布団の中でのたうち回って 呻き声で苦しみ、しばらくの間 PTSDに苦しんだ。
年寄りたちを乗せて新潟へ逃げた。
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瓦礫の下や海岸から回収された膨大な数の「写真」を、綺麗に洗浄して展示して持ち主や遺族に返すボランティア活動の記録。
これ、大著の記録集を熟読したことがあります。
本作の巻末エンドロールでは、それらの写真を映していましたね。確かにかの地で生きていた人々の証拠が、胸を打ちます。
誰かを助けるためにUターンして亡くなった方。
「てんでんこ」で振り切って逃げたのにダメだった方。
手を離してしまって水に飲まれる妻の目を見てしまった方。
僕ごときのちっぽけなトラウマなど 、どうだっていい事だ。
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会いたかった人の幽霊に会うって、とても大切な事なのだそうです。
赤いポストは直筆の手紙で、
風の電話ボックスは話しかける生の声で、
そしてバス停は、あの人に会える浜に東北の人たちを連れていってくれます。
生きている人と死んだ人が大勢住む町、東北。
慰めと希望が与えられますように。
みんなが長生きできますように。
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