「「深夜のタクシーが乗せたのは3人の乗客と秘密」」最後の乗客 K2さんの映画レビュー(感想・評価)
「深夜のタクシーが乗せたのは3人の乗客と秘密」
というキャッチコピーと、東日本大震災関連のストーリーらしい、という情報以外の予備知識なしで観に行きました。
単館系の自主製作映画で、東京の映画館でも上映終了しているタイミングにも関わらず、近所の映画館でまだ演っていて、観られてラッキーでした! 50分台の短い映画ですが、見応え十分の良作だと思います。見逃した方は、きっと何処かでリバイバル上映がある気がするので、セカンドチャンスに是非どうぞ。
正直、「カメ止め」や「侍タイムスリッパー」のようなとても良くできた痛快娯楽作ではないですが、作者の描きたいメッセージや、そこに行き着くための多少のヒネリを含んだストーリー展開はしっかりしていると思いました。あまり予備知識を入れずに、映画館のスクリーンで素直に物語に向き合い、何を感じるか、にフォーカスすれば、この映画の価値が感じられると思います。
自分は震災発生時、仙台に住んでいてある意味当事者ではあるのですが、幸い身近な誰かを亡くすような経験はしていないので、たまに「あの時はさー」という感じで軽く口に出したりすることもあります。しかし、本当につらい思いをして心にトラウマ(傷)を抱えてしまった人にとっては、思い出すこと自体が容易ではないでしょう。
「よく『あの日を忘れない』とか、簡単に言うけど、こっちは忘れたくても忘れられないんだよ!」とか、「誰かを亡くしたことをできることなら忘れたいけど、その人自体や想い出を忘れたい訳じゃないんだよ」とか、色々な気持ちやケースがあることでしょう。
作者が描いたのは、「災害」やその後の人生に対する想いや気持ちのカタチは様々あり、時期や人、立場によってそれぞれ違うけど、そういった当事者の気持を想像してみたり、それと向き合い、折り合いをつけていく過程を描いた一つの物語。この寓話的ストーリーは、そういった想いを巡らすための入口、一つのキッカケを提供するモノとして作られたのだろうと思いました。