「秀作。泣いた。」遠い山なみの光 白犬ホワイティさんの映画レビュー(感想・評価)
秀作。泣いた。
あまり映画では泣かないのだが、見終わって泣いた。
万里子が悦子を「お母さん」と呼び、景子(あるいは万里子)のアルバムをニキが見ている辺りからである。
どうして泣いたのか自分でもすぐに分からず、気づいたのは1時間後だった。
自ら命を絶ったとはいえ、景子(あるいは万里子)は確かに幸せだった時期があったのだ、と思ったためである。
悦子は果たして佐知子を手にかけたのだろうか。
路面電車の佐知子を道路から見つめ、涙を流しているのは現在の悦子である。
二郎と緒方さんの行方はふっつりと消えてしまっている。
謎は尽きないが、これを追求するのは野暮と言うものであろう。
監督曰く「自分はミステリに寄せる傾向がある」との事で、
これは監督の「ある視点」であり、カンヌ映画祭でこの賞を得たのも納得がいく。
エグゼクティブプロデューサーをカズオ・イシグロが務めているだけあって、
映画の中でも絶妙にイシグロ作品の余韻ある世界を内包している。
小津安二郎の映画を思わせる話し方も良かった。
私は好きだが、観る前に小説を読んでいない方には難解で理解に苦しむであろう。
よって、星4.5。
ここで、カズオ・イシグロの作品について触れておきたい。
私は20年以上カズオ・イシグロのファンで、最初に読んだのは「日の名残り」である。
映画はそれはそれで良かったが、小説の方が気に入った(特に最後の桟橋の場面と、執事である主人公が新しい主人のためにジョークを練習しようと思うあたり)。
初心者におすすめな小説は、「日の名残り」と「わたしたちが孤児だったころ」である。
どちらも皮肉と示唆に富んだ作品で、落ちがあり分かりやすく、読後の余韻を愉しむことができたなら、きっと彼のファンになるだろう。
また、カズオ・イシグロが脚本を務めた映画「生きる」も大変おすすめな作品なので、こちらも是非観ていただきたい。
カズオ・イシグロはノーベル文学賞を受賞しているが、一番驚いたのは実は彼本人なのではないかと思っている。当時彼は若かったし、受賞のタイミングが早すぎるような気がしたからである。それを考えると、私は何だかふふふと微笑ましい気分になるのである。
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