「忘れたい過去を編集した端正な『或る女の記』」遠い山なみの光 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れたい過去を編集した端正な『或る女の記』
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カズオ・イシグロ原作で、50年代の長崎と80年代のイギリスを舞台に、日本人女性の半生をミステリアスに描く作品です。まず、美しく整えられた映像が素晴らしく、過去の長崎は淡くノスタルジー溢れるタッチ、現代のイギリスは暗く冷たいタッチなのは、主人公の心象風景のようです。この映像をバックに主演三人の女優の競演に惹きつけられ、なんか日本映画離れした作品でした。お話しは過去の長崎と現在のイギリスを行き来しながら、観客に語られていた過去が徐々につじつまが合わなくなってきて、最後に一気に難解な結末になります。正直言って作品を理解したとは言えないけど、主人公は、自分の過去と他人の過去のいいとこ取りをする事で忘れたい過去を塗り込めているように感じました。そういう意味では、佐知子は悦子が頭の中で作り出した想像のキャラクターにも思えますし、被爆者である過去、女性は男性に隷属することを課せられる風潮を消し去り、自分で未来を切り拓きたい願望が今日の悦子を創り上げたのかもしれません。久しぶりに映画を観て、あれこれ考えて楽しかったです。役者では、ダントツに広瀬すずの名演が素晴らしかったです。クラシックな雰囲気と美しさに加え、柔らかいトーンの長崎弁のセリフ回しがピタリとはまっていました。二階堂ふみは、こう言う正体不明の役柄をやると本当に上手です。木箱を川に沈めるシーンはおっかなかったです。
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