「記憶はすべてが事実ではなくとも、真実でないとは言えない」遠い山なみの光 Toninuさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶はすべてが事実ではなくとも、真実でないとは言えない
小津安二郎の映画を彷彿とさせる悦子:広瀬すずと、義父の緒方さん:三浦友和の微妙な関係性の描き方が素晴らしいです。広瀬すずを原節子のような往年の美しい女優という撮り方をしている点からも、小津映画へのリスペクトが感じられます。
だけど映画の内容は、小津作品のような普通の人の日常生活よりも、ずっと重いものがあります。それはこの時代の日本の悪夢のようなものであり、繰り返し語られる『人は変わらなければならない』というメッセージを際立たせています。
ラストは観客に判断を委ねるようなところがありますが、この映画は決してミステリーではありません。解釈は観客が自由に考えれば良いということです。
『記憶はすべてが事実ではなくとも、真実でないとは言えない』ということではないかと、私は思います。たとえ事実ではなくとも、すべては悦子の人生において感じているリアルなのではないでしょうか。
古い絵葉書のような長崎の遠景など美しいシーンも多いのですが、小津作品ファンとしては、もう少し構図にこだわって欲しいところでした。その点で星マイナス1です。
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