劇場公開日 2025年9月5日

「過去の自分と向き合う」遠い山なみの光 Eijiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 過去の自分と向き合う

2025年9月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

「過去に戻ってやり直したい」という人もいますが、私は過去を振り返るのが苦手で、そんな風に考えることはありません。
経験しているものの重さは比になりませんが、悦子もそんな風に考えていたのかと想像しました。絶望的な景色や目を覆いたくなるような出来事を眼にしてきたり、思い描く「なりたい自分」になれずにいたりした彼女は、工夫してそれを昇華しながら過ごしていました。
夫の靴紐を体をかがめて結ぶ自分からは変わろうとしていましたよね。

でも、そんな彼女が本当に変われたのは、次女ニキに財産やこれまでの記憶をつなごうと、過去の自分に向き合えたときからなんでしょう。そんな彼女の姿勢がニキを変えることにもつながったようでした。
そんな彼女が義理の父に「変わらなきゃ」と促していたのは皮肉な感じにも映りました。

節目の年だからとかいうのではなく、いろんな意味で「変わらなきゃ」いけない状況にある現代を生きる私たちに課題を投げられたような気がしました。
苦手だとしても、過去と向き合うことも必要なんでしょうね。悦子が過去の自分と長女と向き合ったときの表情が印象に残りました。

戦争の後遺症といった場合、男性の視点で語られることが多かったわけですが、当然、女性もいろんな想いや傷を背負わされたわけですよね。悦子に辛い半生を押し付けた悲惨な過去、歴史が終始鮮やかな色彩で描かれていたことで、脳裏に鮮明に訴えるものがありました。

Eiji
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