「カメラマニアから見た視点 小道具の時代考証ミスだけが・・・惜しい・・・」レイブンズ domdokodonさんの映画レビュー(感想・評価)
カメラマニアから見た視点 小道具の時代考証ミスだけが・・・惜しい・・・
映画も好きですが、それ以上に写真カメラが好きで、敬愛する深瀬昌久が題材の作品という事で期待して鑑賞しました。
構成、映像、演技いずれもしっかりとした文句のない作品で、カメラマンの生涯として重要な小道具の写真機も実際に深瀬がそれぞれの時代に持ってものだったのでよく調べているなと思いました。ただ1点だけの時代考証のミスを除いては・・・
冒頭に近い場面に主人公正久が結婚前のモデル洋子のポートレートを撮っていたシーン。時代は1960年後半~1970年代初めのはずです。撮影しているカメラは彼が当時使っていたミノルタSR-1で、よく調べてるなと思ったのですが、カメラストラップのミノルタのロゴマークが当時に存在していなかった1980年以降のものでした。時代的にありえない組み合わせで、少しカメラに詳しい人ならば誰でもわかるミスでした。
この一瞬だけならばよかったのですが、そのカメラが写るシーンが何度も何度も出てきましたし、おまけに映画ポスターにもわずかですが、そのロゴが写ってしまっています。なので冒頭のこのシーンがどうしても自分の中で引っかかってしまって、かなり映画のストーリーに没入できない自分がいました。
ご存じない方には全然問題ないシーンで、普通の映画なら私自身もご愛敬でOKなのですが、仮にも日本が誇る写真家の深瀬昌久を描いた作品です。これはしっかりしてほしかった。言い換えれば小道具はじめスタッフの中にはこのことを指摘する人がいなかったんだなあ、写真をやっている人がいなかったんだなあ・・と感じました。
その他には小西六パール、PENTAX SP オリンパスXAなどの名機が次々と出てきて見ごたえがありましたし、深瀬の有名な作品も沢山見れました。特にクレジットに出てきた作品は映画を圧倒するクオリティでしたし、鴉が舞うラストシーンと音楽は過去に見た作品の中でもかなり印象に残りました。他には文句をつけるところがない映画だったので、返す返すもあの設定は残念でした・・・