「破滅型アーティスト」レイブンズ ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
破滅型アーティスト
深瀬昌久も洋子も知らずに鑑賞。
邦画と思いきや、イギリスのマーク・ギル監督による作品だった。
確かに物語の紡ぎ方や絵づくりは邦画っぽくないし、
何より深瀬の自問自答の相手として、鴉人間が出てきて英語で話すこと自体、
ぶっ飛んでいると言っていい。
鴉人間と深瀬との会話は、劇中で「ひとり言」とされているが、
自分会議というか自問自答なんだろうと思った。
とにかく俳優が素晴らしい。
主演の浅野忠信は破滅型の写真家を迫真の演技で表現していたし、
洋子を演じた瀧内公美も表情特に目の演技が凄すぎて怖いくらいだし、
池松壮亮が深瀬にビンタする手首のスナップも強烈だったし、
芋生悠が出演していたのも私としてはサプライズでうれしかった。
私がグッときたのは、不仲だった父親(古舘寛治)の死後の遺品で、
息子の昌久への愛情を感じるものを深瀬自身が目の当たりにしたときの表情。
ベタかもしれないが、この作品でかようなシーンが出てくるとは思っておらず、
私は意表を良い意味でつかれた。
ラストに至るまでが実に壮絶で、こういう生き方しかできなかった人なのだろう。
深瀬の伝記映画というよりは、深瀬というアーティストをアーティスティック
に、且つファンタジックに見せる映画であったと思う。
こういう邦画が出てきて欲しいとも感じた作品だった。