リアル・ペイン 心の旅のレビュー・感想・評価
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歴史は当事者と徹底的に向き合うことで作られる
映画の観方は、私にとっていかに共感出来るかに重きがある
リアル・ペインを観てこれは生半可な知識では役立たないことを思い知った
ホロコーストの悲劇(これも安直な表現かもしれないが…)を民族としては経験してはいないわけで、ベンジーの哀しみや祖母の体験と対峙する覚悟が、ピンとこないのだ
日本もかつて敗戦国として、植民地化は免れた歴史を持つが、この映画の英国出身のガイド(ウィル・シャープ 好演)と同じくそこについての学問的な高説をいくら聞こうが、それはそれでただの耳学問にしか過ぎないことが、ベンジーの抗議として露呈するわけなのだ
ラストシーンの評価は様々あるだろうが、今後彼の意思が願わくば生きやすさに繋がって欲しいと願うばかりだ。
心に痛いでも良い映画
鑑賞動機:賞レースでの評判10割
アイゼンバーグ自身で脚本も書いたようで。彼自身が折り合いをつける意味もあったのかな。そういう話だったのね。一人一人は少しずつ違った考え方をするし、幅を持たせて一緒くたにしているわけではないところには好感。いやでもベンジーは(遠くから見ているだけならともかく)
苦手かも。それだけキーランが上手いってことか。
サーチライトピクチャーズはこういうのでいいんですよ。
【”そしてユダヤの従弟二人は想い出の場所に石を置く。”今作は愛した祖母のポーランドの家を訪ねる二人が、夫々の哀しみを抱えつつも自らのルーツを旅する中で徐々に癒される様を描いたロードムービーである。】
■デヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)は、従弟のベンジー(キーラン・ランキン)と愛した亡き祖母の故郷、ポーランドを訪ねるホロコーストツアーに参加する。
が、自由奔放で空輸でハッパを持ち込んでいる陽気なベンジーに、生真面目なデヴィッドは振り回される。だが、ベンジーは哀しみを抱えており、デヴィッドは心から彼に寄り添えない自分に悩んでいた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・二人が集合する空港。デヴィッドは家から慌ててタクシーで駆け付けるが、ベンジーは二時間前から空港に居て、人間観察をしている。冒頭のこのシーンから二人がかけ離れた生活をしている事が分かる。
デヴィッドは美しい妻と可愛い子がいて会社勤めだが、ベンジーはそうではないらしい。
・だが、二人は空港で会うと嬉しそうにハグして飛行機に乗る。ベンジーは荷物検査のお姉さんと軽口を叩き、機内ではデヴィッドの子供の動画を見て笑っている。
・ポーランドに着くと、空港ではツアーの英国人添乗員が待っていて、ツアー参加者同士で自己紹介する。自適の老夫婦、裕福だが夫と別れた中年女性、ルワンダ虐殺を生き延びユダヤ教に入信した男性。そんな中、ベンジーは際どい突っ込みをしつつ、ハラハラした表情のデヴィッドは、その度に謝るのである。
・更にベンジーは、移動の際の列車が一等車である事に”ホロコーストを経験した人たちはこんなに恵まれていなかった”と言い、普通車に勝手に席を移動し、ツアーガイドには”もっと数字だけではなく、リアルに感じたいんだ。”と話すのである。だが、彼の言い分は真っ当であり、ツアー参加者たちは彼の言動を容認するのである。
この辺りの描き方が、嫌味にならずに逆にコミカルに思えるのは、ベンジーを演じるキーラン・ランキンのお陰であろう。
且つ、彼が少し前に睡眠剤を飲み過ぎて大変な事になった事が有るとデヴィッドが、ツアー参加者たちに申し訳なさそうに告げるシーンから、ベンジーが大きな哀しみを抱いている事が明かされ、デヴィッドはそんな彼に寄り添えない苦しい気持ちをツアー客たちに吐露するのである。
その後、強制収容所を訪れた後、ツアー参加者たちは粛然としているが、ベンジーは一人列車の中で涙を流しているのである。彼の心が、人一倍清らかである事だろうと思いながら、観賞を続行する。
・そして、二人がツアーから離れ亡き祖母の家に向かう時に、ツアーガイドは”貴方の指摘は的を得ていた。”と彼に言い、ベンジーは参加者たちとハグし、デヴィッドと二人で祖母の家に向かうのである。
着いた祖母の家が、余りに普通である事に驚きつつ二人はツアー途中で行ったように、家の戸の前に石を置くのだが、それを見ていたポーランド人のお爺さんからそれを咎められ、お爺さんの息子に事情を説明するが、結局持ち帰るのである。
このシーンも何だか、可笑しいのである。
・そして、二人は米国の空港に戻り、デヴィッドは自宅にベンジーを招こうとするが、ベンジーはそれをやんわりと断るのである。デヴィッドは自宅に到着した時に、祖母の家の前に置こうとした石を玄関先に置き、ベンジーは一人家に帰る訳でもなく、空港で再び人間観察をするのである。
<今作は愛した祖母のポーランドの家を訪ねる二人が、夫々の哀しみを抱えつつも自らのルーツを旅する中で徐々に癒される様を描いたロードムービーである。
今作を観て勝手に思ったのは、ベンジーとデヴィッドは自分達の祖先が受けた仕打ちを実際に目で見て自分達が抱える哀しみはそれに比べれば大したことではないと思ったのではないかなという事と、人の痛みが分かる人間は、他者に対しても優しくなれるのかもしれないなあ、と思った作品である。
ベンジーを演じたキーラン・ランキンの、悪戯っ子の様な顔や、悲しみに暮れる顔や、自分の意志を恥じる事無く皆に告げる姿は良かったなあ、と思った作品でもある。>
不思議な余韻が残る本当に素晴らしい傑作
この作品はユダヤ人の歴史を扱っているので、重い話ではありました。
だけど自分は前向きなメッセージも含まれているなとも感じました。
この作品で1番感じたことは過去と向き合うこと。
歴史や、自分の過去と向き合うということは、未来へと繋がっていく。
この映画に出て来る、ユダヤ人の歴史。
これも歴史を振り返ることで、同じ悲劇を繰り返さない、ということに繋がると思います
また、自分自身との過去と向き合うことで成長することがあるとも思いました。
そして人の温かさもたくさん詰まっているように感じました。
ツアーのメンバーがみんな良い人で、最初の銅像のシーンや、
デヴィッドとベンジーが電車を乗り過ごした時も優しく出迎えてくれたシーンは
人の温かさが伝わってきました。
お別れのシーンは悲しかったけど、みんなの優しさが伝わりました。
劇中で、
人は完全に幸せになんてなれない
というような(間違ってたらすみません)
セリフが出てきました。
今考えてみると今まで生きてきて、悩みがなかった時ってほとんどなかったように感じます。
でもそんな時でも家族や友達、先生が支えてくれていたから大丈夫だったんだなと改めて気づかせてくれました。
ジェシーアイゼンバーグさんは演技も上手いし、こんなに素晴らしい映画を撮ることができるなんてとても凄いです。
また、助演男優賞にノミネートされたキーランカルキンさんの演技も良かったです。
特にラストの何とも言えない表情は素晴らしかったです。ベンジーにはこれから、幸せな人生を送って欲しいです。
重くなるテーマを軽やかに笑いをまぶして結果を閉じない構成。凄い
アイゼンバーグの俳優、脚本家、監督としての才能とセンスと思考に感動し、a real pain「めんどっちい奴」であるベンジー役のカルキンに魅入られた。笑って笑って涙が出て笑って泣いてとても忙しかった。アイゼンバーグの台詞には思いと情報が詰まっていたし、ベンジーは人たらしで誰もが好きになってしまう。言いにくいこと、ここではこんなことしてはいけないのでは?という思考回路に慣れている私達(日本人とか?)のほっぺたを気持ちよくひっぱたいてくれた。
映画で流れる曲はほぼ全てショパンのピアノ曲。誰もが知っている曲ばかり。感傷に流されず頭脳は冷静に心臓はドキドキさせながら考える空気を与えてくれた。
ポーランドの町の名前「ウッチ」を聞いた瞬間に映画「家(うち)へ帰ろう」が頭に浮かびウッチへいつか行きたいと思い続けいまだ叶えていないことを思い出した。
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(2025.03.03.)
ベンジー(キーラン)!アカデミー賞の助演男優賞受賞、おめでとうございます。あなたにふさわしい1等車なのだから逃げないでください!
心に残る良作です。オススメします
名優ジェシー・アイゼンバーグが監督・脚本・製作・主演 ,
キーラン・カルキンが従兄弟ベンジーを演じ、第82回ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞。
第97回アカデミー賞でも助演男優賞にノミネートの話題作です。
性格の全く違う兄弟のような従弟同士がポーランドのツアー旅行に参加するロードムービーになります。
予告編では兄貴分のベンジーとのドタバタコメディーの雰囲気もありましたが、実は全体的にドキュメンタリー調のしんみりした友情物で
二人の名演技が光る作品で心打たれました。ドラマチックで泣けるシーンがあるわけではないですが、感受性の強い兄貴分のベンジーと彼を愛しているが憎む気持ちもあるデヴィッド。映画が見終わった後もこの二人の人生を見守りたい気持ちになりました。おススメ度は満点です。
タイトルなし(ネタバレ)
従兄のデヴィッドを翻弄する独特な感性を持ったベンジーだが悪気は無い。ツアーの人達は一時的な付き合いだから「正直で良い奴」と、彼との出会いに感謝しているだけかも。
デヴィッドが家庭を持ったから疎遠になったのか? 孤独を感じて自殺未遂したのか?
そう、自殺未遂さえしなければ。
クラシック音楽が全体に流れ、観客もツアーに参加した気分に少しなれる(?)ロードムービー。
※玄関に石は置かない方がいい
疎ましいあいつ
疎ましいあいつは、兄弟や同僚のような身近な人から、ユダヤ人やツチ族フツ族のような民族のくくりにまで及ぶ。嫌なあいつに対する反感は、究極的には600万人の大量殺戮のような狂気に至る。ネットを見れば、疎ましい中国人や韓国人、クルド人をたくさん見かける。これらは「疎ましい自分」の投影である。
本作では、疎ましいベンジーと、歴史的に嫌われてきたユダヤ人が並列に描かれる。ベンジーはおそらく発達障害を抱えているし、生きづらさから自殺未遂も起こしている。デヴィッドは、帰りの空港で次々と問題を起こすベンジーを抱きしめる。
ここら辺の感情の機微や関係性の繊細さの描写が素晴らしい。
なにげにカメラがとても美しい。
ショパンも印象に残る。
ハラハラするけどいい話
Tzvi Erez演奏のショパンと共にワルシャワの街並みや古い街並みなど自分も旅してる気がして楽しめていたが、ホロコーストに関する場所ではズシンと心が沈んだ
対照的な二人の関係はハラハラさせられるけど、自分の友人を思い出したりして人ごととも思えなかった
「祖母のルーツをたどる」といいつつ実は…
大好きな祖母のルーツをたどる旅、ではあり、その祖母のエピソードは2人から語られるが、祖母の写真も回想シーンもない。
これは「祖母」はキッカケというか2人を旅に連れ出す「言い訳」に過ぎず「目的」は別にあるのだろう。
主人公デイヴの目的は、従兄弟ベンジーを助けたい、一方ベンジーもデイブを助けたい、と。
どうしても「主人公目線」で見てしまい、滅茶苦茶なベンジーに翻弄される主人公という構図、ベンジーを助けようとしてるのに、何だよその態度、と見えるが、
「ベンジー目線」になれば、主人公デイヴの「問題」が見えてくる。
さらにその問題はデイブだけでなく、誰しも抱えていて、社会全体の問題、と監督は言いたいのではなかろうか。
それを本作では説教臭くなく、重くなりすぎず、ホロコーストに軸足を置くこともなく、絶妙な軽さ、優しさで包まれた作品になっている。
そういう意味では「サイドウェイ」に似てるかも。男2人のロードムービーで一方が破天荒で、コメディ色もあって…と。
旅感の
心にじわじわくる、とっても良い作品
好きな俳優さんのジェシー・アイゼンバーグが監督、脚本、製作、主演の作品、観て良かったです。
原題の「リアルペイン」は面倒なやつみたいな意味で、ベンジーがそんな人なのですが、観ていってると直訳の「本当の痛み」のようにも描かれているようでした。
「痛みを抱えた面倒なやつ」って感じかと思いました。
面倒な人だけど、人一倍繊細で痛みにも敏感なベンジー。
そのベンジーを疎ましく思ったりもするけどベンジーが大好きなデヴィッド。
2人の仲の良さがステキでした。
ユダヤ人解放から80年の時に公開の今作、その悲しい過去を改めて突きつけられましたが、同じルーツの人達との交流のシーンで救われた気持ちになれて、実際辛い事も誰かと共有する事によって救われるのかもと思えました。
ラストに近づくにつれて心にじわじわくるものが大きくなっていきました。
泣かせる作りじゃないし、ここが泣きどころってシーンがあったわけじゃないけど、何かが涙腺を刺激してて、でもその何かはこれって表現しにくくて。
デヴィッドと対比されていたベンジーのラストシーンに寂しい気持ちになれましたが、エンドロール後の雑踏の音に空港でのベンジーを想像して、ベンジーの希望が見える未来を願って心地良い余韻で観終われました。
感じる「痛み」は強烈だが、自分の持っている痛みが不思議と和らぐ
人間は一人で生きられないという呪縛
ロードムービーというジャンル?
タイプが違うかも
主人公は3週間違いで生まれた従兄弟のデビットとベンジーの2人。ポーランドを巡るツアーに参加して祖母が住んでいた頃の家を訪ねる。
ツアーを通して徐々に2人の性格や社会性、生活が語られる。
自身のルーツを訪ねる事は自分へのつながりを知り境遇を考える事になると思う。
奇跡的に生き抜いた祖母がいたから今の自分がいる。
旅を通じてポーランドの街並み、地方の風景、歴史的な建物、遺跡を見ることができます。
兵士の像の前での事、列車の中での出来事、墓地での行い、レストランでの態度、バスの中での涙、随所に感情に問いかけてくるシーンがあります。
基本的人権の尊重と多様性は理解している。
当然だと思う。
ひとり一人、それぞれの人生があって同じようでも違ってて、羨んだり妬んだり生き辛さを感じたり。
そうして今を生きて行く。
人生は上手く行かないもの、思うようにはならないものだと思っています。
時代は人に寄り添う優しい社会であれと言う。
でも人の気持ちを慮る事が苦手な私
見終わって正直言って2人の思いが
「う〜ん?解らない」
ドキュメンタリータッチの面白さもあるっ!
ヨーロッパの街並み、戦争の歴史、そういう事実をうまく作品の中に嵌め込んでいて、ドキュメントを見ているような面白さがあるのがいいね。映画だということを忘れさせるような。
特に収容所を見学する場面では、ほとんどセリフを使わずに様々なメッセージを与えてくれていてそういう作り込みも良かった。
冒頭のデヴィットとベンジーの多弁なやり取りも作品に1つのテンポ感を与えていてイイ感じ!
ツアー中のベンジーの行動が結構「ムカつく」んだよね。うわー、こんなんいたら嫌だあ!と思うと少しイライラしたなあ。合わせてデヴィッドの表情に感情移入しちゃったしね。これも映画の質の高さと言われればそうなんだろうな。そんなことを思いつつ鑑賞してくんだけど、BGMのショパンがいい緩和剤になってて心が和むよね。個人的に今クラッシック欲求高いのもあるからかもだけど。
後半はドンドンストーリーが良くなって(良いという表現は的確じゃないかも)作品世界に引っ張られていったなあ。同じツアーの人々とも揉めたりしなくて、そういうサブストーリーはカットして本筋一本に絞っているのも良かった。だから1時間半程度にまとまりつつ、良い仕上がりになったのかも。
製作陣にエマストーンがいるらしいね。マルチだよなあ。マルチといえば、主役のジェシーアイゼンバーグだよね。ゾンビランドシリーズは良かったなあ。でもなんかヒーロー物で悪役もやってなかったっけ?雰囲気は一定だけど役柄は幅広いよね。
あえていうなら、スタッフロールでショパンから明るい曲に変わったのがもったいないかな。あのままショパンで終わって良かったのに。この部分と途中ベンジーにイラついた部分で4.8くらいかなあと思ったけど、繰り上げて★5で。今年初の★5は少しオマケで。
完全に★5だあ!と断言したいよ、早く。
2025年劇場鑑賞6作品目
彼らと一緒に旅をした気分になる
正反対の性格の男たちのバディムービーとしても、ポーランドのホロコーストの史跡を巡るロードムービーとしても楽しめる。
兵士達の像の前で、記念写真を撮る場面では、人付き合いが苦手で内向的な主人公と、陽気で社交的な従兄弟の性格の違いが明確に分かるようになっていて面白いし、2人が列車で降りる駅を乗り過ごすくだりでは、チグハグながらも仲の良い両者の関係性を窺い知ることができてホッコリさせられる。
自由奔放で、その場の空気が読めない従兄弟は、厄介なトラブルメーカーでもあるのだが、ユダヤ人収容所の跡地に列車の1等席で向かうことや、墓地で死者に敬意を払わないことに異を唱える彼の言い分は、至極真っ当で、単なるクレーマーではないことが分かる。
成功したユダヤ人達の食事の席から立ち去ったり、収容所を見学した後に涙に暮れている姿などを見ると、彼が、単なる陽キャではなく、感受性が豊かで傷つきやすい性格でもあることが分かり、マリファナに頼ったり、自殺未遂を起こしたりした理由も、そんなところにあるのだろうと納得することができた。
そして、そんな「強そうで脆い」という複雑なキャラクターを、自然に演じきったキーラン・カルキンは、やはり良い役者だと思えるのである。
ラストで、そもそもの旅行の目的であった祖母の家の訪問が、玄関先を見ただけで終わってしまったり、ようやく地元の人と交流できるかと思ったら、素っ気ない会話で終わってしまったりするところは、何だか拍子抜けする反面、「現実ってそんなものだろう」というリアリティが感じられる。
ただ、従兄弟の寂しげな佇まいが印象的なエンディングについては、しみじみとした余韻が味わえるものの、最後にもうひとひねり、ドラマチックな展開があれば申し分なかったのにと思ってしまうのは、やはり、欲張りすぎだろうか?
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