リアル・ペイン 心の旅のレビュー・感想・評価
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誰にも言えない痛みを抱えながら、それでも人生は続いていく
旅好きの私にとって、ようやく「観たい!」と思える映画が公開された。
40代を迎えた従兄弟のデヴィッドとベンジー。幼い頃は兄弟のように育った二人も、大人になった今ではすっかり疎遠になっている。デヴィッドは、破天荒でトラブルメーカーなベンジーに振り回されながらも、どこか羨ましく思っている。一方のベンジーは、周囲には陽気にふるまうものの、実は誰よりも繊細で、人の痛みに敏感な一面を持っている。
そんな二人が、亡き祖母の遺言によってポーランドのホロコーストツアーへと旅立つことに。歴史の重みを感じながら過ごす時間の中で、彼らはそれぞれが抱える不安や葛藤と向き合っていく。デヴィッドは軽度の強迫性障害に悩み、ベンジーもまた心に傷を抱えている。年齢を重ねることへの漠然とした不安、誰にも言えない心の痛み—それはきっと、誰にでも共感できるものではないだろうか。
人はそれぞれ違った「生きづらさ」を抱えて生きている。
「もっと大変な人がいる」と言われたとしても、自分の苦しみを他人と比べることはできない。でも、違う痛みを想像し、寄り添うことはできるはず。ショパンの旋律が静かに心を癒してくれるように、この映画もまた、観る人にそっと寄り添い、優しく語りかけてくれる。
軽妙なユーモアと、胸を打つ切なさが見事に共存する脚本。くすっと笑ったかと思えば、ふと心を揺さぶられる瞬間が訪れ、気づけば深く考えさせられている。
旅の醍醐味とは、美しい景色や美味しい食事を楽しむことだけではない。そこで生まれる出会いや経験が、私たちの心に刻まれることこそが、旅の本当の意味なのだと思う。デヴィッドとベンジーにとっても、この旅は祖母との思い出を辿るだけのものではなく、自分自身を見つめ直す時間になったのだろう。
観終わったあと、そんな「心の旅」について考えずにはいられない作品だ。
旅のリアル
いとこ同士の二人プラスアルファの旅は、眼を見張るような出来事も起こらず淡々と過ぎ、あっけなく終わりました。
それがリアルでしたし、それがために、二人の「内なる旅」とも言える心の葛藤、傷つけあい、慰めあいが、鮮明に、時に激しく、そして爽やかに映し出さられていました。
また、世界が抱える大きな痛みを引き起こした現場へのツアーを一緒に観てまわる感じにさせてもらえた映像は新鮮でした。
他と比べようのない痛みを負った先祖たちを想いながらも、自分たちも生きにくい現代で、ケアしきれない痛みを抱えて過ごしています。自身の痛みに苦悩しながらも、人の痛みに人一倍想像力を働かせるベンジーの姿は、痛々しくもありましたが、多くの人の共感を得ていくのも納得できるものでした。そんな彼を心配して寄り添うデイヴも平穏な暮らしのなかで生きづらさを抱えていましたよね。
個人的には、ベンジーのガイドツアーへのアドバイスはすごくしっくりきましたし、参考になるものでした。
そして旅の終わりには決まって寂しさが付き纏います。それがベンジーの最後の行動につながったんでしょうか。
その後の彼が少し気になる余韻を残す終幕でしたが、何かスッキリした気分で席を立つことができました。
ユダヤはそれほど関係なく精神病の話
深い痛み
仲良し従兄弟のが亡くなった祖母の遺言でポーランドツアーに参加し、ツアーで一緒になった人達と交流しながら、それぞれの持つ痛傷みに向き合う力を見出して行くというロードムービー
デヴィットとベンジー
従兄弟同士の2人の関係
互いに大事に思って愛しやまないが、
一見明るく周りの人を巻き込むのがうまいベンジー
だが、躁鬱なところがあり突然感情的になり周りを戸惑わせヒヤヒヤさせる
明るく人に好かれるベンジーを羨ましく思う反面、躁鬱を繰り返すベンジーに手を焼き、憎いとさえ思うこともあるデヴィット
しかしデヴィット自身も自分の強迫性障害があり、行きづらさを感じているといった2人の感情がよく出てて、物語の抑揚はないがその辛い感情、痛みがよく伝わる
誰しもいろんな「いたみ」があり、そんな「いたみ」と向き合わなくてはならないし、そう簡単なことではないのもよく分かる
それに加えて残酷なシーンはないものの、ユダヤ人の悲劇をも静かに痛感させられる場面もあり、より感情を揺さぶられ心に響く作品に思う
バカリズムさんの脚本みたいな映画(笑)
【ポーランド3日間 ユダヤ人強制収容所見学、英語話者の歴史専門家によるガイド付き、ワルシャワ現地集合】
このツアーに参加したアメリカ人の中年男性2人(いとこ同士)が主人公。出発する空港での待ち合わせから、ふたりのキャラの違いが浮き彫りにされる。道路の渋滞で乗り遅れそう!と必死にベンジーのスマホにメッセージをひたすら送り続けるデヴィッドと、それに全く気づかないベンジー
飛行機で一睡も出来ず、ようやく到着したワルシャワのホテルでシャワーでも浴びようとするデヴィッドと、半ば横入り的にデヴィッドのスマホを奪い、彼のスマホで音楽を聴きながら先にシャワーを浴びるベンジー
(そしてスマホが水没…かなと思ったけど、そこはセーフ)
ホテルロビーでのツアー同行者との顔合わせ。強制収容所見学も組み込まれたツアーだけに、何故このツアーに参加したかをそれぞれが自己紹介とともに語る
外国の団体ツアーってそうなんだ!と発見。日本の団体ツアーは参加者同士の横の繋がりを促すイベントは無い。添乗員が旅行の注意点をそれぞれに集合した時点で説明するだけ
確かに横の繋がりって、日本人の気質から言って面倒に思うけど、最低限メンバーのプロフィールくらい知っておきたいとも思う(個人的見解)
ゲットー蜂起を称えた大きな像の前での記念写真、それを各々のスマホで撮影する羽目になったデヴィッド(笑)
昼食時、デヴィッド以外がひとつのテーブルに付いて、何となく仲間外れみたいになった時、サッとデヴィッドの真向かいに座って食事を始めるベンジー
「あっちに座るかと思った」
「…え?なんで(笑)」
こういうことって、結構ある
ひとつひとつは大したエピソードではないけど、そうだな〜、バカリズムさんの脚本(ホットスポット)みたいだな
凄い事件が起きるわけではないけど、ちょっとしたニュアンスの連続でふたりの交流が描かれる
ラスト、二人で訪ねたおばあちゃんが暮らした家も、感動のエピソードがある訳でなく。むしろちょっとした行き違いが生じるくらいで、泣けるようなシーンもなく、むしろ後半はちょっと眠くなったくらい
強制収容所に行く為の列車の一等車、動物が乗る貨車に押し込められて運ばれた先人達の労苦を思えば、乗りたくない!と拒否
ユダヤの偉大な故人の墓の訪問には、その歴史や背景を表す数字より、故人に思いを馳せることが必要なんだ!とブチ切れる
列車で眠りこけたデヴィッドが寝ぼけて間違えて、違う駅で下車しても止めなかったり
ベンジーの周りを困惑させるエピソードは数しれず
でも彼の、人の懐にするりと入り込むキャラクターゆえに、嫌われずに済むギリギリの人生だったんだろうなと推察、イヤ、日本だったら確実に迷惑な奴認定されるな
強制収容所見学シーンはそんなに時間をかけていない。感傷的になるような演出もなく、そういう背景の施設が今も遺されていること、遺された大量の靴がその主がいたことを教えてくれる
感動作ではない
わたしはちょっと眠くなったくらいだし
ツアー参加者とのふれあいで、何か特別なストーリー展開が生まれるわけでもなく
帰国して、デヴィッドは家族の待つ家へ
家に持ち帰った小石、彼はじきにその存在を忘れてしまうのだろうし
ベンジーは空港の待合室でもう少し人間観察する、と残って
淡々と終わる映画だけど
何かを心に遺してくれる映画
ふと気づくと、玄関の前に転がっている小石のように
しんどくても自分を抱えて生きる
個人的な思い出として、昔ワルシャワに数日間滞在したことがあり、自分の思い出を辿ることができたら、と思って映画を見ました。
ずいぶんと考えさせられる映画でした。
主人公のデヴィッドは映画冒頭で空港へ向かうタクシーの中から繰り返し繰り返し、旅の相棒である従兄弟のベンジーに電話をします。電話をするデヴィッドが神経質な危ない人に見えたのですが、話が進むにつれてデヴィッドは普通の人で、相手のベンジーの方が問題であることが判ります。
ポーランドでのナチスによるユダヤ人迫害を知るツアーで、デヴィッドはベンジーに振り回され続けます。ベンジーは自分の感情に正直な人で、ツアー参加者と衝突しそうになりながらも、正直であるがゆえに人を惹きつけ、愛される魅力を持ちます。
ツアー参加者と別れるシーンで、彼らはベンジーに感謝し別れを惜しみ、一方のデヴィッドにはベンジーのオマケのような対応をします。
その日の前の夕食のシーンで、デヴィッドはベンジーに対して持っている感情をツアー参加者に明かしますが、それは嫉妬と羨望が入り混じった複雑なもの。自分の感情を赤裸々に表現したのですが、ベンジーがピアノを弾き始め、注目を持っていってしまいます。
それでもデヴィッドはベンジーと葉っぱを吹かし、おばあさんの家でベンジーを真似て石を置き、旅の終わりではベンジーを自宅に招き、ベンジーの心に近づこうとします。
ベンジーとの旅で傷つくこともあったものの、思い出を作ったデヴィッドは家族の待つ家に戻り、旅を終えます。
一方のベンジーは、映画の終わりで一人空港に佇み笑顔を浮かべます。
ベンジーはまた、一人に戻ってしまったのです。
ツアー参加者を楽しませ感謝されたベンジーでしたが、旅を強く印象付ける存在としてありがたい、でも彼のような存在は日常生活で刺激が強すぎ、疲れてしまうのです。
ベンジーと辛抱強く付き合ってくれるのは、亡くなったおばあさんとデヴィッドだけ。
デヴィッドから家に誘われても、デヴィッドの家族を苛立たせて関係を壊してしまいそうだから訪問を断った、自ら孤独を選ばなければいけないのがベンジーの日常であり、彼が抱えている苦悩なのでしょう。
映画ラストのベンジーの笑顔は、自己憐憫の気持ちが表れていたように思います。
傷つけ合いながらも相手を思いやる、生きていくのは切ないものだ、そんな気持ちになりました。
残された者の気持ちは共有出来ない悲しさかな
ユダヤ、ホロコーストから祖母ロス、近い境遇を過ごしても当然異なる感受性の対比に惹き込まれる。ベンジーの今や祖母との時間は描写ゼロ、語りも控えめにして受け手に委ねている部分が想像掻き立てる→物足りなさももちろんある
大切、大事にしていた自分の感情の共有は極めて困難で、他の参加者との部分的共有でさらにクローズアップされたところが切なすぎる。
個人的すぎるが自宅介護をほぼ最期までしていた時、知ったかぶりで共感かけてくる人がいると疎外感を強く感じたことを思い出す。
今作はユダヤ作品ではなくイントロだけと割り切ったと感じたのでそこを重視する方には向かないでしょう。2人のやり取りのカットの切り替わりなどもテンポ良く観ることが出来ました
主役コンビがとてもチャーミング !
(車中行程以外も含めて)ロードムービーは、
スケアクロウ
ペーパー・ムーン
スタンド・バイ・ミー
レインマン
テルマ&ルイーズ
邦画では、
幸せの黄色いハンカチ
とシアターで観た傑作がいくつかありますね。
登場人物のバックグラウンドが徐々に明らかにされ、
道中の連れとの衝突や分かち合いがあって、
万国共通の人情が語られ、笑いと涙。
あぁ人間って・・・
というストーリーだと私の好みです。
本作もその流れで進みます。
あれっ、これまでと違うかなと思ったのが、シークエンスが際立っていること。
ジェシー・アイゼンバーグ、大健闘ではないでしょうか。
「fucking !」を連発するニューヨーカーの代表選手ベンジーは、
ツアー仲間を前に暴言を吐き散らし(誰もが思うホンネか?)、悪態をつきますが、
ギリギリのところで回収をはかり、人たらしぶりをいかんなく発揮します。
他方の神経過敏なデヴィッドはそのプロセスにハラハラドキドキし、
自身の恥部を晒されたように感じて怒りを覚えてしまいます。
主役コンビはいい大人で(一方は髭まで蓄えて)、
それでも、そこかしこの言動や考え方が幼く可愛くてクスッと笑えます。
ベンジーの語る人生観、ホームランではありませんが、
クリーンヒットがいくつかあります(字幕翻訳の松浦美奈さんナイスです!)。
ショパンの優しい調べ。ロケ地の美しい田園、墓地や街並み。
デヴィッドとベンジーに、同い年の従兄弟と私をシンクロし、
今はなき田舎で、仲良く遊んだ子ども時代を懐かしく思い出しました。
ん? キーラン・カルキン助演? キャストロールの最初だったような???
ユニークな作品。ゲップは駄目
ユニークな作品だったが、素晴らしかった。
確かにホロコーストツアーは重いが、ベンジーの明るさ、ユーモアが参加者の場を和ませた。しかし、心の闇を抱えている。
ベンジーとデイヴィドのテンポあるセリフがこの作品を盛り上げた。役者の演技も◎。
ただ、あるシーンでベンジーがゲップをする場面がある。さすがにアレはマイナス。
「今ある痛み」には鈍感な主人公
・終わり方が雑
主人公が成長したわけでも変化したわけでもなく、空港でニヤニヤ「変人観察」をするというラスト。「痛み」は? 他者や過去、さまざまなルーツに対するリスペクトは? 主題を小馬鹿にするようなラストに疑問を感じる
・ストーリーの起伏がない。内容に比して長い
心の旅を描いていることは理解したが、ストーリーの起伏のなさや主人公の情緒不安定さについていけず。
・「今ある痛み」には鈍感
主人公は周囲に対して、過去の出来事や自分が感じたい痛みには敏感であるが、自分の目に映らない現実には鈍感である(感傷から玄関扉の前に石を置いたりはするが、そこで生活する人の日常の危険には鈍感)
総じて、脚本が失敗している。
もし真面目な作品にしたいのであれば、よりテーマを強調して扱うべきだし、コメディにしたいならより登場人物のからみや魅了を引き出すべき。
同じテーマを扱うなら、ドキュメンタリーで撮る方が有意義だと思う
コメディにちらっと覗く痛みの描写がうまい
ベンジー役のキーラン・カルキンは、マコーレー・カルキンの弟らしい。そういわれれば似てる。
ガイド役のウィル・シャープは、「エマニュエル(2024)」で欲望が枯れたというケイ・シノハラを演じた人なんだけど、映画監督でもあるんだね。
字幕翻訳は松浦美奈さん。『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』から二連続。
兄弟のように育ったいとこ同士のデイヴとベンジーだけど、近頃は疎遠だった。どうやら40過ぎらしい。わたしと同世代。亡くなったおばあちゃんの遺言で、彼女の故郷ポーランド行きのツアー旅行に参加する。英国人ガイド(非ユダヤ系)が主催?するツアーで、ソマリア虐殺をサバイブしてユダヤ教徒になった人や、最近離婚したアメリカ人女性や、テキサス?のアメリカ人夫婦と、強制収容所や墓地を巡る。
ベンジーは明るくて陽気なんだけど、躁鬱ぽいってゆうか、不安定な感じがする人。
デイヴは常識的なふるまいをする人だけど、こちらも何らかの薬を飲んでいるし(のちにOCDとわかる)人付き合いは苦手そう。
ベンジーは人好きするらしく、みんな振り回されるけど二人を比べると、ベンジーの方が好かれる。デイヴはそれをわかっているので、憧れつつも、自分にないものを持っているのに何であんなことした?という言うに言えない気持ちがある。
どうやら、ベンジーは数か月まえに睡眠薬の過剰摂取をしているらしい。
定職もないっぽく、母親の家の地下で暮らしている。
いとこに限らず、兄弟や友人でもありうる、愛憎入り混じるふたりの関係が、わざとらしくなくさりげなーく描かれていて、とてもいいと思った。
主軸は、”本当の痛み”を抱えながら生きているいとこ同士のロードムービーであり、ポーランドのユダヤ人の歴史をなぞるロードムービーでもある。金は金持ちのヘロインだからとか、数字や事実は控えめにして人と繋がるべき(どっちも言い回しはうろ覚え)とか、セリフも強くてよかった。
墓地に石を置くがなんなのかはじめはわからなかったけど、ユダヤの習慣で、墓地に来たよと死者に伝えるための風習との事。おばあちゃんのかつての家のまえで、2人が石を置いてたら、地元の人に、住んでる高齢女性がケガするからやめれって言われるところで判明した。
基本はコメディなんだけど、ほろっとしたり、ちくっとしたりする。
笑いのなかに、差し挟まれるささやかな痛みの描写が、うまいと思った。
劇伴はほぼショパンのピアノ。
ベンジーが弾いたのはショパンじゃなくて「TEA FOR TWO」。
空港でぼーっとするベンジーで始まり、再び空港でぼーっとするベンジーで終わる物語。
何がベンジーを悲しませるのかは描かれない。
たぶんそれは、人とわかちあっても癒えることのないなにか。
自分だけが感じて生きるなにか。
しんみりと
ジェシーアイゼンバーグが、監督、脚本、主演 カルキン君の弟のキーランカルキンと従兄弟を演じる。
彼らのルーツであるポーランドへのユダヤ収容所巡りツアーを参加 亡くなった祖母の家も見に行く。
対象的な2人の心の旅です。他の参加者の皆様も個性的でした。ラストはまたそれぞれの世界へ
アイデンティティーの大切さ
「リアル・ペイン 心の旅」と小泉堯史監督作品の「雪の花 ともに在りて」とを比較するのは間違いだと思いながらも比較してしまう作品でした。
両作品とも淡々と物語が進んで行きます。
特に大きな見所はないままに終盤を向かえます。
しかし「リアル・ペイン 心の旅」違いました。
主人公のディビット演じるジェシー・アイゼンバーグとベンジー演じるキーラン・カルキンの演技が説得力がありました。
両作品とも観る前に予備知識は全然学んでいません。
観賞しようとした動機は「リアル・ペイン 心の旅」はポスターに惹かれて、「雪の花 ともに在りて」は出演している俳優陣に惹かれての観賞です。
両作品ともテーマははっきりしていますが「雪の花 ともに在りて」は個々を都合よく繋げただけで薄っぺらく感じました。
「リアル・ペイン 心の旅」はテーマを深掘りしながら訴えていく作品でした。
ラストの空港シーンにはいろいろと考えさせられました。
日本においても同様な趣旨が存在する映画。おススメ。
今年50本目(合計1,592本目/今月(2025年2月度)13本目)。
ユダヤ人、あるいはナチスドイツの迫害や、ほかのいわゆる(他の政策による)迫害に何らかの関連を持つ当事者が、ポーランドを舞台とする現地ツアー旅行に申し込んで当時の面影をめぐる旅行に出かけ、色々な気づきに発見する趣旨の映画です。
このユダヤ人迫害問題といえば、一般的にはナチスドイツと絡めて語られることが多いし(今週でいえば、「ステラ~」があたる)、一般的にはそうですが、この切り口も良かったな、といったところです。
また、映画内において、「当時の迫害を受けた人がこんな1流のツアー等経験できるのではないのに、経験ツアーといはいえ特急の上級席を取ったり、1流の食事店を訪れるのはおかしい」という趣旨の発言で反発するシーンが存在します。このことは、日本は確かにユダヤ人の迫害問題の加害国でも関連国でもないものの、第二次世界大戦を経た日本においては、その被害となった広島・長崎、あるいは沖縄(ほかにもありましょうが、一般的に知られるのはこの3つ)において、修学旅行(あくまでも「学問・学業の一つ」の扱い)や、大人向け観光ツアーでも「その趣旨をある程度考慮する趣旨のツアー」においてはこれらは一定の配慮が必要であることを考えると、それら「特殊な観光地」においては日本においてもかかる趣旨は共通するところであり、一見、日本とは文化やたどる歴史ほかが違ったという事情で無関係と思われる方も多いと思いますが、日本においても上記のような観光地においてはやはり同じような趣旨が妥当します。そしてそのことは、例えば県民や県の出身者においては程度の差はあれ気にするところである一方、日本においては日本人であれば中学、あるいは(事実上の義務教育である)高校まで含めれば常識扱いで、また外国人観光客についてもこれらを観光するツアーにおいては何らかの説明があるのが普通であり、度を越えた行為はほぼ見られない一方(ただし、いわゆる記念碑ほかに落書きをするといった事件は時々報道されるが)、映画内で示されるような「そこで一流の食事をしている状況か?」というような(ある程度、度を越えた)問題提起もある程度理解できる(←広島のそれについても、原爆ドームから少し離れれば歓楽街のため)といった部分は、たどった文化や歴史は異なっても、日本・ユダヤ関係国がたどった事情は一部似た事情があり、その部分において、日本では共感しやすい点があるのかな、といったところです。
映画「それ自体」は完全にフィクションですが、映画内で実際に現地を訪れることや(このような企画自体はしばしば募集されている。史実通り、迫害によって当事者が他国に住むようになったため)、関連する施設、ユダヤ人が当時集まっていた街ほかを訪れる点等は、それらの観光地の紹介について等は史実通りであり、その限りにおいてドキュメンタリー映画の部分も持つ映画です。したがって、映画館でみる作品に何らかの意味で娯楽性を求めるならおすすめできるものではありませんが、今週(2月2週)の中では、1週間遅れではありますが、正規公開日の「ステラ~」との関連として一緒に見るのも良いのかな、といったところです。
採点上特に気になる点まではないのでフルスコアにしています(ただ、映画はこうした真面目な問題を扱っているのに、マリファナがどうだのといった、やや違法性が強い話題に飛ばす点が(映画のストーリーとは関係しない点であり)ちょっと残念かな、といったところです(ただ、薬物に関する法規制は国によってバラバラだし、そこは仕方がないと思える))。
人の居場所って
テーマは重いのに、何故か爽やかで清々しい気持になる、後味のいい名作
主人公2人の内の1人デヴィッドを演じ、本作の監督でもあるジェシー・アイゼンバーグさんの演出が秀逸で素晴らしい
かつて観てきた映画には出てこなかった美しいポーランドの風景や街並み
全体的に静かな中で全編通して流れるピアノの旋律がとても綺麗で印象的
そして一番の見どころは本作にて今年の第97回アカデミー賞で助演男優賞にノミネートされているベンジーを演じたキーラン・カルキンさん、躁鬱かげんや感情を爆発させるあたりなど、演技とは思えない凄まじい迫力に圧倒され素晴らしいです、オスカー獲れるといいですね
アウシュビッツ捕虜収容所内を見学するシーンでは毒ガス室や焼却炉などが生々しく出てきますが、全く悲壮感も暗さも感じず見易かったです
ベンジーがツアーガイドに怒りを爆発させるくだり、「そんな教科書で読めばわかるような解説じゃなくて、現地の人達と会って話をしたり、聞いたりできる時間がある、とかでないとこのツアーに価値はない」といった指摘をするなどヒヤヒヤするシーンも多いけど、とても素直で真っ当な意見、世の中のいろんな事が嘘っぽく見えてとても生きづらさを抱える彼を必死で受け止めようとするデヴィッド、そんな2人のとても切ない心の旅を描く、この先長く愛されていくであろう素晴らしい名作の誕生です
何気に凄い映画
新しい技術や斬新な切り口がなくても、まったく新しい映画は作れるのである。
さり気なく穏やかな小品であるので、この映画の凄さが気付かれないのが心配だ。
ただただツアーに参加して、その短い期間をともにし、そして旅を終わりただただ普通に日常に戻るだけである。
そこにあるのは、どこにでもある小さなトラブルやさり気ない会話だけである。
ベンジーが抱えた心の問題は何も解決した訳でなく、オープニングの空港ロビーとエンディングのロビーのベンジーに大きな変化はないだろう。
ただただ旅の思い出が積み重ねられただけだろう。
ただベンジーがまた苦しみに囚われたとき、その思い出が彼を思い止まらせる解決策ではなくとも、そのひとつになるかも知れないのだ。
人が人に出来ることは、デヴィッドがベンジーに出来ることはそれぐらいのことしかないのだ。
それは悲しく、また愛おしい。
用意された1号車とたどり着いた1号車は同じようで違うのである。
置かれた石は人によっては、ただの石ころであったり、邪魔なものであったり、大事な紀念碑であったりする。
自分たちのルーツを巡る旅を通して心を通わす従兄弟の物語
内容が良さそうであるので鑑賞。
ユダヤ人であるデヴィッドとベンジーの二人。性格が正反対の従兄弟が祖母の遺言に従い、自分たちのルーツであるポーランドのアウシュビッツを巡るツアー旅行に参加する中で、自分を見つめなおし、生き方を見つめなおし、心を通わせる物語。途中ツアー客に気まずい思いをさせたり自由奔放にふるまうが、どこか憎めずムードメーカーでもあるベンジーに困惑しながらもどこか羨ましく思う気持ちもある不器用なデヴィッド。
旅をとおして二人の距離が縮まっていくのだが、特段大きな出来事が起こるわけでもなく、ショパンの音楽をバックにたんたんと綴られているのが妙に心地良い作品となっている。
ツアーの他の参加者も含め、みんな悩みを抱えながらも前を向いて歩こうとしている姿に共鳴できる映画でした。
全209件中、61~80件目を表示