リアル・ペイン 心の旅のレビュー・感想・評価
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地下2階へのロードムービー
公開3日目の週末、昼の回。前評判の高い映画だから混んでいるかと思ったら、有楽町の映画館は意外にも空いていた。
見終わって、すぐに言葉が出てこない。長く瞑想をした後のように、豊かな時間を過ごした感覚がある。ストーリーはシンプルで、わかりにくいところは何もない。
ただしどう受け止めたらよいか、なかなか言葉にできない映画だと思う。
ポーランドのホロコースト史跡を巡るツアーに参加した、親しい従兄弟同士のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)。
ツアーのメンバーは、ユダヤ系アメリカ人、ルワンダ難民、イギリス人のガイドなど、多様なバックグラウンドを持つ7人の小グループ。
それぞれが知的で寛容で礼儀をわきまえた成熟した大人だが、そこをかき回すのが、カルキン演じるベンジーだ。
オープニングから、彼は周囲の目を気にせずはしゃぎまわる。
正直、僕は苦手なタイプだ。デヴィッドも迷惑そうだが、表に出さずに受け入れている。
けれど、見ているうちに、ただのトラブルメーカーではないことがわかってくる。
例えば、空港の手荷物検査でのシーン。ベンジーは係員とほんの短い時間で打ち解け、相手の個人的な話を自然と引き出してしまう。
その瞬間、知人の娘さんのことを思い出した。発達障害があり、20歳で亡くなった彼女。幼い頃から知っていたが、彼女のことが僕は大好きだった。
彼女はいつも率直で、自分の感じたことをすぐ口に出した。時にそれは鋭く、本音を見透かされるようだった。彼女は、自分の内面と強くつながり、豊かな世界を持っていたのだろう。その言葉には邪気がなかった。それは20歳まで成長しても変わらなかった。
ベンジーもそんな人物だ。彼は、普通の大人なら誰でも身につける「自己欺瞞」から自由な人物なのだ。
だからこそ、時に無礼な振る舞いをしながらも、人の心に深く入り込み、愛される存在になるのだろう。
人を家に例えたのは、河合隼雄だったか、村上春樹だったか、忘れてしまったが、この映画は「家」の比喩で理解できる気がする。
私たちは、家のようなものだ。掘立て小屋の人もいれば、自己欺瞞で飾り立てた豪邸もあるし、地位と名声を誇る高層ビルのような人もいる。
そして、他人から見えず、自分も普段は忘れているけれど、どの家にも地下室がある。
地下1階は、個人的な無意識の部屋だ。そこには、過去に経験したさまざまな痛み=ペインが転がっている。でもその多くを忘れ、時には克服したものとして、私たちは「大人」になる。
さらに、その下には地下2階がある。それはおそらく、ユングのいう集合的無意識の領域だ。そこには、個人を超えた民族や国家、先祖たちが受け継いできた痛み=リアル・ペインが眠っている。
そう考えると、この映画は、地下1階、そして地下2階へと降りていくロードムービーでもあるのだろう。
不勉強ながら、「ホロコーストがテーマなのになぜドイツじゃなくポーランドなのか?」と疑問に思っていた。この映画を見るなら、事前にWikipediaでもいいから、ポーランドのユダヤ人の歴史を調べてから見に行くと良いと思う。
どれほどのことが行われたのか。そして、このツアーの参加者たちが、自分が生きていることの奇跡を感じている理由もわかるからだ。
そして、さらに驚いたのは、ハリウッドのルーツを初めて知ったことだ。従来の仕事になかなか就かせてもらえなかったユダヤ系移民たちが映画産業を立ち上げ、アメリカ社会から差別される身でありながら、やがて「アメリカの神話」となる作品を多数輩出し、現在のように世界を席巻するまでになったことも僕は知らなかった。
おそらく、この映画は、ユダヤ系映画人にとって「自らのルーツをたどる旅」 でもあるのだろう。
私も戦後生まれだが、父母は戦中生まれ、祖父母はもう亡くなったが、彼らは戦前に成人した世代だった。戦争の記憶は、僕に直接はない。祖父母や両親からもあまり詳しい話を聞いたことはない。
しかし、僕の「地下2階」にも、その先祖たちから受け継いだなんらかの痛みが眠っているのかもしれない。
たまには、自分のルーツへと降りてみる旅をしよう。その旅は、劇的な変化を自分にもたらすわけではないかもしれない。でも、そこに向き合う時間が、自分の存在の確かさや、生きていることの奇跡を感じさせてくれる。
そんな示唆をくれる映画だった。
いろいろがリアル
生きづらくても生きていくことに価値があるんだろうなぁ。
2人の従兄弟、性格も生活も全く違う暮らしをしていたけれど,祖母の死をきっかけに自分たちのルーツであるユダヤのツアーに参加する。
いとこのベンジー、なんて繊細で生きづらいタイプなのか。明るく人を巻き込んで楽しくさせる才能と自分の内面に深く向き合う志向を持つ。ツアー中もそんな彼に周りは振り回されてつつ、結局彼のことがみんな大好きになる。
一緒にいるデイビットはそれを見て,自分の不器用さが嫌になるのだ。こんな人と一緒にいたら自分でも羨ましく,また妬んでしまうなぁ。
最後に2人ともハッピーでもう大丈夫というわけではないところがまさにリアルペインだなぁ。これからもそれぞれのことに向き合っていくのだろう。でも少しだけお互いに勇気をもらっただろうか。ベンジーの空港での表情はなんとも言えない。悲しいわけじゃないけど涙が出た。
そして、映画に登場するホロコーストの収容所の映像には言葉にならない悲しさがある。負の歴史の重さを実感する時間だった。
不死鳥
残った理由
あぁ~ だから今夜だけはぁ~♪ ココロの旅
ポーランド、国名は知っているし先の大戦では辛い想いが沢山あり、現在だってすごい緊張関係の真っただ中にある場所だって認識はあるけれど、国内の風景を目にすることなんてほとんどなくて、だからストーリー展開とは別に街並みやしぜんのけしきがとても新鮮だった。
ナチス・ポーランド・ユダヤ人、「関心領域」と同様に強制収容所跡には大量の靴が積み上げられていて、それを見るだけで心が苦しくなった。
そんな中をツアーに参加しながら祖母の暮らした家を訪ねる旅に出た2人のいとこ。デヴィッドはアイゼンバーグの見た目そのものの神経症的な歩き方や風貌、そしてベンジーはぱっと見破天荒で、これまたラドクリフ?と見まごうばかりのカルキンがぴったりのキャスティングでした。
旅が進むほどにデヴィッドの強迫症やベンジーの繊細な心がもたらす鬱的観念が明らかになっていく様が胸に染み渡っていきました。
特に記憶に残ったのはデヴィッドがベンジーへの想いを吐露した「奇跡のように生きてきた祖母から生まれたのに、何故自ら命を絶とうとしたのか!」のシーンでした。
全くその通り!自分だって生まれてきた奇跡に感謝しながら精一杯日々を生きているのですが、人生それだけでは済まないものですよね。
薬を飲んでなんとか前を向こうとする者、なんだか自己矛盾を感じ前へ進めなくなる者、そんな対比やツアーに参加している人たちの暖かなまなざしがとても良かった。
最後、空港の椅子に佇むベンジーが「さあ、行こうか!」と明るい表情で立ち上がるのを願わずにいられませんでした。
この作品、そんなに万人受けするとは思わないのですが、鑑賞した回は満席でした!この週上映開始した他作品との差は何処だったのでしょう?何か鑑賞のきっかけになるような評判があったのか気になるところです。
神経質で繊細な、ふたりの40男
ベンジーは多分、食い詰めて空港で生活している。
兄弟のように育ったデヴィッドに久々に会って一緒に旅行、それで、自分の実態を知られないよう精一杯取り繕って振る舞っているように見える。
亡くなった、二人が敬愛するおばあちゃんは、ナチスの強制収容所から運良く生き延びたユダヤ人のひとり。そのおばあちゃんからのプレゼント(というか遺言)が、強制収容される前に、自分と家族が住んでいたポーランドの家への、ふたりの訪問。
これはベンジーにはキツイだろう、嫌でも「ファミリー」を常に意識させられる旅だ。
ベンジーには家族もなければ、家すらもない。
歴史ツアーの道中、ちょっとしたことで怒り、キレて、奇行をするのは、彼のもともとの性質に加えて、情緒不安定になっているからではないか。
かたや、デヴィッドには仕事があり、家があり、愛する妻とかわいい息子がいる。
デヴィッドが神経質で強迫神経症、コミュ障気味で生真面目で、ベンジーの「自由な」生き方と何故か人に好かれる魅力的性質に憧れを抱いてうらやましがっているが、それが分かったところでベンジーが自分を肯定的に捉えるほどでも、ましてや優越感に浸れるほどのものではなく、デヴィッドが本気でベンジーを愛して心配しているのが分かるので、憎むこともできない。何よりベンジー自身、デヴィッドを愛している。彼にだけは見捨てられたくないという、切なる思いがありそう。
それがさらに腹立たしいと言うか複雑な気持ちにさせるのだろう。
ベンジーは、そう見えないかもだが、相当神経質で繊細だと思う。
ショパンのピアノ曲がBGMというには大きすぎる音で始終かかっているが、これがとっても良かった。ショパンの曲は、よく合う映像と一緒に聴くと感動的に良さが増す気がする。
繊細なふたりの40男の内面を描く映画に大変良くマッチして、胸を打つ。
ショパンでもって、この映画の星が増えた。
このツアーに参加した人たちが、全員、人の話を遮らずにきちんと聞き、合間に感想を述べあい、自分の番が来たらきちんと自分の話をする、という、対話のマナーというか暗黙のルールを自然に身につけていて、対話の文化が根付いているのを感じる。
日本では昔夜中から朝まで討論する番組があったが、ファシリテーター自らが人が話しているのに終いまで言わせず、遮りまくって被せて自分の主張をする、参加者全員がその流儀で発言者の話を聞かない、対話のマナーと言うか基本的なことをまるで分かっていなくて結局収拾がつかず、ただの不毛な怒鳴り合いになって、原始社会と原始人の集まりのように感じてうんざりしたのを思い出した。
今ではまっとうな社会人ならそんなマネはしない程度に日本社会に対話のルール(というか「人付き合いのマナー」)が浸透しているが、それでも人が話すのを遮って自分の話を被せて話し続け、ずっと「自分のターン」にするのが通常運転な人は時々いる。そういう人は、一緒にいるとストレス溜まるので距離を置かれがちだが、多分誰も指摘してあげないから本人はずっとわからないままだったりする。
アウシュヴィッツ、ビルケナウなど、有名なものだけではなく、マイダネク、ソビボル、ベルゼック、トレブリンカなどガス室・焼却関連施設を持つ大規模な絶滅収容所はいくつかあった。そのひとつひとつ、全てで行われた残虐行為の事実は、なかったことにできない。
ガス室に残るチクロンBの青いシミや、大きな金網のストッカーに貯められた大量の靴などを目の当たりにすると、ホロコーストの現実感が一気に押し寄せてくる。
亡くなったおばあちゃんも、かわいがっていた孫二人に、この事実を我が事として受け止めてもらい、次世代に語り継ごうとしたのだろう。
ユダヤ人のいとこ同士の40男ふたりは、それぞれに「生きづらさ」を抱えているが、デヴィッドの方は淡々と自分が果たすべき責任を果たし、社会のルールを守って他人と折り合いをつける気遣いをしての今がある。我慢もするが、その分良いことも得ている生活。
ベンジーには、常に「自分」しかいない。自由に生きてきたので、社会のルールより自分のルールが優先。人に好かれる魅力は今でもあるが、深い付き合いはできないし、仕事も長続きしない。嫌なことはスルーして向き合わないのは自己肯定とは違うだろう。
良し悪しは別として、どこかで枝分かれした生き方の違いが、日常の積み重ねでいつの間にか大きく広がってしまったのが、今の二人の境遇の差だろう。
この二人の場合、生き方は自分で決められる。
ありがちな40代男性の「危機」と友情(本作は親しいいとこ同士)の話、それにユダヤ人としての特殊事情が絡んで、さほど目新しさはないが、時代により多少変わっても常に存在する普遍的なテーマなんだろうと思いました。
2人+おばあちゃんの旅
ストーリー性というよりは体験型?
重々しくもなく、なんだか心のヒダをペロリンと軽くかき鳴らされたような、爽やかな後味の作品でした
「お前はサイテーだけど羨ましい」
みんなベンジーみたいになれたら楽しいけど、大人の理性がそうさせないんだよね。本当に楽しいことはその壁の先にあるのに
童心のままのベンジーはきっと心の中のおばあちゃんとも旅をしていて、だから電車の中や史跡でも「現地の日常に触れたい」と叫んだり、収容所見学の後一人だけ大泣きしていたんだなと思います
重々しい歴史背景はサラッと、美しい街並みや風景がショパンのピアノと共に爽やかに作品を駆け抜けて、苦難の時代を乗り超えた前向きな国の姿を見たような気がしました。
ストーリーは置いといても、ちょっと旅したい気分になりたい方は見る価値ありです
ベンジーみたいになれたら
NYからポーランドへのヒストリカルツアーに参加したお騒がせ中年男2人の珍道中を描いた佳作。
ポーランド系ユダヤ人としてのルーツに触れるという旅の目的から、ホロコースト関連の史跡がいろいろ登場するけど、舞台装置として使われるだけで主眼はそこにはない。シチュエーション・コメディ仕立てで笑わせつつ、要所で展開するのは、この双子のような従兄弟2人の人生観、アイデンティティをめぐる会話劇だ。
しかしまあ、自由奔放というか野生児というか、ベンジーという男、こんなのが身内にいたら迷惑でしかない。多弁で無作法で予測不能な多動癖。しかしすぐに場を自分のペースに巻き込んでしまう不思議な魅力がある。凡人で人のいい相方のデヴィッドは、ほぼ100パー疎ましく思いながら、どこかでベンジーの生き方を羨む気持ちもあり、この愛憎半ばするストレスフルな旅で彼は何を得たのか---。
ベンジーを演じたキーラン・カルキン素晴らしい!
繊細かつ心の機微はわかる しかし 夜と霧 アンネの日記 シンドラー ソフィーの選択 見尽くした俺には響かず
こういう映画はいいよね👍 週末でもファーストデイでも 空いてるに決まってる 楽チン
やっぱり 空いてた。
話は 繊細
凶悪なナチスの 凶行 許されざる ホロコーストまで遡る
シンドラーのリスト【生涯映画 第2位】クラクフ プアシェフ 負の世界遺産の アウシュビッツ・ビルゲナウ
以外の ポーランド強制収容所
というより 真正うつの人の心の痛み これ以上は書かない 是非映画館で確認を
鬱病は 詐病と まさに鬱の人 に別れるから 深刻な世界問題 地球温暖化や少子化より問題。
でも俺には なんやねん💢ゴールデングローブ賞 キーランさん。
ワガママな人としか見えず。
これを 日本には馴染みのない 対話 の 文化で・・・劇場で確認して❗️たまにはこういう映画もイイよ❗️
とにかく繊細 映像で確認を
でも シンドラーのリスト ジョジョラビット ソフィーの選択 夜と霧📕 アンネの日記📓
精通の俺には響かず 申し訳ない 何を今更だ💢
そもそも オックスフォード大の紹介要らない そういうランク付け🟰人を人種や肌の色で差別する理不尽と同義
ただし 静かなぁ 静かな 描き方😊深みもあるから 是非劇場で
逆に本作 高評価の人は 真の映画ツウ というより 菩薩様のような 真の善人😇
有🈶有料パンフは是非おすすめ 歴史的背景から 地理まで コラムも読み込めば素晴らしい👍 買ってください
悪人の映画シロウトの俺にはイマイチ 普通だった。
全編ショパン🎵♪🈶からの受け売り
ただ おばあちゃん👵は時系列合わせすぎて ❓だった。
おばあちゃん👵で ・・って何❓ 普通お母さん👩でしょ あっコレはボヤキでした。
アイゼンバーグさんの力作 是非劇場で確認を❗️
ポーランド政府観光局推薦映画
俳優のジェシー・アイゼンバーグが監督、脚本、主演を務めたロードムービーで、意外と正攻法の手堅い演出でした。従兄弟同士のユダヤ人男性が、祖母のルーツであるポーランドを巡るツアーに参加するお話しです。とは言っても、ホロコースト等のユダヤ人の受難や悲劇をことすら強調することなく、現代の美しいポーランドの風景をバックにお話しは淡々と進みます。むしろ、旅の中で二人の抱える悩みや鬱屈したものが露わになってくるのが焦点で、テンポのいい会話のやり取りで笑わせながら、しんみりとした心境の変化をうまく捉えていて、アイゼンバーグ監督なかなかです。役者では、キーラン・カルキンの面白くてやがて悲しい問題児振りが際立っていました。ジェシー・アイゼンバーグは、カルキンを引き立てながらも抑えた演技に徹しているのに好感が持てますね。
歴史は当事者と徹底的に向き合うことで作られる
映画の観方は、私にとっていかに共感出来るかに重きがある
リアル・ペインを観てこれは生半可な知識では役立たないことを思い知った
ホロコーストの悲劇(これも安直な表現かもしれないが…)を民族としては経験してはいないわけで、ベンジーの哀しみや祖母の体験と対峙する覚悟が、ピンとこないのだ
日本もかつて敗戦国として、植民地化は免れた歴史を持つが、この映画の英国出身のガイド(ウィル・シャープ 好演)と同じくそこについての学問的な高説をいくら聞こうが、それはそれでただの耳学問にしか過ぎないことが、ベンジーの抗議として露呈するわけなのだ
ラストシーンの評価は様々あるだろうが、今後彼の意思が願わくば生きやすさに繋がって欲しいと願うばかりだ。
心に痛いでも良い映画
鑑賞動機:賞レースでの評判10割
アイゼンバーグ自身で脚本も書いたようで。彼自身が折り合いをつける意味もあったのかな。そういう話だったのね。一人一人は少しずつ違った考え方をするし、幅を持たせて一緒くたにしているわけではないところには好感。いやでもベンジーは(遠くから見ているだけならともかく)
苦手かも。それだけキーランが上手いってことか。
サーチライトピクチャーズはこういうのでいいんですよ。
【”そしてユダヤの従弟二人は想い出の場所に石を置く。”今作は愛した祖母のポーランドの家を訪ねる二人が、夫々の哀しみを抱えつつも自らのルーツを旅する中で徐々に癒される様を描いたロードムービーである。】
■デヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)は、従弟のベンジー(キーラン・ランキン)と愛した亡き祖母の故郷、ポーランドを訪ねるホロコーストツアーに参加する。
が、自由奔放で空輸でハッパを持ち込んでいる陽気なベンジーに、生真面目なデヴィッドは振り回される。だが、ベンジーは哀しみを抱えており、デヴィッドは心から彼に寄り添えない自分に悩んでいた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・二人が集合する空港。デヴィッドは家から慌ててタクシーで駆け付けるが、ベンジーは二時間前から空港に居て、人間観察をしている。冒頭のこのシーンから二人がかけ離れた生活をしている事が分かる。
デヴィッドは美しい妻と可愛い子がいて会社勤めだが、ベンジーはそうではないらしい。
・だが、二人は空港で会うと嬉しそうにハグして飛行機に乗る。ベンジーは荷物検査のお姉さんと軽口を叩き、機内ではデヴィッドの子供の動画を見て笑っている。
・ポーランドに着くと、空港ではツアーの英国人添乗員が待っていて、ツアー参加者同士で自己紹介する。自適の老夫婦、裕福だが夫と別れた中年女性、ルワンダ虐殺を生き延びユダヤ教に入信した男性。そんな中、ベンジーは際どい突っ込みをしつつ、ハラハラした表情のデヴィッドは、その度に謝るのである。
・更にベンジーは、移動の際の列車が一等車である事に”ホロコーストを経験した人たちはこんなに恵まれていなかった”と言い、普通車に勝手に席を移動し、ツアーガイドには”もっと数字だけではなく、リアルに感じたいんだ。”と話すのである。だが、彼の言い分は真っ当であり、ツアー参加者たちは彼の言動を容認するのである。
この辺りの描き方が、嫌味にならずに逆にコミカルに思えるのは、ベンジーを演じるキーラン・ランキンのお陰であろう。
且つ、彼が少し前に睡眠剤を飲み過ぎて大変な事になった事が有るとデヴィッドが、ツアー参加者たちに申し訳なさそうに告げるシーンから、ベンジーが大きな哀しみを抱いている事が明かされ、デヴィッドはそんな彼に寄り添えない苦しい気持ちをツアー客たちに吐露するのである。
その後、強制収容所を訪れた後、ツアー参加者たちは粛然としているが、ベンジーは一人列車の中で涙を流しているのである。彼の心が、人一倍清らかである事だろうと思いながら、観賞を続行する。
・そして、二人がツアーから離れ亡き祖母の家に向かう時に、ツアーガイドは”貴方の指摘は的を得ていた。”と彼に言い、ベンジーは参加者たちとハグし、デヴィッドと二人で祖母の家に向かうのである。
着いた祖母の家が、余りに普通である事に驚きつつ二人はツアー途中で行ったように、家の戸の前に石を置くのだが、それを見ていたポーランド人のお爺さんからそれを咎められ、お爺さんの息子に事情を説明するが、結局持ち帰るのである。
このシーンも何だか、可笑しいのである。
・そして、二人は米国の空港に戻り、デヴィッドは自宅にベンジーを招こうとするが、ベンジーはそれをやんわりと断るのである。デヴィッドは自宅に到着した時に、祖母の家の前に置こうとした石を玄関先に置き、ベンジーは一人家に帰る訳でもなく、空港で再び人間観察をするのである。
<今作は愛した祖母のポーランドの家を訪ねる二人が、夫々の哀しみを抱えつつも自らのルーツを旅する中で徐々に癒される様を描いたロードムービーである。
今作を観て勝手に思ったのは、ベンジーとデヴィッドは自分達の祖先が受けた仕打ちを実際に目で見て自分達が抱える哀しみはそれに比べれば大したことではないと思ったのではないかなという事と、人の痛みが分かる人間は、他者に対しても優しくなれるのかもしれないなあ、と思った作品である。
ベンジーを演じたキーラン・ランキンの、悪戯っ子の様な顔や、悲しみに暮れる顔や、自分の意志を恥じる事無く皆に告げる姿は良かったなあ、と思った作品でもある。>
重くなるテーマを軽やかに笑いをまぶして結果を閉じない構成。凄い
アイゼンバーグの俳優、脚本家、監督としての才能とセンスと思考に感動し、a real pain「めんどっちい奴」であるベンジー役のカルキンに魅入られた。笑って笑って涙が出て笑って泣いてとても忙しかった。アイゼンバーグの台詞には思いと情報が詰まっていたし、ベンジーは人たらしで誰もが好きになってしまう。言いにくいこと、ここではこんなことしてはいけないのでは?という思考回路に慣れている私達(日本人とか?)のほっぺたを気持ちよくひっぱたいてくれた。
映画で流れる曲はほぼ全てショパンのピアノ曲。誰もが知っている曲ばかり。感傷に流されず頭脳は冷静に心臓はドキドキさせながら考える空気を与えてくれた。
ポーランドの町の名前「ウッチ」を聞いた瞬間に映画「家(うち)へ帰ろう」が頭に浮かびウッチへいつか行きたいと思い続けいまだ叶えていないことを思い出した。
心に残る良作です。オススメします
名優ジェシー・アイゼンバーグが監督・脚本・製作・主演 ,
キーラン・カルキンが従兄弟ベンジーを演じ、第82回ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞。
第97回アカデミー賞でも助演男優賞にノミネートの話題作です。
性格の全く違う兄弟のような従弟同士がポーランドのツアー旅行に参加するロードムービーになります。
予告編では兄貴分のベンジーとのドタバタコメディーの雰囲気もありましたが、実は全体的にドキュメンタリー調のしんみりした友情物で
二人の名演技が光る作品で心打たれました。ドラマチックで泣けるシーンがあるわけではないですが、感受性の強い兄貴分のベンジーと彼を愛しているが憎む気持ちもあるデヴィッド。映画が見終わった後もこの二人の人生を見守りたい気持ちになりました。おススメ度は満点です。
タイトルなし(ネタバレ)
従兄のデヴィッドを翻弄する独特な感性を持ったベンジーだが悪気は無い。ツアーの人達は一時的な付き合いだから「正直で良い奴」と、彼との出会いに感謝しているだけかも。
デヴィッドが家庭を持ったから疎遠になったのか? 孤独を感じて自殺未遂したのか?
そう、自殺未遂さえしなければ。
クラシック音楽が全体に流れ、観客もツアーに参加した気分に少しなれる(?)ロードムービー。
※玄関に石は置かない方がいい
疎ましいあいつ
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