「複雑なニュアンスで、戦争の傷を辿る旅。」リアル・ペイン 心の旅 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
複雑なニュアンスで、戦争の傷を辿る旅。
ショパンのピアノ曲に彩られた40男のルーツを辿る旅。
ポーランドにルーツを持つ2人のユダヤ人。
従兄弟同士のデヴィッドとベンジーは、ホロコーストの生き残りの祖母を
半年前に亡くした。
落ち込むベンジーを伴って祖母のポーランドの家を訪ねるために、
ポーランドのツアーに申し込む。
それは当然、アウシュビッツへ向かう旅でもあった。
ツアーはガイドを入れて7人の少人数。
60代のマダムが「ダーティ・ダンシング」のジェニファー・グレイ、
だった。
素敵に歳を重ねていて懐かしかった。
心配症のデヴィッドと気儘で天然のベンジー。
ユダヤ人の苦しみや痛みは想像もつかないけれど、
ポーランドは美しい。
ショパンが「革命のエチュード」を作曲したとき、
ワルシャワはロシアからの独立を目指した反乱に失敗したのだ。
それが1830年のこと。
なんとポーランド人はナチスに300万人殺されたそうだ。
なんと言うルーツ‼️
ベンジーが素敵な列車でパニックを起こすシーン。
アウシュビッツへ送られる過去の同胞たちが、
自分のことのように思えたのだ。
彼の繊細で壊れそうな心の“痛み“
ポーランドの英雄碑でお茶目なシェーみたいなポーズで記念撮影。
ツアーのみんなも真似して記念撮影。
ベンジーは周りを巻き込んでみんな彼が好きになる。
真面目なデヴィッドは、通り一遍の知り合いにしかなれないのに、
ベンジーは盛大なハグで、みんなと別れを惜しまれる。
なのに、なのに、
デヴィッドは可愛い息子と妻のいる家庭に戻り、
ペベンジーは「一番落ち着く」と言う空港で人混みを眺めて
いつまでも佇んでいる。
彼は進めない。
歴史に取り残され、生産的な生き方ができずにいる。
それはユダヤ人だからだけではじゃないだろう。
人は痛みを克服することは出来ない。
折り合いをつけるだけ。
ベンジーは折り合いをつけられるのだろうか?
対照的な2人をよく描いた作品でしたね。すぐそばにあるまったく異なる人生を感じました。
〝人は痛みを克服することは出来ない。折り合いをつけるだけ。〟
その通りだなあ、折り合いのつけ方を学びながら生きていくんだなと思います。
私たちは、最後の空港のシートで佇むベンジーが何を思っていたかに心を寄せることに意義があるのでしょうね。