劇場公開日 2025年1月31日

「NYからポーランドへ。時間を遡り共有する旅。」リアル・ペイン 心の旅 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5NYからポーランドへ。時間を遡り共有する旅。

2025年2月7日
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鑑賞方法:映画館

この映画を観る数日前にトランプが、ガザをアメリカが所有し住民を移住させた上でリゾート地として開発するプランをぶち上げた。イスラエル建国以降のパレスチナ難民の歴史、自治区が置かれた経緯や事情を一切無視した暴挙としか言いようがない。土地や民族の歴史や記憶は、個人としての歴史や記憶と混ざり合い、感情や未来に向かっての意志を決定するということがまるっきり理解できないのであろう。つまりエンパシーという素養がゼロということであってこれが狂人でなければ一体何なのか。
さて、べンジーとデービッドが参加するこのポーランドツアーだが実によく設計されている。
収容所はもちろん、ユダヤ人が普通にポーランド人と暮らしていた古い街を訪ね、ゲットーの跡地でワルシャワ暴動の記憶にも触れる。ホロコーストだけでなく、ポーランドにおけるユダヤ人の歴史を簡明に紹介している。バックグラウンドでずっとショパンが流れているのは、ユダヤ人は異教徒として常に排除されるベクトルにあったのではなくかってはポーランドという国家、民族の構成要素の一つであったことを、国を代表する大作曲家の音楽を使用することで表現しているように思える。
ツアーには色々な背景を持つ人たちが参加する。ツアーガイドのジェームズは東欧におけるユダヤ人史を専攻した英国人だし、長らく米西海岸に住んでいて離婚したマーシャ、ルワンダで虐殺を経験したエロージュ、ポーランド移民を先祖に持つマーク夫妻。民族、家族、個人の記憶が交錯する。そしてベンジーとデビッドだが、二人の祖母であるドリーは収容所サバイバーであった。二人は少年時代に祖母に可愛がられ育ったが成人するとそれぞれの人生を歩み、いまや正反対ともいえる生活を送っている。だから彼らの祖母の時代(ポーランドでの)の歴史や、少年時代の記憶や、最近のやや疎遠になった二人の思いが交錯し、それぞれの傷を見せながらツアーの他のメンバーにも影響する。
ベンジーがジェームズに指摘した通り、ツアーはやや史実をなぞりすぎであり現代のポーランドの人達との交流はあまりなかったかもしれない。でもツアーメンバー同士の交流、特にベンジーを皆が持て余しながらも受け入れていくところ、他人の歴史を共有しエンパシーを高めていく効果はあったというべきだろう。
最後に、ベンジーとデビッドがお墓や家の戸口に置く石のことだけど、これは故人への思いとか鎮魂ということもあるけれど、彼らの人生の一区切り、ピリオドと解するべきだろう。他人の人生についてある程度の理解をした上で、自分の人生を先に進めるという決意の表れだと私は理解したのだけど。

あんちゃん
ゆ~きちさんのコメント
2025年2月14日

「アノーラ」はかなり前からアカデミー賞候補に名前が上がっていたので、観に行ったらとんでもないストーリーでした😅。アカデミー会員とは今年は特に趣味の合わなさを感じます。

主演女優賞は本来ブレイク・ライブリーが相応しいと思うけど、監督のせいで作品そのものにケチがつき、本当に残念です。

ゆ~きち
ゆ~きちさんのコメント
2025年2月14日

台湾とかシンガポールとか、他のアジア地域は公開が早いのに、日本が一番遅い公開がほとんどです。吹替えとか字幕の準備に時間がかかりすぎなんでしょうか。早く皆さんと感動を分かち合いたいのに。

ゆ~きち
ゆ~きちさんのコメント
2025年2月11日

共感ありがとうございました。

ルーツを探る旅って、一度はしてみたいですね。

ゆ~きち