「真の痛みに気づく大切さ」リアル・ペイン 心の旅 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
真の痛みに気づく大切さ
それほど期待していたわけではないですが、予告の雰囲気になんとなく惹かれ、公開2日目に鑑賞してきました。鑑賞後の率直な感想としては、強烈なメッセージを受け取ったわけではありませんが、人を思う優しさを感じ、なんとなく心温まる思いがしたといった印象です。
ストーリーは、アメリカに住むユダヤ人のデヴィッドと従兄弟のベンジーが、亡くなった最愛の祖母の実家を訪ねるためにポーランドのツアー旅行に参加し、久しぶりの再会を喜び、ツアー仲間との交流やボーランドの観光地巡りを通して、それぞれの抱える悩みに向き合っていくというもの。
冒頭から対照的なデヴィッドとベンジーの姿が描かれ、二人の関係性が強く印象付けられます。当初は、単なる仲よしの従兄弟に見えた二人ですが、物語が進むにつれ、互いに抱える思いがあったことがわかってきます。
生真面目な性格ゆえ、何かと周囲に気を遣い、ベンジーに振り回されるデヴィッド。実は心のどこかでずっと、ベンジーの社交的で気さくな人柄に憧れ、その一方で自分にはないその性格を妬み、疎ましくも思っていたのでしょう。それでも、やっぱり、ベンジーを嫌いになれないし、今の彼の様子を気遣い、旅に誘ったのでしょう。
そんなデヴィッドの思いを知ってか知らずか、自由奔放に振る舞い、気持ちの浮き沈みの激しいベンジー。場を和ませ、誰とでもすぐに打ち解けられるベンジーですが、鬱病からくる不安定な一面をもっています。祖母を失った悲しみを抱え、ユダヤ人としての出自をもちながら、それを忘れて楽しくアメリカで暮らすことに悩んでいたのかもしれません。
兄弟同然に育ち、お互いなんでもわかり合えるゼロ距離だと思っていた二人。しかし、実は相手の本当の悩みや苦しみに気づいておらず、今回のポーランド旅行がそれに気づかせてくれたように思います。まるで市街地のすぐ近くの収容所で行われていた惨劇に、気づいても気づかないように生活していた当時の人々に重なります。見えないから存在しないのではありません。見えなくてもあるのです。
終盤、祖母の生家を訪れた証として石を置いていこうとした二人に、隣人が「そんなことすると危ない」と注意する様子が描かれます。二人は石を持ち帰り、デヴィッドは自宅の玄関脇にそっと置きます。祖母宅の現在の住人への気遣いとともに、今回のベンジーとの旅行でデヴィッドが噛み締めた思いなど、見えない思いを象徴しているかのようの感じます。
本作は、人の真の痛みは、それに気づいた人にしか理解できないものであり、それに気づくことこそが大切だと訴えているような気がします。そして、気づくためには直接感じることが重要だと伝えているような気がします。収容所の惨劇が説明や数字だけでは伝わらないように、自身で感じたり想像することが大切なのではないでしょうか。私も、以前から興味があったのですが、本作を通して、ポーランドにますます行ってみたくなりました。
キャストは、ジェシー・アイゼンバーグ、キーラン・カルキン、ウィル・シャープ、ジェニファー・グレイ、カート・エジアイアワン、ライザ・サドビ、ダニエル・オレスケスら。
共感ありがとうございます。
やはり二人の抱えるパーソナルな痛みが主題だと思いました。今回の旅で少しは癒えたんですかね、空港に住んでる?人はまだまだ大変そうですが。