「彼らと一緒に旅をした気分になる」リアル・ペイン 心の旅 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
彼らと一緒に旅をした気分になる
正反対の性格の男たちのバディムービーとしても、ポーランドのホロコーストの史跡を巡るロードムービーとしても楽しめる。
兵士達の像の前で、記念写真を撮る場面では、人付き合いが苦手で内向的な主人公と、陽気で社交的な従兄弟の性格の違いが明確に分かるようになっていて面白いし、2人が列車で降りる駅を乗り過ごすくだりでは、チグハグながらも仲の良い両者の関係性を窺い知ることができてホッコリさせられる。
自由奔放で、その場の空気が読めない従兄弟は、厄介なトラブルメーカーでもあるのだが、ユダヤ人収容所の跡地に列車の1等席で向かうことや、墓地で死者に敬意を払わないことに異を唱える彼の言い分は、至極真っ当で、単なるクレーマーではないことが分かる。
成功したユダヤ人達の食事の席から立ち去ったり、収容所を見学した後に涙に暮れている姿などを見ると、彼が、単なる陽キャではなく、感受性が豊かで傷つきやすい性格でもあることが分かり、マリファナに頼ったり、自殺未遂を起こしたりした理由も、そんなところにあるのだろうと納得することができた。
そして、そんな「強そうで脆い」という複雑なキャラクターを、自然に演じきったキーラン・カルキンは、やはり良い役者だと思えるのである。
ラストで、そもそもの旅行の目的であった祖母の家の訪問が、玄関先を見ただけで終わってしまったり、ようやく地元の人と交流できるかと思ったら、素っ気ない会話で終わってしまったりするところは、何だか拍子抜けする反面、「現実ってそんなものだろう」というリアリティが感じられる。
ただ、従兄弟の寂しげな佇まいが印象的なエンディングについては、しみじみとした余韻が味わえるものの、最後にもうひとひねり、ドラマチックな展開があれば申し分なかったのにと思ってしまうのは、やはり、欲張りすぎだろうか?