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映画レビュー
17分の短編中、朝起きて、歯を磨いて、朝ごはんを用意して食べて、と...
17分の短編中、朝起きて、歯を磨いて、朝ごはんを用意して食べて、という繰り返しが6分くらい続く。そういう何気ない日常にも美しいものや、不思議なものがあるんだなと不思議に大きな気分にさせられてしまう。コーヒーにミルクを注ぐとらせん状に拡がっていくその不思議、どこまでも吸い込まれていくような、宇宙の不思議を見たような気分になる。日常にも壮大なものはあるのだ。
繰り返しの日常でもちょっとずつ違う。床にポテトチップスの食べかけの袋が落ちている時もあれば、お酒の缶が放置されている時もあり、ささやかな日常のちょっとずつの違いだけでも刺激がある。それにしても当人の趣味や生活感がよく出ている部屋である。
黒髪のメガネをかけた女性はどういう関係なのか、映像だけでははっきりとはわからないが、あの男性と何か関係があった人なのだろう。やがて、その男性は主人公の女性と出会い、愛を育み、やがて、2人は部屋からいなくなり、新しい住人がやってくる。ささやかな日常しか描かれていないはずなのに、輪廻の無常みたいなものまで感じさせる。
Jazzmaster
全編セリフなしの短編アニメーション。
初っ端の水彩画のシーンからグッと引き込まれた。軽いタッチであっという間に花びらが出来上がっていく様子をアニメでこうやって表現するんだという驚きに包まれた。
キャラクターの感情表現を表情だったり、食事シーン(腹の虫が鳴る飯テロ)で表しているのもあったけれど、絵文字で表現するんだという斬新さもとても好みだった。
序盤は女の子のなんてことない1日を延々描くけれど、隣人だったり彼氏だったりが描かれることによってグッと深みが増していき、部屋にあるジャズマスターはそういう意味なのか…と思わず面食らってしまった。
ラブリーサマーちゃんの音楽の盛り上げも素晴らしく、感情の昂りがこれでもかと伝わってきて美しいまであった。
「きみの色」が青春色全開だったのに対して今作はどこか喪失感だったり、大人になることだったりが描かれていたのも面白い対比だったし、短編だからこそ得れる栄養があって良き良き。
劇場でもやってくれないかなぁ。