「深い人間理解に根ざしたアクション映画の傑作」ゴーストキラー komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
深い人間理解に根ざしたアクション映画の傑作
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作の映画『ゴーストキラー』を大変面白く観ました。
今作は、深い人間理解に根ざしたアクション映画の傑作だと思われました。
この作品の根底に流れているのは、人間の多面性・重層性だったと思われます。
主人公・松岡ふみか(髙石あかりさん)の友人・飯田マホ(東野絢香さん)は、ホストのリュウスケ(一ノ瀬竜さん)からDVを受けているのですが、リュウスケは主人公・松岡ふみかへの対外的な対応はにこやかで丁寧で、人間の二面性をさり気なく表現しています。
主人公・松岡ふみかは、感情の幅が分厚く時にコミカルですが、弱さを持つ友人・飯田マホを助ける毅然とした態度も持っています。
一方で、殺し屋・工藤英雄(三元雅芸さん)は他者との関係性において幅が狭く不器用で、だからこそ殺しの能力に長け、その不器用さで宿命的に裏切られ殺されたと言えます。
今作で描かれている重層的な各登場人物の的確な配置で作品に幅を持たせながら、さらに今作が秀逸なのは、感情の幅がある主人公・松岡ふみかと、不器用な殺し屋・工藤英雄との、対照的な2人が、死んだ殺し屋・工藤英雄の霊が主人公・松岡ふみかに憑依するという、さらなる重層性が描かれている所にあると思われました。
この事により、感情の幅がある主人公・松岡ふみかの中に不器用な殺し屋・工藤英雄が霊として憑依する表現として、主人公・松岡ふみかを演じている髙石あかりさんが、1人2役的な演技をして表現することになります。
個人的には、このような1人2役を見たことがなく、さらにそこにレベルの高いアクションが加わる表現の分厚さに、驚きの面白さがあったと思われます。
もしかしたら(死者が憑依する以外の)物語としてはオーソドックスな面もあるのかもしれませんが、この重層性とレベルの高いアクションによって、今作の映画『ゴーストキラー』は、傑作に引き上げられたアクション映画になっていると僭越思われ、今回の点数となりました。
重層的な人物描写を描き出した(ベイビーわるきゅーれシリーズ監督である)今作の脚本の阪元裕吾さんにはもはや信頼しかないですし、これまでアクション監督だった園村健介 監督は、監督としても見事な作品を表現出来る才能があることが分かり、僭越、嬉しく、大変面白く今作を最後まで観ました。
